2012 Fiscal Year Research-status Report
質的データとしてのライフストーリーのアーカイヴ化と<調査遺産>継承の経験的研究
Project/Area Number |
23530619
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小林 多寿子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (50198793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜井 厚 立教大学, 社会学部, 教授 (80153948)
井出 裕久 大正大学, 人間学部, 教授 (50223128)
小倉 康嗣 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (40626199)
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Keywords | 質的データ / アーカイヴ化 / ライフストーリー / インタビュー / 調査遺産 / 社会調査法 / データ二次利用 / デジタル・データ化 |
Research Abstract |
本研究は、質的データとしてのライフストーリーのアーカイヴ化問題を、1.社会調査としてのアーカイヴ化、2.<調査遺産>としてのアーカイヴ化、3.個人的語りの歴史的価値に鑑みたアーカイヴ化という3つの局面に整理して研究活動を進めてきた。具体的には①質的研究者への現状調査、②リサーチヘリテージ調査とアーカイヴ化の可能性調査、③国内外のアーカイヴ事例調査という3つの調査を実施して実態の把握とアーカイヴ化の問題を考えることを企画してきた。 ①として、前年度の平成24年2月に「質的調査データの管理保存に関するアンケート」調査を日本オーラルヒストリー学会、生活史研究会、ライフストーリー研究会に協力依頼して郵送により実施し、350通送付し、133通の回答を得たが、それについて平成24年5月より回答結果を整理し分析に取り組み始めた。3回の研究会を開いて、回答をもとに質的調査に携わる研究者の質的データの管理保存をめぐる現状について、研究分担者一同で検討を重ねた。平成24年12月1日には一橋大学において「フォーラム 質的調査データの公共性とアーカイヴ化」というテーマで公開シンポジウムを開いた。調査協力をお願いした関係団体に対して調査結果の中間報告を兼ねて質的調査データをめぐる問題で意見を交わし、合わせて調査成果の還元する機会を設けた。②として、80歳代の社会科学者へのインタビュー調査と実際に保存されている資料調査をおこなった。また研究代表者所属の一橋大学での大学アーカイヴズ・プロジェクト活動に関わった。③として、国内の複数の社会科学的アーカイヴズを現地訪問したり、ヒアリングを実施して実態を調べたほか、フランスで事例調査をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3年間の期間中、1、2年度目はおもに現状把握のためにアンケート調査とインタビュー調査、アーカイヴ機関での実態調査と事例調査を実施し、3年度目にはアーカイヴ化の具体的可能性を志向するとともに、<調査遺産>をめぐるシンポジウムの開催、研究成果の学会発表や印刷物での公表に取り組む計画で進めてきた。 2年度目の平成24年度は、質的調査研究者へ質的データの管理保存公開をめぐる状況と考え方を問うアンケート調査の回答をもとに、その調査票の集計分析に着手した。また自由記述欄には多くの意見が記されており、それらの意見を生かす形で、12月には「質的調査データの公共性とアーカイヴ化」というテーマで質的データ・アーカイヴ化の現状と課題を考えるフォーラムを開催した。第1部ではアンケート調査の集計結果を紹介し、社会学・歴史学・文化人類学など複数領域からの参加者を交えて意見交換をおこなった。第2部では国立公文書館アジア歴史資料センターと香川県立文書館からパネリストを招いて実際のアーカイヴズの現場で質的資料データの管理保存公開に携わる研究者たちに現状と課題を紹介してもらい、討論した。このフォーラムの機会は本研究の中間報告的な位置を占めており、研究の成果へ深い関心が寄せられていることがわかり、順調に研究が進展しているという手ごたえを感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方策について、平成25年度は研究期間の最終年度として次の三点をあげて取り組みたいと考えている。1.平成24年度の調査の継続と充実を図ること、2.アーカイヴズの可能性を具体的に探求すること、3.調査成果を発表し、議論の場を得ること。これらの3点を通して、最終年度として研究課題の達成に向けて活動していく。 1については、アンケート調査をもとにしたインタビュー調査を実施する。2については、20世紀の日本の家族社会学、宗教社会学において第一人者であった80歳代の社会学者より50年近くにおよぶ調査活動で残された膨大な調査資料を預かることができるという稀有な機会を得られたので、これらの調査データを貴重な調査遺産としていかにアーカイヴ化できるかその可能性を検討する。3.関西社会学会、日本社会学会においてシンポジウムの形で質的データのアーカイヴ化の問題、リサーチヘリテージの問題をテーマとして議論を交わし、そのような場で本研究課題について議論を深めていく。また平成25年度は最終年であるので、これまでのアンケート調査やインタビュー調査の成果や、アーカイヴズの実態調査で得た知見をまとめ、報告書の形で研究成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の未使用額41,408円は、国内アーカイヴズ視察の日程が変更になったことにより生じたものである。 平成25年度は、1.調査遺産としての質的調査資料のアーカイヴ化検討、2.補足調査と成果発表、3.報告書作成を計画している。とくに、1については80歳代の社会学者が保存していた調査資料・調査データを<調査遺産>としてアーカイヴ化する作業として資料点検分類作業やチェック作業、一覧表作成作業等に作業補助者への謝金支出が見込まれる。資料保存のためのスキャンニングや複製のための経費、デジタル化への準備作業経費も必要と考えている。また2については、補足調査のために国内外の旅費を含む調査経費が予定されており、未使用額と合わせて執行する。3については、調査成果を報告書としてまとめて公表するために印刷費やデジタル化とデジタル構築のための諸経費が見込まれる。
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Research Products
(10 results)