2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530659
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
平岡 義和 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40181143)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 環境リスク認知 / 社会的信頼 / 階層帰属意識 / 組織事故 / 福島原発事故 / 水俣病事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の成果は、大きく分けて、以下の2つになる。 一つは、組織事故という観点から、福島原発事故と水俣病事件の比較分析を行ったことである。組織においては、本来組織が対処すべきリスクを、外部とのコンフリクトと見なすことによって、必要な対応を怠る可能性が常にあり、両事例でも、加害企業、政府の担当部門いずれにおいても、そのような対応が行われたことを明らかにした。その成果の一部は、『環境社会学研究』19号(2013)に掲載した。 もう一つは、環境リスク認知に関する意識調査の分析である。中日新聞と実施した静岡県民調査と、他の科研費プロジェクト調査のデータ提供を受けた水戸・川崎調査について、特に階層帰属意識、社会的信頼、食品の放射能汚染の基準に関する意識に焦点をあてて、分析を行った。いずれの調査においても、帰属階層を下と見なす人ほど、社会的信頼が低く、汚染はゼロでなければならないと考える人の割合が高いとの結果が得られた。この結果は、環境社会学会おいて2回報告するとともに、静岡県民調査の結果は『人文論集』63-2(2013)に公表した。 最終年においては、このようにゼロリスク指向が高いのは、どのような人々なのか、他の質問項目との関連について分析を進めた。その結果、こうした人々は、社会的信頼だけでなく、社会保障に対する信頼や生活満足度も低く、今後の日本社会にも悲観的な見通しを持っていた。つまり、社会に対して否定的ないしは無関心である人々が、現実化した環境リスクに対してゼロリスク指向を強く持つことが明らかになった。この成果は、現在出版を予定してる単行本(共著)に収録する予定である。
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