2011 Fiscal Year Research-status Report
戦前期日本の司法と軍のインターフェイスとしての軍法務官に関する実体研究
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23530168
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
西川 伸一 明治大学, 政治経済学部, 教授 (00228165)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 軍法務官 / 政軍関係 / 非法曹の司法参加 / 軍法会議 |
Research Abstract |
平成23年度は、前述の様に本研究課題の重要な分析視角の1つである「非法曹の司法参加」について、これまでに行った現代日本で行われている最高裁判所裁判官国民審査の実証的分析を踏まえた分析を行い、本研究課題の分析枠組みの設定を優先して実施した。その結果、高度な専門性が求められる「軍法会議」を始めとする司法手続に軍人を始めとする非法曹をどの様に参加させるのかという課題を検討する上で、重要な前提的試論を提示することが可能となった。また、本研究課題の前提条件である近代日本における政軍関係について、理論的側面から分析を行ったことによって、先行研究では十分に設定されてこなかった制度的な分析枠組みを設定することが可能となった。 これらの研究成果については、平成24年度以降、学術論文の刊行や研究報告の実施等を通じて、公開することを予定しているが、これらの調査を実施したことにより、本研究課題を実施する為に必要な前提条件を整備することが可能となった。しかしながら、本研究課題の最も基礎的かつ不可欠な作業である(1)軍法務官経験者の氏名確認とキャリアパスの網羅的追跡、その経歴のデータベース化および(2)内外の公文書館などへの史資料の調査の実施に必要な準備について、専門知識を有する研究協力者(小森雄太)を雇用し、実施したものの、当初の研究計画に比して、十分な調査を行うことが出来なかった。以上の点を総合すると、本研究課題は交付申請書提出段階の研究計画と多少の変更はあるものの、おおむね順調に進展していると思料する。なお、平成24年度は、前年度の研究成果と課題を踏まえ、本研究課題をより一層強力に推進することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、前述の様に本研究課題の重要な分析視角の1つである「非法曹の司法参加」について、これまでに行った現代日本で行われている最高裁判所裁判官国民審査の実証的分析を踏まえた分析を行い、本研究課題の分析枠組みの設定を優先して実施した。その結果、高度な専門性が求められる「軍法会議」を始めとする司法手続に軍人を始めとする非法曹をどの様に参加させるのかという課題を検討する上で、重要な前提的試論を提示することが可能となった。また、本研究課題の前提条件である近代日本における政軍関係について、理論的側面から分析を行ったことによって、先行研究では十分に設定されてこなかった制度的な分析枠組みを設定することが可能となった。 これらの研究成果については、平成24年度以降、学術論文の刊行や研究報告の実施等を通じて、公開することを予定しているが、これらの調査を実施したことにより、本研究課題を実施する為に必要な前提条件を整備することが可能となった。しかしながら、本研究課題の最も基礎的かつ不可欠な作業である(1)軍法務官経験者の氏名確認とキャリアパスの網羅的追跡、その経歴のデータベース化および(2)内外の公文書館などへの史資料の調査の実施に必要な準備について、専門知識を有する研究協力者(小森雄太)を雇用し、実施したものの、当初の研究計画に比して、十分な調査を行うことが出来なかった。 以上の点を総合すると、本研究課題は交付申請書提出段階の研究計画と多少の変更はあるものの、おおむね順調に進展していると思料する。なお、平成24年度は、前年度の研究成果と課題を踏まえ、本研究課題をより一層強力に推進することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、前年度の研究成果と課題を踏まえ、下記調査を実施する。また、研究体制についても、本研究課題着手時より研究協力者として参画していた小森雄太(明治大学)を研究分担者へ役割変更を行い、より強力な体制で研究を実施する。(3)軍法務官生存者の割り出しおよび彼らへのインタビュー:すでに生存が確認されている小川関治郎氏については、出身の明治大学校友課を通じてコンタクトを取りつつある。戦後に裁判官に転じた軍法務官の存命者については、昨年9月に開催され、申請者が討論者を務めた「日本の最高裁における意思決定過程」研究会で、元最高裁判事で最高裁事務総局人事局長も務めた泉徳治氏(現TMI総合法律事務所弁護士)との知己を得たので、同氏を介してインタビューを申し込む手はずが整っている。(4)軍法務官経験者の自伝、伝記的著作の調査:軍法務官が軍法会議における唯一の法曹として、審理にどのような認識で臨んでいたのかを明らかにする。先に掲げた軍法務官の経歴をもつ最高裁判事について、多くの判事が回想録を残しており、そこから軍法務官勤務の記述をさがすことができる。さらにその記述から連鎖的に関連する人物名も浮かび上がってくると考えられる。人事情報に関する記述を収集し相互に関連する記述があればそれをクロスチェックして、事実に基づいた証言から軍法務官と軍法会議の実態を解明する。(5)その他の研究実施計画:平成24年度は上記調査に加え、研究代表者、研究分担者、雇用した大学院生によるミーティングを隔月で開催する。加えて、軍部や司法官僚の人事に精通した研究者(秦郁彦日本大学講師や馬場健一神戸大学教授など)や元裁判官(伊東武是元神戸家裁判事、安原浩元松山家裁所長など)へのヒアリングも実施し、多方面からの証言・意見を収集する。また、外国の大学・研究機関から研究会への参加を招請された場合には、これに積極的に応えていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、前述の研究の推進方策を踏まえ、引き続き交付申請書に従った研究活動を実施し、加えて、作業の進捗状況を把握しまたその方向性を検討するために、研究代表者、研究協力者、さらにはデータベース構築を手伝う大学院生によるミーティングを隔月で開催する。また、軍部の人事に精通した秦郁彦日本大学講師らを招聘し研究会を実施する。また、日本裁判官ネットワークの例会(年3回関西方面で開催)を訪ねて、司法官僚の人事に詳しい元裁判官(伊東武是元神戸家裁判事、安原浩元松山家裁所長など)や研究者(馬場健一神戸大法学部教授など)へのヒアリングを実施する。こうして多方面からの証言・意見を収集する。加えて、先述のワシントン大学における国際的研究会のように、外国の大学・研究機関から研究会への参加を招請された場合には、これに積極的に応えていく。
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