2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530111
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鈴木 博人 中央大学, 法学部, 教授 (90235995)
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Keywords | 養子法 / 特別養子 / 里親制度 / 民法 / 養子縁組あっせん / 子の福祉 |
Research Abstract |
今年度は、三回の研究打ち合わせ・研究会を開催した。これらの打ち合わせ・研究会には大きくわけると三つの目的があった。一つ目は、養子法に関する外国法の実情(改正状況、改正の背景、制度内容の理解等)を把握し、それに基づき日本の養子法の問題点を洗い出すことである。二つ目は、本研究が目指す立法提案のための基礎認識を確認する意味で、日本の現行養子法の歴史的背景を正確に把握することである。三つ目は、現行日本法が立法される時点では登場していなかった、もしくは視野に入れられていなかった問題を把握することである。なお、平成24年度当初計画していた乳児院等施設に対するアンケート調査については、その実施準備段階の事前調査において、近年の虐待調査の中で明らかになった出生直後の乳児死亡事例の増加に関連する調査によって必要な情報を得られることが判明したため、独自調査は実施しないこととした。 一つ目の目的は、今年度は韓国法をとりあげ、近年改革の進度が早い韓国法の状況把握に努めるとともに、韓国で提起された問題点を日本でも同じように問題として取り上げうるのかどうかを検討した。このことはまた、平成25年度に予定している複数国の調査の際の質問項目の選定作業にも密接な関連をもつものである。二つ目の目的は、日本の養子法の立法史と学説史の整理という形で行った。三つ目の目的は、生殖補助技術の進展が養子制度に及ぼす影響、その実情の理解である。この点については、金沢大学医学部日比野由利氏の「グローバル化による生殖技術の市場化と生殖ツーリズム:倫理的・法的・社会的問題」研究グループのメンバーとの報告・討論を行い、養子法が抱える新しい問題の把握に努めた。 外国法との比較法的検討は平成25年度も継続するとともに、今年度得られた検討結果は、平成25年度に予定している複数国での調査項目の析出の基礎作業の意味も持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、立法論的研究ということで、最終的には養子法の改正提案にとどまらず、改正条文の提案を行うことも目指している。具体的な提案を体系的に行うこと自体のむずかしさもあるが、参考にすべき各国法が必ずしも同一の制度内容を持っているとは限らないこと、従来養子制度を考えるときに視野に入れられてこなかった生殖補助技術が著しく進展したため、その法的・社会的評価をどうするかといった課題があるために、その検討に追われ、本来平成24年度において実施する予定であった複数国での実態調査の実施が平成25年度にずれ込んでいる点に最大の理由がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目標は、養子法および養子法に関連する主たる法領域についての立法論的提案を、その中核となる養子法については条文案も提示することにある。そのための基礎作業として、日本の養子法の問題点の析出および比較法研究は、今後も継続して行う。比較法研究のための重要な情報収集を目的として、平成25年度においては複数国の司法ならびに福祉機関への訪問調査を行う。この調査は研究協力者の協力を得て行うものである。この調査および調査結果の分析にあたっては、並行して行う文献研究によって得られる成果も考慮しながら、日本法との共通点・異質な点を明らかにし、そのなかから日本の養子法改正に、何を参考にすることができるか、何を参考にすべきかを絞り込んでいくこととする。 以上の作業を集大成するものとして、具体的な条文の形をとった養子法および主要関連法の立法提案を行うことを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度において最も大きな比重を占めるのが、研究協力者の協力を得て実施する複数国における訪問調査旅費である。訪問調査に当たっては、訪問時における正確な理解を確保するために、必要に応じて通訳を依頼するための謝金に使用する。また、年2ないし3回予定している研究協力者との研究打ち合わせにおける研究協力者国内旅費を予定している。さらに、必要な国内外の文献収集費、研究報告書印刷費、研究打ち合わせ会場貸出料・会議費・郵送費として使用することを予定している。
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Research Products
(1 results)