2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530502
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高久保 豊 日本大学, 商学部, 教授 (20246804)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国 / ビジネスモデル / 次世代 / 経営学 / 経営規範 / 新儒法マネジメント / 陰陽和合 / 国際情報交流 |
Research Abstract |
本年度は「次世代中国ビジネスの経営規範をめぐる一考察:その背景に関する整理を中心に」(アジア経営学会第18回全国大会)において、3か年の研究課題の土台にかかる事柄の整理を行った。その概要は、以下の通りである。 従来型の中国のビジネスモデルは、改革・開放政策以降の「郷鎮ビッグビジネスの成功モデル」、その後の「グローバル戦略による成功モデル」から近年の「超ビジネス連鎖による利益創出モデル」に至るまで、「低コストの労働集約型産業による発展」を前提に、社内で厳しいルールを決め、従業員個人への報酬を成果と連動させ、やる気を引き出す管理手法を採用することにより、グループ内ネットワークの規模を急拡大させるようなスピード感あふれるイメージを有するものであった。 ところが、2010年代初頭から増加しつつある議論は、広くステイクホルダーとの関係性を踏まえ、永続的に事業を発展させるビジネスの在り方である。とりわけ、企業倫理、CSR、環境保護への視点、従業員への配慮など、ビジネスの在り方をトータルに設計する基盤となる価値観への言及が特徴的である。本研究課題における「経営規範」という用語について、かかる価値観との関連で問題を整理する重要性が抽出された。 こうした現象は、中国経済の存在感の拡大とさらなるグローバル化、国内における「国学ブーム」の勃興などにみられる中国古典思想の再評価、中国企業における出稼ぎ労働者に対する最低賃金の値上げと「ルイスの転換点」の議論、環境保護に対する国際的な関心などと連動する動きであると考えられる。これらより、次世代中国ビジネスの研究においては、経済効率一辺倒の視点でなく、「経営規範」との関連で企業の在り方を問うアプローチが不可欠であることを提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3か年を通じた研究計画は、2つの個別領域と1つの統合、すなわち、(1)実践領域(=技術・管理面と経営規範面)、(2)理論領域(=道徳に関する諸学説と政策の検討)、(3)統合理解(=概念装置の構築)という枠組みに関心を払い、研究を進めていくこととした。とりわけ、平成23年度においては、(1)実践領域における基本データを収集する準備を行うことに重点を置く予定であった。 ただし、現実の進行状況としては、研究者との情報交換の過程において、企業訪問等につきさらなる検討が必要であることが判明したため、(1)実践領域における活動を進めつつ、(2)理論領域における検討に同等以上の重きを置くこととした。とくに、新しい価値観をめぐるインタビューの際に支障をきたさない平易な表現の可否を検討することに留意した。総体としてみれば、おおむね順調な進展といえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もおおむね、当初の研究計画をそのまま実施することとする。 上記「現在までの達成度」の「理由」欄に示したように、引き続き、(1)実践領域、(2)理論領域、(3)統合理解という枠組みに関心を払いながら、研究活動を継続していくことが不可欠である。とりわけ、理論領域と実践領域を統合するさい、本研究の狙いを平易な言葉で表現することが不可欠になる。この作業には、研究活動の全体像の提示が必要であるだけでなく、中国古典思想を含む難解な事柄を平易な形で構造化したり、日本語・中国語・英語の3言語表記を試みたりする活動も含まれている。 そのうえで、平成24年度は、中国でのフィールド調査を踏まえ、理論的な整理を行い、国際会議での発表や研究者との意見交換をさらに進めることが求められる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度において「次年度使用額」が生じたのは、上記「現在までの達成度」の「理由」欄に示したように、実践領域にかかる研究活動のうち、一部分のフィールド調査(とくに若干の企業訪問等)を次年度に回さねばならなくなったことのほか、平成24年度において中国・韓国等で開催される国際会議で、可能な範囲において多くの研究者からのコメントを得る活動を行う必要が生じたためである。 このことを受けて、次年度においても、引き続き、国際会議での発表とフィールド調査のための海外渡航費、ならびに現地における資料・文献収集を軸にしながら、これらに関連する活動にかかる諸経費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)