2012 Fiscal Year Research-status Report
近代後期における地方有力者の活動と地域市場圏の再編成に関する歴史地理学的研究
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23520973
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
川崎 俊郎 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80290708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 敬一 常磐大学, 人間科学部, 教授 (70211894)
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Keywords | 地方有力者 / 地方都市 / 茨城県 / 山形県 / 長野県 / 郷友会 / 近代化期 |
Research Abstract |
本研究は、第一次世界大戦以降を対象に、地方有力者の活動から、府県領域程度の市場圏の具体像と、その変容過程を明らかにすることである。具体的には、①地方における近代化に関する事業や、地域市場圏を把握できる産業活動・経済活動、②地方有力者の政治活動、③地方有力者を核とした各種組織、④地方有力者の意思決定を支えたメディアの4点について、これらの具体的な活動を明らかにし、地方有力者のもと、当該地域がどのような近代化を選択・受容したのかを明らかにする。研究対象地域は、茨城県常陸太田市とその周辺地域および長野県上田市と諏訪市、山形県酒田市と鶴岡市を取り上げている。 平成24年度は①および②については資料調査に加え、茨城県常陸太田市におけるフィールドワークと地方有力者の子孫にあたる方へのインタビューを行った。これらの調査活動の結果の一つとして、川崎俊郎(2012)「1900~1940年における茨城県北部を中心とした地方銀行の合併と店舗配置」、福島工業高等専門学校研究紀要53号、129~138㌻をまとめた。また③および④については前年度から継続して収集した長野県および山形県における郷友会資料のデータベース化を行った。 今後の研究は、つぎの3つに方向性をまとめたい。1つめは、茨城県常陸太田市における近世から明治時代前期における商品流通を通じた資本蓄積が、近代化受容に果たした役割を第三次産業を中心に解明していく。そこでは商家の経営形態の変容とともに商圏の変化、商業または産業の中心移動への対応を明らかにすることが重要になってくる。2つめは、前項と関連するが、地方有力者の在来産業や電力・鉄道などの移植産業への対応の仕方である。3つめは地方および中央における郷友会の機能、なかでも東京と地方の情報交換、上京者支援、同郷者の政治活動支援が、地方の近代化にどのような方向性を与えたのかを解明することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度における本研究の達成度は、以下のようにまとめられる。まず、前年度に引き続き①地方における近代化受容に関する事業や、地域市場圏を具体的に把握することのできる産業活動・経済活動、②地方有力者の政治活動、③地方有力者を核とした各種組織、④地方有力者の意思決定を支えたメディアの4点について、これらの具体的な活動を示す資料の収集を行った。対象地域は茨城県、長野県及び山形県である。このうち、茨城県常陸太田市では、呉服商として県内に店舗展開をはかった他、電力事業に展開を図るなど、多様な活動を行った前島家の活動に関する資料収集を行うとともに、同家の現当主にあたる方に、呉服商をはじめとするさまざまな商業活動について、その具体的な内容のインタビューを行った。また、地方有力者を核とした各種組織と地方有力者の意思決定を支えたメディアに関しては、長野県の上田郷友会、諏訪郷友会、松本親睦会、小諸郷友会、および山形県の荘内育英会、荘内館の資料のデータベース化を行った。GISへの対応については、基本地図データを整備し、ベースマップおよび主題図作成の準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25度以降の研究は、次のように進める予定である。まず、前年度に引き続き、必要な資料調査を行う。また対象地域である茨城県や山形県、長野県における個人所蔵資料のうち、一部の所蔵者に関してはンタビューも行い、実態解明をすすめることにする。郷友会に関しては、データベースの分析をすすめ、この組織が地方の近代化に果たした役割を明らかにする。以上の成果を主題図にまとめるとともに、その中間報告を、それぞれの所属する機関の研究紀要に投稿する。最終的に当該年度の秋季に人文地理学会での学会発表を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度における予算執行の計画は、費目別にした場合、次のような計画をたてている。物品費では、地方史誌関連図書、パソコン関連の消耗品、プリンタのトナー、文具類など165(千円)の購入を予定している。旅費は、調査出張および資料収集出張を、茨城県で3回程度、山形県と長野県をそれぞれ1回程度、また東京などでの開催を念頭に、ビジネスミーティングを3回程度予定している。これにかかる予算は200(千円)を予定している。謝金は調査協力者への謝金などで、85(千円)を、その他の費用としては、現地調査における資料複写及び撮影、文書通信費などで、予算は50(千円)を、それぞれ予定している。
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Research Products
(1 results)