2012 Fiscal Year Research-status Report
組織変動と社会変動の関連に対する組織デモグラフィー的接近
Project/Area Number |
23530634
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高瀬 武典 関西大学, 社会学部, 教授 (90187956)
|
Keywords | 組織 / 組織デモグラフィー / 組織生態学 / ソフトウェア産業 / 平均寿命 |
Research Abstract |
組織のデモグラフィカルな分析のために、全国の全業種の企業を対象に生命表分析を行った。全国の、2012年時点で存続している全業種企業1,425,856社と、1984年以後2012年時点までに倒産した371,650社に関するデータを合わせた計1,797,506社を対象に、業種・所在地についての生命表を算出し、生存時間中央値(いわゆる「平均寿命」)の比較を行った。データ上の制約から1983年以前に倒産した企業の情報が欠落しているため、本来の「かつて日本に存在したすべての企業」に関する値よりも今回の分析結果が、実際より長めに算定されてしまうという限界はあるが、現在利用しうるもっとも包括的なデータを用いた分析であることは間違いない。 その結果、全国全業種をひとまとめにした場合の企業の「平均寿命」は89.1976年であることがわかった。また、業種により企業の平均寿命が著しく差を見せており、大分類レベルでみるならば、最も長いのが金融業で、以下農林水産業、不動産業、サービス業、電気ガス水道業、製造業、卸・小売業、運輸通信業、鉱業の順に続き、もっとも短いのが建設業であった。 また、地方間の比較では、中部地方が最長で、以下中国、四国、東北、関東、九州・沖縄、北海道の順に続き、もっとも短いのが近畿であった。地方と業種の交互作用は大分類レベルではほとんど認められず、業種分布に依存しない各地方ごとの特性が企業の平均寿命に影響をあたえている可能性が大いに示唆された。 企業悉皆的な生存時間分析はいままで行われておらず、本研究が最初のものである。今回のデータは株式会社帝国データバンク社が捕捉しえた企業に限られ、かつ1983年以前の倒産企業が除外されているという制約はあるものの、マクロなレベルでの組織変動を考えるうえできわめて価値の高い成果を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の企業組織のデモグラフィックな動態に関する基礎的な情報として理想的には、全業種全国に関する全企業組織の生命表分析が必要である。そのために最も適した資料として株式会社帝国データバンク社が所有する倒産情報ならびに企業情報データベースがあるが、その価格は高価であるため今回の研究費では全数の利用が不可能と判断された。そこで申請時においては既存の官庁統計等を活用し、企業のデモグラフィックな動態については間接的な推計を行うにとどめる計画であった。ところが、今回帝国データバンク社との交渉の結果、予算の範囲内で倒産企業も含めた既存企業に関する生命表分析に必要なデータが購入可能となったため、当初の計画よりも対象をひろげて大幅に精密な分析が可能となった。 その一方で既存の官庁統計等を使ったデモグラフィカルな分析の順序が後になったが、平成25年度には平成24年経済センサスの速報結果が順次公表されてくるものと予想されるので、その結果を合わせた効率的なデータ作成を行うことで対処していく。 また、もう一つの課題であるソフトウェア企業の取引ネットワーク関係と生存確率の関係についても基礎データの整備を行い、計量分析については一定の進展をみているが、現地インタビュー等の時間をとれなかったために定性的情報や、ソフトウェア業界のより詳細な情報についてはなお残された課題があり、平成25年度には現地調査に重点をおいて対処していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)今年度に作成した全国全業種企業データに関する計量分析をさらに精密化していく。①業種大分類や地方分類で読み取れた結果について、さらに業種中分類、さらに都道府県レベルにまで細分化した分析を行い、企業の平均寿命に対する地域的要因や、業種固有の要因が及ぼす影響についてさらに研究していく。また、今回の全国全業種企業データの制約要因である「1983年以前倒産企業の欠落」が平均寿命の算出に及ぼす影響の除去・補正について数理的に細かい検討を加え、より信頼性の高い平均寿命の算出をめざす。 ②官庁統計(おもに事業所企業統計調査、経済センサス)の結果をもとに、生存分析以外の分析法を用いて、日本企業のデモグラフィカルな分析(「個体群密度」「平均規模」の変動など)を進める。 ③ (1)と(2)の結果をもとに、社会変動と組織変動を統一的に把握するための分析モデルを構築する。 (2) ①今年度に作成したソフトウェア企業の取引ネットワークと生存確率についての基礎データの詳細な分析を行い、企業間ネットワークと企業の平均寿命の関係について、企業所在地との関連も含めて研究していく。 ②計量分析の結果を帰納的に発見結果をまとめ、それらの詳細な意味づけをするために現地インタビュー調査をおこなう。 ③現地調査の結果をもとに仮説をリファインし、最終的に企業間ネットワーク・企業の所在地の地域特性・企業のデモグラフィカルな成長に関するモデルを構築する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はデータの計量分析に重点をおいたため現地調査にまわす時間がとれず、やむをえず残額が発生したが、次年度は旅費としてソフトウェア企業の現地調査に支出する計画である。
|