2012 Fiscal Year Research-status Report
第2次世界大戦後西ドイツにおける難民・被追放民の受容と社会・経済統合の史的研究
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23530421
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
西田 哲史 創価大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50440243)
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Keywords | 経済史 / 現代史 / 移民史 / ドイツ |
Research Abstract |
平成24年度4月~7月の期間は、初年度同様、先行研究の確認と関連史資料の特定のための情報検索および収集のための活動に費やした。例えば、インターネット上の各種データーベースの検索や大学の夏期休暇に訪問予定の文書館に問い合わせるなどして、図書・論文等の関連史資料の所在確認を行った。この作業の過程で、第2次大戦直後の難民・被追放民の受け入れと石炭・鉄鋼業との関わりを示す資料が、NRW(ノルトライン・ヴェストファーレン州)のハッティンゲン市の市立文書館にある可能性が分かり、調査訪問の可否を打診した。 8月には、文書館所蔵文書の調査のため、昨年同様NRWの州立文書館(デュッセルドルフ)と鉱山文書館(ボーフム)を訪問した。前者文書館では、昨年同様、第2次大戦後、ドイツ東部地域から大量流入した難民・被追放民のNRWへの受容に関する多くの文書を確認・閲覧できた。後者文書館では、昨年の訪問時に時間的制約から不十分だったルール地域の石炭産業が難民・被追放民の受容とどのように関わったかを示す文書・史料を閲覧することができた。更に、ハッティンゲン市立文書館を訪問した。ここでは当該市にあった鉄鋼企業の敷地などが被追放民のために用立てられたことなどを示す文書を発見することができた。また、現在フンボルト大学に在籍し移民研究に詳しいポツダム大学研究員のM・ミュンツェル博士と懇談する機会を得て、種々助言を受けた。 9月以降は、これまで収集してきた2次文献を含む史資料とドイツ調査の結果の分類・分析といった基礎的研究作業を継続して行った。この作業を通じて、難民・被追放民の受容に消極的であったNRWであったが、その一方でドイツ経済の心臓部であったルール工業地帯を有していた当州は、当初より労働力確保の観点からも難民・被追放民の受容に興味を示していたことも判明した。この点は本研究を遂行する上での大きな成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次文献を含めた刊行物資料の収集に関しては、古書・コピーも含めて一部入手困難なものがあったが、順調に収集できた。ドイツにおける文書館調査に際しては、たとえば、デュッセルドルフの州立文書館では、NW-99: Ministerium für Wirtschaft、NW-115: Staatskanzel - Landespressestelle、NW-158: Landespressestelle、NW-67 / NW-200: Ministerium fuer Arbeit, Gesundheit und Soziales - Fluechtlinge, Vertriebene, Heimatlose Auslaender、NW-367: Finanzministeriumのナンバリングが付された史資料の中から難民・非追放民関連の史資料を探しだし閲覧した。 また、ボーフムにあるドイツ鉱山文書館では、BBA-80: Aktiengesellschaft des Altenbergs für Bergabu und Zinkhüttenbetrieb, Overath-Untereschbach、BBA-157: Schachtanlage Westfalen, Ahlen (Westfalen)、BBA-205: Nachlass: Rolf Glitz, Hamm (Westfalen) などの史資料を閲覧した。これら閲覧した膨大な史資料群から、本研究にとって重要と思われる未公刊史資料を発見することができた。 そして現在は、2次文献・刊行物資料を含め、これまでにドイツの文書館調査で収集した史資料の読み込みと分析を進めながら、本研究の導入的部分となる占領期における占領軍およびドイツ側の難民・被追放民の受け入れ政策に関して、原稿の執筆を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様、難民・被追放民受容政策にかかわる事例の検証に必要な史資料および2次文献等の収集と分析を継続する。大学の夏期休暇を利用して、ドイツでの文書館調査を行う。今夏はデュッセルドルフの州立文書館、デュースブルクのテュッセン・クルップ・コンツェルン文書館を利用する予定である。また、ドイツ人研究者とも意見交換したいと考えている。 最終年となる今年度は上記の作業に加え、これまでの基礎作業を前提に、収集した史資料の分析に基づいて、占領期における占領軍およびドイツ側の難民・被追放民の受け入れ政策に関して、原稿の執筆を進めるとともに、ドルトムントやデュッセルドルフといったNRWの代表的な都市を中心としたルール工業地帯の各産業(とくにその代表産業である石炭産業)が難民・被追放民をどのように受け入れ吸収していったのかを中心に考察していく。 初年度同様、2年目にも調査のために訪問した文書館のうち、ドイツ鉱山文書館では、本来、史資料の複写等を一切認めておらず閲覧のみだが、本研究が科研費採択研究である旨等、説明した結果、例外的に複写許可が出た。ただし、実際に複写された史資料が日本の私の手元に届くまでに5ヶ月近くかかった。そのため史資料の整理・分析等に少々遅れが出たのも事実である。こうした状況は他の利用文書館でも起こりうる可能性があるので、研究の進捗状況に支障が出ないように、とくに注意が必要と感じている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の助成金(24,120円)があるが、その理由は当該年度に2次史資料文献を古書で購入できたこともあり、文献複写代が予定よりも少額で済んだことなどに起因している。 当該研究費を含め、次年度には、国内の研究会参加費(社会経済史学会第82回全国大会 [於:東京大学/2013年6月1~2日] 参加費用、交通運賃)として1万円、夏期休暇を利用してのドイツでの調査・研究旅費(航空運賃:10泊11日 [内機内一泊] 1名分、現地交通費[電車・バス等運賃]、宿泊費、日当)として50万円、また、ドイツの各文書館および大学図書館等での資料・文献複写費・郵送料として5万円の使用を予定している。 さらに、設備備品として、「難民・被追放民関連図書」と当時(第2次世界大戦後)の時代を扱った「社会経済史関連図書」およびドイツ政府・省庁刊行(統計)資料の購入費として11万円、消耗品(プリンター用交換カートリッジ、記憶媒体CD-ROM/USBメモリ、論文等の複写費など)の購入費用として5万4千円の使用を予定している。以上、次年度は総計で72万4千円の研究費を使用する見込みである。
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