2011 Fiscal Year Research-status Report
環境と開発における先住民族の法的地位の再検討-国際法形成過程変容の多面的考察
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23530129
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
松本 裕子 (小坂田 裕子) 中京大学, 法学部, 准教授 (90550731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 友彦 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (20378508)
坂田 雅夫 同志社大学, 法学部, 助教 (30543516)
遠井 朗子 酪農学園大学, 農学生命科学部, 教授 (70438365)
落合 研一 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 助教 (80605775)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際人権法 / 国際環境法 / 開発 / 貿易 / 先住民族 |
Research Abstract |
本年度は、開発における先住民族の伝統文化保護を通じた環境保全の問題を検討している国際諸機関の実行について、研究責任者及び研究分担者が、それぞれ資料及び先行研究を収集し、その分析をおこなった。2011年8月には、北海道平取町で開催されたアイヌの伝統的祭儀であるチプサンケに参加し、2012年3月には、同志社大学にて第1回研究報告会を開催した。小坂田は、自由権規約委員会及び米州人権裁判所による先住民族の土地に対する権利の検討をおこない、その同異を明らかにする論文を執筆した。それらの実行において、先住民族の集団的権利が認められるようになっていることを指摘したう上で、その背景、また日本のアイヌへの示唆を示した。小林は、EUによるアザラシ及びアザラシ製品に対する貿易制限措置をめぐってWTO紛争処理手続及び欧州司法裁判所において係争中の国際紛争を題材として論文を執筆した。先住民漁業と動物福祉といういずれも重要な現代的法益の間の相克状況に関する論点整理をおこなった上で、多様な当事者が複数の法廷において関与する本件のような多元的紛争について、とりうる法的対応の可能性を検討した。遠井は、教科書執筆において生物多様性に関する章を担当し、伝統的知識の意義や、ABS交渉の経緯及び名古屋議定書の採択について概説した。また、北海道農業センター、農林水産省、農業生物資源研究所で農業植物遺伝資源へのアクセスと利益配分について、平取アイヌ文化情報センターで、アイヌ文化環境保全調査について聞き取りを行った。坂田は、先住民族の権利保護に関する基礎的な知識の確認を行うとともに、外国人の保護に関する国際司法裁判所の判例の研究(ICJ、Diallo事件判決)と、外国人の保護に関連して国際的な裁判所と国内の裁判所がどのような関係にたつかを分析した研究(「投資協定仲裁における国内救済前置の動向」)について、報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、各自で担当箇所について、資料収集を開始し、議事録及び判例の分析を中心に研究を開始することを主な目標としていた。小坂田は、自由権規約委員会及び米州人権裁判所を中心として、開発における先住民族の権利に関する事例の検討を実施した。小林は、先住民族漁業と動物福祉の相克に関するWTO紛争処理手続及び欧州司法裁判所における事例の検討を行った。遠井は、先住民族が有する遺伝資源に関する伝統的知識へのアクセスとその活動から生じる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)に関する国際的議論の検討を、生物多様性条約のABS作業部会の議事録の分析を通じておこなった。坂田は、先住民族の権利の保護に関連して基本文献・資料の収集を行うとともに、国際司法裁判所及び投資協定仲裁における国際人権法に関する事例の検討を実施した。これらの検討について、2012年3月には、中間報告会を開催して、報告を行っている。 2011年8月には、アイヌ文化と環境とのかかわりに関する調査の一環として、北海道平取町で開催されたアイヌの伝統的祭儀であるチプサンケに参加した。また、2012年6月に開催予定の生物多様性条約第10回締約国会合フォローアップシンポジウムの準備に着手し、参加予定のパネリストを確定した。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、各自が前年度おこなった研究成果を精緻化し、担当について論文の完成を目指し、学術雑誌への投稿を模索する。小坂田は、開発における先住民族の権利について人権条約実施監視機関の実行を分析したうえで、国際環境法分野への影響と限界について検討すべく、ラムサール条約、生物多様性条約(CBD)、気候変動枠組条約における先住民族の地位を分析する。小林は、昨年度に引き続き、貿易自由化をはじめとする経済面での国際制度の伸長が先住民の生活文化に及ぼす影響について、「公徳の保護」を理由とする貿易制限の例外的正当化規定との関係に重点を置いて分析する。遠井は、生物遺伝資源のアクセスと利益配分に関する国際的動向として、CBDと国連食糧農業機関(FAO)における議論の進捗状況を整理し、これらを踏まえた各国の国内法におけるABS規定を比較し、特に先住民族の伝統的知識について、特有の制度が認められる程度を検討する。また、平取町のアイヌ文化環境保全調査の過程を検討し、伝統的知識と生物多様性との関係及び本調査が地域社会にもたらした規範的含意について考察する。坂田は、先住民族の権利保護に関連して国際的な経済機関がおこなっている実行の分析をおこなう予定である。主に世界銀行のインスペクション・パネルの実行分析を中心に検討を行う。 2012年6月30日(予定)に、中京大学法学部にて、生物多様性条約第10回締約国会合フォローアップシンポジウムを開催し、遺伝資源へのアクセスと利益配分と伝統的知識をめぐる今後の課題について考察する。また、2012年7月1日には、第2回中間報告会を開催し、これまで各自がおこなってきた研究成果を報告して、連携研究者である桐山孝信氏(大阪市立大学副学長)および上村英明氏(恵泉女学園大学教授)との意見交換を行い、新たな国際的合意形成過程のあり方について分野横断的な考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
小坂田は、まず、2012年6月30日に開催予定の生物多様性条約第10回締約国会合フォローアップシンポジウムで、パネリストの方への謝金及び交通費、宿泊費に予算を利用する予定である。また、資料・文献の収集のための図書費と、さらには、研究打ち合わせ及び成果発表のための旅費を予定している。小林は、現在進行中の紛争事案に関する公的資料・文献の収集・整理を中心に、データベースの構築を前年度に引き続いて進める。また、研究成果を順次公表するための研究発表や論文抜刷配布にも使用する。遠井は、各国国内法のABS規定の調査のための文献収集等に5万円、11月に開催されるCBDのCOP11で担当者にヒアリングを行うための旅費の一部に充当するために10万円、平取町での追加的なヒアリング調査等に要する費用として5万円を計上する予定である。坂田は、今年度の研究費の使用計画は、研究の打ち合わせ・成果発表のための旅費と資料収集用の図書費を想定している。世銀の実行などに関連してはできる限りインターネットなどの利用をする予定であるが、引き続き関連する研究書などの収集の必要がある。所属校の変更に伴い必要な旅費の増加が予想される。
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Research Products
(3 results)