2011 Fiscal Year Research-status Report
欧州自動車産業の生産ネットワークの形成と展開に関する実証的研究
Project/Area Number |
23530263
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
細矢 浩志 弘前大学, 人文学部, 教授 (10229198)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 生産ネットワーク / 産業集積 / 多国籍企業 / EU東方拡大 |
Research Abstract |
1.本研究の目的は,現代欧州自動車産業における生産ネットワークの基本構造と展開のダイナミズムを明らかにするとともに,同産業のグローバル競争力構造の解明と産業発展モデルの提示にアプローチすることにある。平成23年度(計画初年度)は,主に研究全体の理論的仮説の構築と企業・地域間国際分業の「構造分析」に取り組んだ。2.欧州連合(EU)の東方拡大後,広域欧州で繰り広げられている企業・地域間分業体制の再編とその動態を解明するための分析枠組みとして,4つの産業集積地((1)新周辺地域=中東欧,(2)旧周辺地域=スペイン・ポルトガル,(3)非EU新周辺地域=トルコ,(4)西欧コア地域)を取り上げ,各集積地域間で産業特性を比較する方法論を検討しその有効性を確認した。3.EUとその周辺諸国(トルコやロシアなど)の経済・産業事情をはじめEU自動車産業の展開動向,広域欧州の自動車生産・国際分業に関する内外の先行研究を調査・サーベイし,基礎的な事実関係の整理と統計データ解析を進めた。とくに(1)新周辺地域=中東欧の産業クラスター分析について集中的に取り組み中間的な総括を行った。低労働コストに優れる中東欧では,必ずしも「廉価小型車両の大量生産」に特化しているわけではなく,研究開発など高度な機能を担う事例が相次ぐようになっていること等の知見を得た。4.研究成果は,論文ならびに学会発表として取り纏め公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.広域欧州における自動車関連の貿易取引や対外直接投資,工業出荷額等の推移,現地活動拠点の事業展開動向等,基礎的な統計による貿易・投資構造の把握ならびにそれに基づく地域・企業間国際分業構造の分析については,東京(日本貿易振興機構,日欧産業協力センター等),仙台(東北大学EU資料センター)等への国内調査旅行によるEU情報・資料の渉猟を比較的順調に実施することができたため,一定前進することができた。2.研究は適宜中間的な総括を行い,一定の水準に達したものについて論文ならびに学会での研究報告として取りまとめ,研究成果を社会へ発信・還元した。3.年度後半に予定していたチェコ・ハンガリーを主要訪問先とする中東欧現地調査については,3月の東日本大震災の影響により,本務校の研究・教育態勢の正常化への例外的な負担に加えて,訪問先企業・関係諸機関に対するヒヤリング調査の日程調整等の困難が重なったため,年度内に実施することができなかった。現地調査に基づく現在進行中の事実・実態に関する情報整理と,文献レビュー・統計資料による検討結果との間での入念な相互検証が不十分である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,原則として平成24年度に計画した研究に予定通り取り組む。昨年度の研究の進捗状況を踏まえつつ,年度前半に前年度未達の研究を遂行し,漸次本年度の研究計画に移行する。研究課題の遂行には欧州各地域の生産動向や製造拠点の再編に関する具体的な事実に基づく分析が欠かせないため,主要な産業集積地域の現地調査を実施し,それにもとづく各産業クラスター分析を行う。現地調査は,前年度に準備した中東欧を皮切りに今年度の計画(旧周辺地域,非EU新周辺地域)の順に実施する。平成24年度中に前年度に生じた研究の遅れを回復し,年度終了の時点で当初の研究計画が予定通り遂行される地点への到達を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は,実施計画書に記載した使用を予定する。次年度に繰り越して使用する予定の助成金は,前年度に海外現地調査用の旅費として計上した研究費に相当する。前述のように,前年度未達の現地調査は次年度以降漸次実施する予定であるため,繰り越し予定の助成金と今年度に請求する研究費とを合わせた使用を計画する。
|