2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530205
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
池田 亮 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (60447589)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 脱植民地化 / 冷戦 / 中東 / 北アフリカ |
Research Abstract |
平成23年度は、教科書と著書の執筆を行った。このうち、前者は複数の研究者による共著であるが、そのうち「アフリカ」という章を担当した。これは20世紀のサハラ大陸以南のアフリカの歴史を、冷戦と脱植民化という二つの現象の交差から描いたものである。入門書でありながら、新しい視点を打ち出すことにより、わかりやすくかつオリジナリティを持つ成果を挙げることができた。つまり、「研究の目的」で記した中東とは地域が異なるものの、アフリカでの事例を描くことにより、中東での事態を複合的にとらえることを目指したものである。 ついで現在、北アフリカにおけるチュニジアとモロッコの独立を中心テーマとする著書を執筆中である。これは、両国の脱植民地化過程を国際関係全体の中でとらえることをめざし、やはり脱植民地化と冷戦の交差を中心課題としている。しかし、それだけでなく、両国の独立には1955年9月に発表されたエジプトとソ連の軍備協定が大きくかかわっており、またフランスの対スエズ危機政策は北アフリカ情勢との関連で行われていた。この意味で、チュニジアとモロッコの独立過程は「研究の目的」で記した中東情勢を研究するに当たり不可欠な要素を構成している。 したがって、昨年度の研究は直接に中東地域を扱わなかったものの、サハラ以南アフリカと北アフリカを研究することにより、中東情勢をより多面的に捉える作業をおこなった。冷戦と脱植民地化という、それぞれに地域の文脈を持ちながらも世界規模で展開された事象を研究するには、このような複眼的視点が不可欠だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り、平成23年度は教科書執筆と自著の執筆にあてた。このため、「研究の目的」で記した、スエズ動乱を中心とする中東情勢の研究は遅れざるを得なかった。しかし「研究実績の概要」で記した通り、サハラ以南アフリカ情勢と北アフリカ情勢は中東情勢とは密接な関連を持っている。特に、脱植民地化と冷戦という世界規模で展開された現象を複合的に捉えることを目的とするならば、このように他の地域との比較の視点はきわめて重要である。この視点を持って、今後も着実に研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、著書の出版を完了するとともに、1956年のスエズ動乱に関する研究に専念する。その際、著書で扱った1956年初めまでの北アフリカ情勢に続き、それ以後のフランスの対北アフリカ政策を研究する。そのことにより、1956年夏に発生したスエズ動乱と、特にフランスの対応をきわめて多面的かつ重層的に捉えることが可能になるからである。この観点から論文を完成させたのち、さらには英語での論文投稿を行う計画である。そののちに、スエズ動乱を総合的に捉えた著書を出版する計画である。 この間、引き続き、アメリカ、イギリス、フランスの資料館を訪問し、資料収集を遂行する計画である。可能であれば、チュニジア政府の資料館も訪問したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、夏季休暇中にフランスのパリを訪問し、フランス外務省資料館で資料調査を行う。また、1955年にフランス政府内部で脱植民地化を進める法案が策定されていたが、その過程を分析するために、その中心人物であったガストン・デフェール(Gaston Defferre)という政治家の個人文書を収集する。これら調査には合計で3週間ほどのフランス滞在が必要であり、おそらくは2度にわたってフランスを訪問し、滞在する必要があると考えている。 そのほか、ロンドンでイギリス外務省などの資料を収集し、引き続き中東および北アフリカ情勢へのイギリス政府の政策を分析する計画である。
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