2013 Fiscal Year Annual Research Report
公正価値測定による銀行会計の構造分析,その導入が銀行経営や産業に与える影響の予測
Project/Area Number |
23530604
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松本 敏史 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90140095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳賀 芳弘 京都大学, 経営学研究科, 教授 (70163970)
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Keywords | 公正価値会計 / 会計の基本機能 |
Research Abstract |
この研究プロジェクトは,資産・負債の公正価値測定が企業会計の基本機能や企業経営に与える影響,わけても銀行経営に与える影響を分析することを目的としてきた。ここでいう基本機能とは①経営管理者が企業を運営するために必要な情報の提供,②配当額や課税所得額の計算根拠となる処分可能利益の測定,③資金調達のための資本市場への情報提供を意味している。このうち,本年度は②と③についてまとめの考察を行った。まず②については,評価益の計上を前提とする公正価値会計が分配可能利益の計算に適さないことが多くの論者によって指摘されている。本研究では、これに加えて、評価益の分配を許容すると、たとえ投資が成功しても資本維持ができなくなるケースがあることを確認した。一方,企業会計が今後公正価値会計の色彩を強めたとしても、分配可能利益の計算に対する社会的要請が消滅するわけはない。そのため、企業会計が全面的に公正価値会計に移行した場合を想定し、キャッシュフローを手がかりとする分配可能利益の計算方法を考案した。 次に③資本市場に対する情報提供機能と公正価値会計の関係である。公正価値会計の究極の姿は純資産額によって企業価値を表示する貸借対照表の作成であろう。その場合、資産・負債を公正価値で測定した後に,当該企業の超過収益力を反映したのれんを追加計上する必要がある。これに関連する会計上の論点にのれんの償却不要論(IFRS)があるが,その妥当性は経済の実態である超過収益力の持続可能性に基づいて判断されなければならない。この点について当該領域における実証研究の専門家を招いて数度の研究会を開催し、超過収益力が数年のうちに消滅することを確認した。 さらに公正価値会計と銀行経営の関係については,バーゼルによる銀行規制の基準が更新されるたびに,その規制内容がますます公正価値測定に依拠したものになっていることを確認した。
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