2013 Fiscal Year Research-status Report
人事プロフェッショナルの多技能化に関する実証的研究:人的資源の全体最適化に向けて
Project/Area Number |
23530478
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
井川 浩輔 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (80433093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
厨子 直之 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (40452536)
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Keywords | 経営学 / 人的資源管理 / 人事プロフェッショナル / 多技能化 |
Research Abstract |
本研究の目的は,組織における人的資源管理の全体最適化を実現する人事プロフェッショナルの実像について,質的・量的データを収集し,その解明を試みることである。人事プロフェッショナルがどのようなスキルを活用して,経営戦略と人的資源管理の垂直的な結び付きや,人材育成や人事考課など人事機能間の水平的な結び付きを目指しているかを明らかにする。平成25年度の研究実施計画は質的本調査を行い,平成26年度から開始する量的予備調査に向けて,人事プロフェッショナルの測定指標となりうる要素を抽出することであった。 平成25年度研究実績の概要,特に,質的本調査の具体的内容は以下のように整理できる。第1に,人事プロフェッショナルに対してインタビューを行った。その調査結果における重要な点の1つとして,経営戦略の達成に貢献する人事活動に関連する質的データが収集されたことがあげられる。その意義として,例えば,人事プロフェッショナルが人的資源管理のスキルに加えて,経営戦略に関連するスキルもある程度保有していることが丹念な聞き取りによって確認できた点をあげることができる。第2に重要な内容は,前記の戦略的な人事業務,例えば,経営戦略に資する人的資源管理施策に関する改善提案を実際に観察できたことであろう。経営戦略と人的資源管理の連動性を説明・予測・統制しようとしている人事プロフェッショナルの行動に関連する観察データは,人事プロフェッショナルのスキルを描写する上で意義深いものである。第3に,13社の人事プロフェッショナルを対象にグループ・インタビューを行ったことも重要性を有する。その意義は,人事プロフェッショナルの多技能化に関する質的データを収集し,企業間の違いと全体の傾向それぞれの把握を可能にした点にあろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己点検評価による本研究目的の現在までの達成度について,以下のように要約する。第1に,平成25年度に行った質的本調査では,サンプリングした調査対象者が経営戦略と人的資源管理の関係性を積極的に構築していたため,インタビューを繰り返し実施した。このようなハイ・パフォーマーに対し何度も聞き取りを行うことで,一定の妥当性と信頼性が保たれたリッチなデータの収集が可能になった。しかしながら,インタビュー・データには調査対象者の主観的な要素が残されていた。そこで第2の取組として,新たに人事業務の観察を行い,データの客観性と具体性を高めることを試みた。例えば,人事プロフェッショナルが経営戦略を達成するための教育訓練に関連する人事データ分析から改善提案までを行う様子を観察して,インタビューの裏付けが可能になっただけでなく,聞き取りで語られなかった行動も確認することができた。ただし,観察が可能であった調査対象者や人事業務は限られたものであった。第3に,インタビューや観察の発見事実を一般化するためにグループ・インタビューを行った。多様な業種を対象としたグループ・インタビューを半構造化することによって,比較事例分析を行うことができた。また,グループ・インタビューにおいて開放的な質問を一部用いることにより,人事プロフェッショナル育成の促進要因などについて幅広い情報を収集することができた。 このように,面接法と観察法を併用してトライアンギュレーション(方法論的複眼)を実現したこと,また,グループ・インタビューによって比較分析に加えて多様なデータの収集も可能になったこと,という2つの理由から本研究の目的はある程度達成していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の研究推進方策について簡潔に説明する。 平成26年度は,4月から6月頃,研究代表者と研究分担者が打ち合わせを行い,平成25年度に実施した質的本調査の調査結果を再検討して年間の研究計画を策定する。調査協力を得る際に一定の時間が必要になるという課題が生じる可能性があるため,打ち合わせの結果を研究協力者に早急に伝えるという対応策をとる。7月から9月頃,研究代表者と研究分担者が研究会を実施し量的予備調査で用いる分析枠組や質問項目を作成する。その際,分析枠組の妥当性を高めるため,また,質問項目のワーディングを確認するため,研究協力者にも研究会に参加していただく。そして,研究協力者が所属している企業などの同意を得た上で,量的予備調査を行う。10月から12月頃,研究代表者と研究分担者が量的予備調査で収集したデータを分析して,その結果を研究会で研究協力者らに報告し,分析枠組や質問項目の検討を行う。1月から3月頃,研究代表者と研究分担者が量的予備調査に関する結果や議論を紀要などにおいて公刊する。 本研究課題最終年度である平成27年度は,4月から6月頃,研究代表者と研究分担者が打ち合わせを行い,量的予備調査結果をもとに年間計画を作成する。7月から9月頃,研究代表者と研究分担者が分析枠組と質問項目の最終確認を行う。その後,研究協力者に紹介していただいた企業などの同意を得た上で,量的本調査を実施する。10月から12月頃,研究代表者と研究分担者が研究会を開催して量的本調査で収集したデータを分析する。1月から3月頃,量的本調査の分析結果を中心とした論文を執筆して学会誌などに投稿する。
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Research Products
(2 results)