2012 Fiscal Year Research-status Report
ミノア・ミュケナイ期~前古典期における国家と宗教の諸相と変容に関する研究
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23520901
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山川 廣司 愛媛大学, 法文学部, 教授 (30113682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古山 夕城 明治大学, 文学部, 准教授 (10339567)
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Keywords | ギリシア宗教 / 王権 / ミュケナイ期 / 初期鉄器時代 / 前古典期 / 聖所 / トロス墓 / 英雄崇拝 |
Research Abstract |
研究代表者は全体の統括とミノア・ミュケナイ期を、研究分担者は初期鉄器時代・前古典期を中心に宗教の諸相と変容及び王権との関連について考察した。5月に研究打ち合わせを行い、前年度の研究成果の確認とギリシア宗教遺跡調査及び本年度の研究課題について打ち合わせを行った。また随時メールで情報の共有と進捗状況を確認した。 研究代表者・研究分担者2名は7月下旬~8月中旬にアテネ及びペロポネソス半島を中心に、ミュケナイ期から前古典期にかけて現地調査を実施した。特に交通の便の悪いペロポネソスでは、8月中旬の8日間レンタカーを借り受け、古代コリント遺跡、同アスクレピエイオン、同博物館、ミュケナイ遺跡、同博物館、ナウプリオン博物館、ティリンス遺跡、へライオン遺跡、デンドラのトロス墓、ミーディア遺跡、アルゴス遺跡、同博物館、アスピス・ラリッサ遺跡、エピダウロス聖域遺跡、同博物館、アポローン・マレアタス遺跡、テゲア遺跡、マンティネイア遺跡、オルコメノス遺跡、バッサイのアポローン神殿、ゴルテュナ遺跡、トリポリ博物館、スパルタ遺跡、同博物館、メネライオン遺跡、アミクライ遺跡、バフィオのトロス墓、カラマタ博物館、メッセネ遺跡、同博物館、アルカディア門、ミストラ等で調査と資料収集を行った。 研究代表者は昨年に引き続き、アテネを中心にアクロポリス,新アクロポリス博物館、アゴラ、ケラメイコス遺跡、アゴラ博物館、ケラメイコス博物館などで宗教関係の遺物の確認と資料収集を行い、帰国後資料データの整理・分類を行った。 研究分担者はアテネ国立考古学博物館、アテネ・アクロポリス南麓遺跡、新アクロポリス博物館その他での調査および資料収集に加えて、在アテネ英国研究所及び米国古典研究所にてポリス生成期の国家宗教に関する資料収集、初期鉄器時代の発掘報告書・古代祭祀関連文献を閲覧・複写した。 これまでの研究成果を学会誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、ミノア・ミュケナイ期における国家と宗教の諸相と変容の解明を課題とし、本年度はギリシア本土ペロポネソスを中心に、ミュケナイ期の王宮やアクロポリス等の宗教施設(聖所)や各地のトロス墓などの調査とその整理、王宮を中心に展開する聖所などの宗教施設の有り様から王権との関連について考察した。またギリシア宗教遺跡調査では、ミュケナイ宗教に関連する宗教遺跡の確認と博物館に所蔵されている出土遺物のデジタルカメラによる資料収集を行い、資料の整理・分類を行った。 10月27日に愛媛大学で開催された第5回四国地域史研究大会において、前年度の研究成果である「古代ギリシアの宗教と王権―山頂聖所とミノア王権―」について講演し、年度末にプロシーディングズの形で講演内容を公刊した。また「ミュケナイ時代の聖所」『駿台史学』第147号で本年度のペロポネソス宗教遺跡・博物館調査をまとめ、ミュケナイ期の宗教と王権の実態について考察した。2年間の研究の成果をそれぞれまとめることができた点で、本年度の目的はほぼ達成できたと考える。 研究分担者は、クレタにおける法と神のかかわりが聖所のトポスで現出することが法碑文の分析により明らかになってきたので、クレタ・ポリスの事例を比較しうる本土ポリスの事例としてペロポネソスの聖所と国家秩序の関係に手掛かりとなるデータの収集と整理に努めた。その研究成果として『駿台史学』第147号の「特集:西洋史におけるコスモロジー研究の課題と現状」で、「アルカイック期クレタにおける法碑文のコスモロジー ―形式・形態分析の現象論―」を公表した。研究分担者も当該課題に関わるギリシア本土の関連資料の収集を実施することでき、本年度設定した研究課題の目的はほぼ達成できたと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、研究代表者は3カ年の研究の取りまとめ及びミノア王権に取って代わった印欧語系のギリシア人であるミュケナイ人王権のミノア宗教受容について構想し、またそのようにして樹立したミュケナイ王権に関する線文字B文書史料及び考古学資料を活用して、ミュケナイ期末期における宗教と王権の関係について考察する予定である。 研究分担者は、クレタ・ポリスにおいて発現する状況を一つの指標として、ポリス形成のプロセスにおいて、先ポリス期の宗教とその後の国家宗教にどのような転換が生じたのか、また、ポリスの形成が未完もしくは未熟であったアルカディア地方の歴史状況を追跡し、国家祭祀が歴史のどの段階から支配秩序の確立に深くかかわるようになったのかを考察していく予定である。 本年秋季に愛媛大学で研究代表者・研究分担者に加えて、古代ギリシア・ローマ期の本研究課題と関連する研究者を招聘して研究会あるいはワークショップを開催し、当該テーマについての議論を行ない、意見や批判を聴取した上で研究の成果と課題について検討する。できれば本年度開催予定の研究会をより充実したものにするため、昨年度留保した経費で招聘を予定している研究者に加えて若干名の報告者の追加参加を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の平成25年度は、現地調査で収集した資料の整理と研究成果の取りまとめのため、通常はメール等を使用しながら、また複数回は直接研究打ち合わせと情報交換,研究の進捗状況の確認を行う。 現地で収集した本研究課題に関わる資料、とりわけデジタルカメラによって収集した膨大な画像資料の分類・整理と保存の作業を推進する。併せて蓄積した研究成果を公表するべく準備を行う。 本年秋季に、愛媛大学において研究代表者・研究分担者に加えて、古代ギリシア・ローマ期の本研究課題に関連する研究者を2~3名程招聘して研究会あるいはワークショップを開催して議論を行ない、意見や批判を聴取した上で研究の成果と課題について検討するが、そのための旅費・宿泊費を計上する。また開催予定の研究会をより充実したものにするため、招聘を予定している研究者に加えて、できれば昨年度留保した旅費を使用して若干名の報告者の参加を増やし、充実を図りたいと考えている。そのための依頼・打ち合せ旅費・宿泊費及び招聘者の旅費・宿泊費を計上する。 3年間の研究成果を取りまとめ、年度末に研究成果報告書を作成する予定で、作成費や通信費、印刷費、発送費等を計上する。
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Research Products
(4 results)