2012 Fiscal Year Research-status Report
建設業におけるマネジメント・コントロール実態に適合した入札制度設計に関する研究
Project/Area Number |
23530566
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
奥本 英樹 福島大学, 経済経営学類, 教授 (50277753)
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Keywords | 中小建設業 / 入札制度 / オークション理論 |
Research Abstract |
本研究は、中小建設企業のマネジメント・コントロール、業界慣行および産業構造の実態解明を行い、それらを所与として中小建設業企業の適切な競争環境整備のための制度設計をゲーム理論およびオークション理論を援用して理論的に分析することを第一の目的とする。さらに、第二の目的として、アンケート調査によるデータや財務データなどのハードデータを用いて定量的に前述の理論研究を検証しようとするものである。 この目的のために平成24年度では、以下のようにして研究を進めた。まず平成23年度中に行ったアンケートデータおよび財務データによる研究成果を論文として、日本管理会計学会、The Journal of Management Accounting, Japanに平成23年度中に投稿していたもの(すでに査読を経て受理済み)をエディターからの指摘を得ながら、より精緻化することに努めた。理論研究面などを精緻化し、現在掲載を待つところである。 このほか平成24年度では、東日本大震災に代表される自然災害等の復旧事業において現在の建設業界における入札制度が機能不全を起こした事実に鑑み、それらの要因の抽出を主にヒアリング調査を通じて行った。この結果、現在の一般競争入札が自然災害などからの復旧工事のような緊急性を帯びた案件には、コスト的、時間的に機能していないことが明らかになった。また、現在、地方の中小建設業界には慢性的な人員不足が生じており、そうした問題も現在の入札制度の欠陥と密接に関係している事実も確認できた。現在はこれらの問題解決に向けたさらなる現状分析とそれらを取り入れた理論分析を中心に研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度では、地方の中小建設業界における業界慣行などのソフトデータを取り入れた入札制度設計を平成23年度の研究成果を踏まえてより強力に推進するはずであったが、これに関して目的達成の状況がやや遅れているものと考えている。 この理由としては、平成23年3月に発生した東日本大震災およびその他の自然災害の多発により、災害復旧工事が過度に例外的なまでに発注され、建設市場が大きく混乱した結果、平常時をベースとした研究が予定した通りに進められなかったことによるものである。しかしながら、同時に、こうした非常時には現在の建設業界における一般競争を中心とした入札制度が機能不全を起こすという事実を確認できた側面もあった。こうした事実から平成24年度では、現在の入札制度における機能不全の要因を当初の研究目的とは違った角度から分析し、加えてヒアリング調査などを行うことでいくつかの新たな要因を抽出することができた。これらの成果は本研究課題の目的達成に大きく貢献するものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、平成23年度に行った研究成果をもとに、中小建設業界の産業特殊性や取引慣行の特異性を取り入れたより機能的な入札制度設計の理論的研究を進める予定である。ここではオークション理論やマッチング理論などにおける先行研究の成果を取り入れつつ、わが国の地方建設業界に適した入札制度設計を試みる予定である。 さらに、平成25年度では、すでに述べたように東日本大震災に代表されるような突発的かつ甚大な自然災害時においては、現在の入札制度がより機能不全を起こすという事実の確認に基づき、そうした機能不全を引き起こす要因のさらなる抽出とそれらの因果関係を分析する予定である。そして、それらの問題解決につながるメカニズムを理論面、実証面の双方から解明・検証したいと考えている。したがって、平成23年度から現在までにおける入札状況とそれらの結果の分析のほか、建設業界に対してインタビュー調査やアンケート調査をより詳細に実施していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、上記の目的達成のために必要とされる文献購入のほか、研究会の開催、データ入手のためのインタビュー調査やアンケート調査などを中心として研究費を使用する予定である。同時に、海外における調査や研究最終年度である当年度においては、本研究の成果を学会等で発表する予定であり、それらにかかる旅費などにも研究費を充当することにしている。
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