2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530659
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
平岡 義和 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40181143)
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Keywords | 環境リスク認知 / 社会的信頼 / 階層帰属意識 / 水俣病 / 福島原発事故 / 構造的無責任 |
Research Abstract |
本年度は、主として以下の2つの調査・研究を行った。第一は、環境リスク認知に関する質問紙調査と分析である。これは、さらに二つに分けられる。一つは、昨年度に中日新聞と共同で行った静岡県民に対する質問紙調査のデータの分析である。主な知見は、環境リスク認知、今回の場合は放射能に関するリスク認知は、社会に対する信頼と密接に関係しているとともに、それが自らが下層に属しているという意識を有している人に強く現れるというものである。この知見については、昨年の環境社会学会セミナーで報告するとともに、紀要に論文として公表した。 もう一つは、この知見を追試するために、他の科研を受領している寺田良一氏(明治大学)のグループと共同して、川崎市と水戸市において、環境リスク認知に関する質問紙調査を実施したことである。調査は完了し、本年度にそのデータの分析を進める予定にしている。 第二は、福島原発事故に関する政府、国会などの事故報告書などを収集、読み込み、これまで蓄積してきた水俣病事件に関する研究成果と比較検討を行ったことである。両者に共通するのは、加害企業、規制する行政などにおける種々の不作為が重畳して、結果として重大な結果を招いた点である。こうした不作為の連鎖は、構造的無責任ないしは集団的無責任と呼びうるものである。 現在、この研究成果を論文としてまとめつつあり、今年度後半に『環境社会学研究』の特集論文として刊行する予定になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、他の機関、グループと共同する形で、2つの質問紙調査を実施し、そのデータの分析を着実に進めており、今年度中には、両調査の比較分析の結果を論文としてまとめることができると思われる、 また、水俣病事件と福島原発事故との比較分析も、論点が多岐にわたるため、十分ではないものの、一定の結果がみられ、概要に記したように、それを論文として公刊する予定にしているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
概要に記した寺田良一氏のグループと共同の研究会を開き、川崎・水戸調査の分析結果について検討を進める。最終的には、昨年度に実施した静岡調査と川崎・水戸調査のデータの比較分析を、論文の形でまとめる。 また、引き続き原発事故関連の文献を収集し、水俣病との比較分析を進め、まとめられる部分は論文として公表していきたい。 さらに、他の環境問題のリスクに関する文献を集め、検討し、種々の環境リスクに共通する社会的特性などを抽出し、環境リスクの社会学の体系化を進めていきたい。 そして、可能ならばこれらの研究成果をまとめた報告書を公刊するつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主たる用途は、原発事故、他の環境リスクに関する文献の収集費用である。また、上記の研究会への年数回の出張の旅費も支出予定である。さらに、年度末に研究成果をとりまとめた報告書の刊行費用も予定している。この3つが、研究費の主な使用計画である。
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Research Products
(2 results)