2012 Fiscal Year Research-status Report
「個人化・私化・心理化」論の展開-社会概念の再構築を目指して
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23530617
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
片桐 雅隆 千葉大学, 文学部, 教授 (90117937)
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Keywords | 個人化 / 私化 / 心理化 / 国際交流 |
Research Abstract |
「個人化、私化、心理化」をキーワードとして現代社会の傾向に迫ろうとする本研究において、今年度は、とくに海外の研究者との交流を通してその研究を推進することに重点が置かれた。まず、10月に研究代表者の片桐が、10月にオーストラリアの南オーストラリア大学のホーク研究所を訪ね、そこでアンソニー・エリオット教授と本研究に関する移管交換をするとともに、片桐がホーク研究所において、本研究に関する研究成果の報告を講演会という形で行った。そこでは、個人化、私化、心理化をキーワードとして、現代の日本社会の分析を行った。また、一方で、11月に、エリオット教授を千葉大学に招聘し、24日に、日本理論社会学会、ホーク研究所との共催でシンポジウムを開催した。そこでは、エリオット教授の報告の他、片桐を含めた二人の日本人研究者の報告を含め、本研究のテーマに関する活発な議論が展開された。 一方で、今年は、エリオット教授との共同研究の成果も出版された。1つは、ラウトリッジ社からのRoutledge Companion to Contemporary Japanese Social Theoryの出版である。これは、エリオット教授と片桐らの編集による、日本の社会学理論の海外への発信を目的としたものである。そこでは、日本の代表的な理論社会学者の論文を掲載したのみならず、海外の著名な社会学者にコメントを書いてもらうことで、日本と海外の社会学者のコラボレーションを実現した。片桐は、その本の中で、個人化、私化、心理化をキーワードとして戦後の日本社会のあり方を分析した。また、エリオット教授、澤井敦慶応大学教授と片桐の3人は、共同の論文を、Journal for the Theory of Social Behaviorに掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の項でも書いたように、2012年度は多くの研究成果を達成した。 まず第1に、当初の目的であったエリオット教授との国際交流に大きな成果を残した。10月での研究代表者の片桐のオーストラリアの南オーストラリア大学ホーク研究所訪問と、そこでのエリオット教授と本研究に関する移管交換や、片桐のホーク研究所での講演、および、11月でのエリオット教授の千葉大学訪問と、日本理論社会学会、ホーク研究所との共催によるンポジウムの開催がおおきな研究成果である。 一方で、エリオット教授との共同研究の成果も出された。1つは、Routledge Companion to Contemporary Japanese Social Theory(ラウトリッジ社)の出版である。これは、日本の社会学理論を海外に発信する上で重要な成果であるといえる。片桐は、その本の中で、個人化、私化、心理化をキーワードとして戦後の日本社会のあり方を分析した。また、もう1つの重要な研究成果は、Anthony Elliott, Masataka Katagiri & Atsushi Sawai (2012) “The New Individualism and Contemporary Japan”, Journal for the Theory of Social Behavior,(42-4, pp.425-443.)の公刊である。これは、本研究の個人化、私化、心理化をキーワードとした現代日本の分析の成果でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、研究業績の概要で示したように、エリオット教授の日本への招聘と、片桐の南オーストラリア大学のホーク研究所への訪問、また、研究業績の成果としての海外の出版社での英文の返書の出版、海外の有力学術雑誌での研究成果の出版など多くの成果を残した。 今後は、本研究のテーマである「個人化、私化、心理化」をキーワードとして現代社会や、現代の日本社会を分析する成果を残すために、今までの成果をふまえてより体系的な分析をすることが目的とされる。第1に、個人化、私化、心理化という現象を、社会の消失、歴史の縮小、自己言及化の深化という3つの点から理論的に整理し、第2に、現代の日本社会における個人化、私化、心理化のありかたを、社会学的な自己論の立場から分析し、それらをふまえて海外、とくに西洋社会における個人化、私化、心理化の傾向と日本社会におけるそれらの傾向とを比較検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究計画の主なものは、昨年度までの研究成果をふまえたまとめ的な作業が主となる。従来収集してきた文献を再点検して、不足分を補うこと、また、文献資料を整理するための機器や文具を整えることが第1に必要とされる。また、とりわけ、研究成果のまとめの作業の中で必要とされる、主には国内の研究者との意見交換や、学会、研究会の出席のために予算を用いることが第2の研究費の使用目的である。 なお、24年度の予算の残額は、当初予定していた物品価格が若干ずれていたために生じたもので、今年度それを有効に使用したい。
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