2012 Fiscal Year Research-status Report
適応的学習における金融市場の不完全性と金融政策の有効性
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23530234
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
中川 竜一 関西大学, 経済学部, 教授 (60309614)
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Keywords | 適応的学習 / 期待の異質性 / 学習安定性 / 銀行の横並び行動 / テイラー原理 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目的は、人々が「適応的学習」によって期待形成するとき、金融市場の不完全性がマクロ経済の性質および金融政策の有効性にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。平成24年度は、交付申請書「研究の目的 テーマII」について分析すると 同時に、関連研究の研究成果を国内外に発表することに取り組んだ。 第1に、「研究の目的 テーマII」として、23年度に取り組んだ課題(テーマI)の結果をNew Keynesian 金融マクロ経済モデルに応用して分析した。そして、金融マクロ経済の安定性を維持するために必要な金融政策の条件、および学習の異質性の変化が金融政策の条件に与える影響を明らかにした。 第2に、23年度からの継続課題として、1990年代以降の日本経済データを用いて、日本の銀行の「横並び」(学習行動の一つ)の貸出行動を検証し、銀行の横並び行動がマクロ経済環境に依存すること、将来のマクロ経済に対して攪乱的効果をもたらすことを実証的に明らかにした。 第3に、23年度の研究成果に関して、国際経済雑誌への投稿を通じて得られたコメントを参考にして内容を修正・改善し、その成果を国際経済雑誌であるJournal of Economic Dynamics and Control(査読付き)に投稿した。また「銀行の横並び行動」に関する研究論文は、国際経済雑誌(Pacific-Basin Finance Journal、査読付き)に公刊された。さらに、アメリカ経済学会に出席し、外国研究者の最新の研究成果を確認すると同時に、同学会の生涯学習プログラムに参加し、ベイジアン推定に関する知識を吸収した。これらの活動を通じて、研究方法を再検討すると同時に、外国研究者と直接的に交流し、将来の共同研究について打ち合わせすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、当初の計画通り、「研究の目的 テーマII」についての研究論文の執筆、国際経済雑誌への投稿をおこなった。そのため、「研究の目的」の達成はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、24年度に分析した経済モデルに金融市場の不完全性を導入し、資金の貸し手と借り手が異質の学習をおこなっている経済を分析する。ここでは、金融市場に情報の非対称性を導入したモデルをベースとする。そして、金融市場の不完全性が金融マクロ経済の性質、および金融政策の条件に与える影響を明らかにする(「研究の目的 テーマIII」)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同様の研究費として、金融マクロ経済学についての理論分析をおこなうため、マクロ経済学に関する図書費を計上する。数学的・数量的分析をおこなうため、数値計算言語ソフトウェアを購入する。研究成果を国際経済学会および国際学術雑誌において発表するため、英文校閲料、学術雑誌の投稿料を計上する。資料収集のための研究補助費を計上する。 前年度と異なる点として、海外への出張旅費を多く計上し、海外の研究協力者との学術交流を密接におこなう。前年度、所属研究機関内の事務業務多忙のため、海外出張に十分な時間をとれず、本年度への研究費の繰越が生じた。それを受けて、本年度は海外出張に研究費を重点的に充当する。
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