2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530011
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
居石 正和 島根大学, 法文学部, 教授 (40224315)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 地方自治 / 府県制 |
Research Abstract |
(1)明治三二年改正府県制・郡制関係の先行研究を蒐集し、研究の到達段階を確認した。 改正過程を具体的に扱った研究は、飯塚一幸「日清戦後の地方制度改革--府県制郡制改正をめぐる政党と官僚--」(『史林』第79巻1号)、長井純市「明治三二年府県制・郡制改正について」(『史学雑誌』第119編第1号)以外にほとんど見あたらないことを再確認した。先行研究では、府県制・郡制改正に関しては、政党と官僚勢力との対立・角逐から説明されることがほとんどであった。ただし、都市史研究や財政史研究からは、日清戦後経営の中で地方財政を含む財政構造全体に大きな変化がもたらされること、それは、新たな行政課題の出現、地方自治体の事務量の増加に繋がることなどが指摘されている。 しかし、これら先行研究では、改正により府県に団体性と法人格が認められること、しかし、基本的にはそれ以後も府県は国家行政機関として扱われていくことの意味についてはほとんど言及されていない。さらには、明治二三(一八九〇)年制定の府県制未施行府県の存在が法改正に与えた影響にもほとんどふれられていない。先行研究をまとめることで、具体的な改正点を摘示し、府県行政の自治的側面と官僚支配の側面の変容を法制度論的に明らかにする必要を確認した。(2)改正府県制・郡制年表を作成しつつある。 明治二三(一八九〇)年の府県制・郡制成立から明治三二(一八九九)年の全面改正にかかわる年表を作成している。年表はデジタル化している。年表作成作業は、明治三二年の府県制・郡制改正の過程を知る基礎作業である。これにより、法改正の経緯を把握するとともに、それに関する意見書や議会での発言の意味・関連等を理解することができるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の研究課題は、課題研究の準備作業として改正府県制関連史料の調査・蒐集を行うことであった。 先行研究の整理や年表作成はおこなえた。また、刊行された史料蒐集は一定程度行えた。ただし、各機関への史料調査を行えなかったことから、国立公文書館や国立国会図書館に所蔵されている一次史料の調査を行えなかった。これにより、史料のデータ・ベース化が充分行えなかった。これが、研究の進展がやや遅れた原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基本的に変更はない。 平成24年度は、前年度同様、史料収集・文献収集を行い、史料のデータ・ベース化を行う。収集予定の史料は、(1)国立公文書館所蔵「公文類聚」「公文雑纂」をはじめとする立法関係の公文書、(2)「大森鍾一文書」など東京市政調査会市政専門図書館などに残された内務官僚の史料、(3)国立国会図書館県制資料室に保管されている「山県有朋関係文書」など、(4)「梧陰文庫」など法制官僚が残した史料、(5)その他翻刻・刊行された史料について調査する。 収集した史料分析を行うとともに、年表をさらに充実させる。 平成25年度は、前年度までに収集した史料の整理・分析を行う。さらに、データ・ベース化をすすめる。同時に、文献調査・収集を行う。他の研究者と意見交換し、史料評価を行うとともに、本研究のまとめに向けての課題を明確にする。 平成26年度は、本研究の最終年度として研究をまとめる。さらに、収集した史料のデータ・ベース化を完了する。また、他の研究者の見解を参考にしながら、研究文献の整理を行う。必要な場合には、史料・文献の補充調査・収集を行う。 研究成果を公表する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度、研究代表者は、島根大学教育研究評議会委員およびそれに関わる各種委員会委員、島根大学法文学部副学部長およびそれに関わる各種委員(長)の業務に携わったため、史料調査を行う時間を十分に確保できなかった。そのため、史料調査に予定していた予算に残額が生じてしまった。また、史料調査補助費等の支出も必要なくなった。このため、平成23年度の予算に残額が生じた。 平成24年度は、上記業務はなくなったので、前年度できなかった史料調査を含めて調査を行うとともに、地方制度史関係図書の充実を図る予定である。 平成23年度残額を含めた次年度の研究費の使用計画は以下の通り。 物品費は、総額507,495円。内訳は、地方制度史関係図書が450,000円。消耗品費が57,495円(DVD等記憶媒体25,000円、文献複写:32,495円)。旅費は、400,000円。史料調査補助等は、20,000円。合計で、927,495円である。
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