2011 Fiscal Year Research-status Report
建設業におけるマネジメント・コントロール実態に適合した入札制度設計に関する研究
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23530566
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
奥本 英樹 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (50277753)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中小建設業 / 業界構造 / ゲーム理論 / オークション理論 |
Research Abstract |
本研究は、中小建設業企業のマネジメント・コントロール、業界慣行および産業構造の実態解明を行い、それらを所与として中小建設業企業の適切な競争環境整備のための制度設計をゲーム理論およびオークション理論を援用して理論的に分析しようとするものである。 この目的のために、平成23年度では、筆者がこれまでに行ってきた中小建設業企業の実態解明に関する調査をより詳細かつ調査対象企業を広げてに行った。そこでは、地域性、企業規模などを考慮しながら、福島県に本社を置く中小建設業企業65社に対し、インタビューおよびアンケート調査を行い、それらのマネジメント・コントロール・システム、業界取引慣行などの実態を抽出した。これらのデータに加え、調査対象企業の財務データを入手し、アンケートデータとともに多変量解析の手法を用いて統計的に解析し、中小建設業企業の業界構造の精緻な分析にも努めた。この結果、地方における中小建設業企業の業界構造は、独特の構造を有しており、それらを鑑みた場合、現在わが国の公共工事発注において実施される一般競争入札が公正、公平な競争に資するとは言い難いと思われる結果を得た。 平成23年度におけるこうした研究実績は、日本管理会計学会設立20周年記念論文集、The Journal of Management accounting, Japanに論文として投稿し、現在掲載可として受理されているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、当初の計画通りわが国の中小建設業企業のマネジメント・コントロール・システム、業界取引慣行、業界構造の詳細な実態解明を行う目的がおおむね達成されたものと考える。中小建設業企業65社に対して、1社当たり2時間程度のインタビューおよびアンケート調査を直接各企業のトップマネジメントに行い、回答を得ての分析は、わが国の中小企業研究でもまれであり、本研究が中小企業に関する業界構造や取引慣行の実態解明において少なからず貢献し、研究蓄積となったものと確信している。 しかしながら、平成23年度において論文として投稿した研究においては、中小企業に関する競争環境の制度設計についての理論的考察が不十分であり、中小建設業企業の取引実務慣行の実態報告に終始した感もある。したがって、上記に関する理論的考察およびそれに基づいた分析フレームワークの構築とシミュレーションやさらなる実証研究などが次年度以降に残された課題であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降の研究では、平成23年度の研究から得られた中小建設業界の産業特殊性や取引慣行の特異性を所与として、そうした業界構造における適切な競争環境整備のための制度設計を理論的に分析、検討したいと考えている。したがって、まずそうした業界特殊性をもつ中小建設業企業に対して産業組織論における知見をもとに、ゲーム理論のアプローチを用いて、それらの企業行動を分析する。次に、競争環境に関する制度設計においては、理論的に検討された中小建設業企業の行動様式とともに、現実の産業構造や業界慣行などを考慮に入れつつ、それらの制度補完性を意識して、比較制度分析およびオークション理論のアプローチに基づいて中小建設業界に適合した競争制度を分析、解明したいと考えている。 これらの理論的研究によって得られた知見は、研究の後半段階において、さらなるインタビュー調査やフィールドスタディを行うことによって実証的に再検討する予定である。当然ながら、研究によって得られた知見は、随時学術論文として発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度以降では、当該年度以降に推進する理論研究のための文献購入、研究会開催のほか、理論研究をベースとしたさらなる実証研究のためのインタビュー調査やアンケート調査などに研究費の一部を充当する予定である。さらに、実証研究に必要とされる物品の購入も必要に応じて充当する。また、研究成果が得られた際、その都度学会発表等を行うため、そのための旅費等も計上する予定である。
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