2011 Fiscal Year Research-status Report
衛生植物検疫協定にいう無害無病地域の紛争解決機能と活用に向けた総合的研究
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23530056
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
浜田 太郎 近畿大学, 経済学部, 准教授 (00454637)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際法学 / 国際協力 / SPS / WTO / 植物検疫 / リスク評価 / 条件付輸入解禁 / 農産物輸出 |
Research Abstract |
先行研究文献調査を行ったところ、植物検疫の経済学的分析は少なく、法的分析は皆無である。 日本のリンゴ、バナナ等青果実の植物検疫とオーストラリアの措置を比較した上で、日本の輸入側(農林水産省、輸入業者等)をインタビュー調査した。オーストラリアの現地調査は24年度予定だが、同国農務省の輸入リスク分析を通読した。 国際植物防疫条約改正に伴い、日本の植物防疫制度がリスク評価に基づくポジティブリスト方式に移行した。しかし、品種別・輸出国別規制等その制度根幹に問題がある。日本の国内防除は品目毎規制である。条件付輸入解禁(無害無病地域等あるいは同等の二国間協定)は、原則として品種毎規制である。ゆえに、内国民待遇違反のおそれがある。日本は輸入リスク分析や二国間協定を公表しておらず、今後情報公開手続を通じそれぞれの背景を明らかにする。また、同品種かつ同病害でも輸出国毎に解禁条件が異なり、最恵国待遇違反のおそれがある。条件付輸入解禁が輸出国の防除提案の単なる技術的検証のみであることがその差異の真の理由のようだ。また、輸出国の証明負担の軽減(特定品種のみの証拠提示で足る)という長所もある。輸出国での完全撲滅や国際基準制定に比べ、条件付輸入解禁は証明と定期的な植物防疫官派遣費用負担だけで、途上国他輸出国の観点からは経済的負担が少なく輸出拡大に実効的な望ましい制度かもしれない。 WTO紛争の実施措置たるCT値規制は品目毎規制(2001年)で、その後米国等のさくらんぼもCT値による品目毎規制を導入した(2009年)。また、青果実中心温度を基準とする熱処理の場合、品目・品種・輸出国の差異の正当化は非常に困難である。また、日本の米国等産さくらんぼに対するコドリンガのシステムズアプローチ(低害低病地域認定)や国際植物防疫条約事務局のミバエのシステムズアプローチ基準策定の動向について今後研究を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究が少なく、自力で研究を進めるにしても、輸入側(農林水産省、横浜植物防疫所、輸入業者、関係公益法人等)は概して閉鎖的で、インタビュー調査の受け入れすら消極的である。加えて、日本では輸入リスク分析すら公表されていないため、輸入禁止あるいは解禁の背景を学術的に解明するのが困難である。バナナやパパイヤのように戦前あるいは1969年の解禁だと、その背景を知る関係者は少なく、また、植物検疫に関する研究書は10年毎に関係団体が出版する書籍以外には非常に少なく(ほぼ皆無)、日本の制度趣旨を明らかにするのに予想以上の時間と労力が必要であったため、論文公表が大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の制度趣旨の解明については、問題提起型の論文を公表して、同じような問題意識の研究者の協力を仰ぐ。オーストラリアの植物検疫制度の現地調査については、経済学的分析を行った研究者にもコンタクトを取り、批判的検証を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関連書籍の発注はできるだけ早期に執行する。また、オーストラリアでの現地調査の下準備として、輸入業者や関連研究者の協力を得る。現地調査を踏まえて、日本とオーストラリアの制度比較の英文論文を執筆・公表する。そのための英文校正の費用を計上した。
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