2012 Fiscal Year Research-status Report
地域間人口移動についての考察-経済的要因とライフステージ要因の検討-
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23530331
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
坂西 明子 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (00316085)
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Keywords | 地域間人口移動 / ライフステージ / 単身世帯 |
Research Abstract |
平成24年度には、2010年国勢調査の移動人口に関するデータを用いて、2005年から2010年の5年間における地域間人口移動の特徴について考察した。年齢や世帯属性別に、都道府県間の人口移動に影響を与える要因について、検討を行った。1995年から2000年の人口移動の結果と比べると、2005年から2010年には、20歳代前半の都道府県間移動数と移動率が低下している。移動数の減少は、移動状況の不詳者の急増による把握が困難になった問題もあるが、移動者の属性別にみると、学生の移動率が大きく低下している。このような属性別の移動傾向の変化について、詳細な分析を行った。 また、世帯構成別に都道府県間移動率を見ると、親族世帯が4%に対して、単身世帯の移動率は18%と大きい。単身世帯の方が、家族を伴った移動ではないため、移動に関する種々の制約が少ないと考えられる。どのような要因により反応しやすいのか、単身世帯、親族世帯の世帯構成別に、移動のプッシュ要因、プル要因について実証分析を行った。移動元の失業率の高さは、単身者にはプッシュ要因として有意な効果を持つが、親族世帯に属する者には有意とならなかった。他に、高等教育修了者比率、移動先の一人当たり県民所得など、単身者と親族世帯に属する者とで、プル要因としての効果が大きく異なる変数があった。 近年、人口の高齢化によって、移動率の低い年齢人口割合の増加とともに、移動者数そのものが減少傾向にある。しかし、単身世帯の増加などの世帯構成の変化や、若年層自体の移動性向の変化など、捉えておくべき変化がある。世帯属性や年齢によって、プッシュ要因、プル要因となるものに差がみられ、これらがどのように地域間人口移動に影響を及ぼしているのかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災の影響による人口移動の考察についても、本研究で行う予定である。 被災地についての調査など、震災の人口移動への影響についての分析を研究に含めたために、平成24年度から次年度の2年間にまたがって取り組む事項が当初よりも多くなった。平成25年度に行う研究の配分を大きくして、平成25年度中に研究を計画的に完了できるように取り組んでおり、全体としての研究推進には支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
国勢調査のオーダーメード集計の統計や小地域統計のデータを用いて、地域間人口移動の状況を詳細に考察する。 特に、近年の若年層の人口移動状況について、前年度から引き続いて分析に取り組み、考察を深める予定である。 また、地方自治体への人口移動状況に関する聞き取り調査を進めてゆく。大都市圏の郊外における人口流出などの課題や、それに伴う高齢化の進展や空き家増加など地域社会で抱えている問題とそれらに対応して行われている政策についても調査を進める予定である。 平成25年度は、研究計画の最後の年度であり、今までの研究結果を取りまとめたうえで、地域間人口移動についての体系的な研究実績報告を行えるよう取り組みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、研究に必要なデータやソフトウエア、書籍購入のための費用、地方自治体への聞き取り調査のための旅費を利用する。 そして、国内と国外両方の学会でこの年度の研究成果を発表する計画をたてており、そのために旅費を使用する。また、資料収集のための出張を行う予定である。 成果を学術誌やジャーナルに投稿することを予定しており、そのための投稿費用と英語論文の校閲のための費用が必要となる。そして、最終年度末までに、3カ年の研究成果をまとめた成果物冊子を作成する予定である。その発行に要する印刷費を、研究費から使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)