2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代後期における地方有力者の活動と地域市場圏の再編成に関する歴史地理学的研究
Project/Area Number |
23520973
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Research Institution | Fukushima National College of Technology |
Principal Investigator |
川崎 俊郎 福島工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80290708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 敬一 常磐大学, 人間科学部, 教授 (70211894)
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Keywords | 地方有力者 / 地方都市 / 中位中心都市 / 茨城県 / 近代化期 / 郷友会 / 山形県 / 長野県 |
Research Abstract |
本研究は、地方有力者の活動の復元を通して、第一次世界大戦以降における府県領域程度の市場圏の具体像と、その変容過程の解明を、おもに茨城県常陸太田市中心市街を事例地域に試みてきた。調査結果とそれについての考察は以下の通りである。 常陸太田市中心市街の市場圏は、商家戸数などの定量的データと、地方有力者の事業展開の事例の双方から、つぎの3点の特徴が指摘できた。同地では、明治前期より第二次世界大戦後まで、商業の卸・小売機能が高いレベルで維持されていた。また周辺地域の産業化・工業化に対応して、その商業機能は、ある種の拡大や発展ともいえる変化をしていた。ただし、企業の中枢管理機能の集積や工業化については、周辺地域に比較して相対的に劣位であった。ここから、従来の指摘による、第一次世界大戦以降、県庁所在都市以外の地方都市は、その中心性が低下したということに対して、その機能の低下は一様ではなく、相当数の地方都市が企業の中枢管理機能の集積や工業化の機能低下に対して、商業機能はその機能を維持、または発展させていた可能性があることがわかった。 本研究ではこうした地方都市を中位中心都市と定義した。中位中心都市において、第一次世界大戦以降も商業機能が維持・発展した理由は、地方有力者が長期にわたって形成してきた、東京などの中央の卸商との取引関係や、地方有力者間の婚姻関係による信用形成、さらには同族の分家・出店による商圏の確保と拡大などの複合的な要因が考えられる。 以上のような研究上の知見をとりまとめ、「近代後期における中位中心地の機能とその変容~常陸太田における前島同族団の系譜と事業展開を中心に~」(仮題)という論文を、研究分担者との共著論文の形で、地理学関連の学術雑誌に投稿予定である。今後は、他地域においても、同様の事例研究を蓄積するつもりである。
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