2011 Fiscal Year Research-status Report
看護・介護分野における外国人労働者受け入れの政策比較研究
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23530664
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大野 俊 京都大学, 東南アジア研究所, 特任教授 (10448409)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 越境ケア / 看護師 / 介護士 / 経済連携協定 |
Research Abstract |
欧米、アジアの看護・介護事情や外国人ケア労働者に関する書籍などを購入・読了し、理解を深めた。そのうえで、2011年10月、多数の看護・介護労働者を海外に送り出しているフィリピン(マニラとその周辺)とインドネシア(バリ島)に合わせて2週間ほど出張し、労働省など関連省庁、在比カナダ大使館、看護協会、看護系大学、高齢者入所施設などを訪れて、関係者からの聞き取り調査を実施した。それによって、送出国政府・看護学校などの送り出しの政策や実態の現状、高齢化が進む欧州やアジア太平洋諸国における外国人介護・看護労働者の受け入れプログラムの現状などについてのデータを入手した。 上記のデータを踏まえて、2011年11月末から12月初旬にかけて2週間、多数の外国人看護師・介護労働者を受け入れているシンガポールとオーストラリア(キャンベラ、パースなど)に出張し、保健省や高齢者省などの関連省庁、高齢者入所施設、看護系大学、介護士等養成の専門学校などで関係者からの聞き取り調査を実施した。こうした調査を通じて、外国人ケア労働者受け入れのスクリーン・システム、看護師国家試験の内実、外国人看護師の補講コース「ブリッジング・プログラム」の実情などについて有益な知見を得た。 研究成果については、2011年10月に東京で開催の多文化精神医学会学術総会、同月にバリ島で開催のアクティブ・エイジングに関する国際ワークショップ、2012年3月に東京で開催の国際保健医療福祉セミナーなどの場で発表し、国内外の研究者はもとより、日本の関連省庁(厚生労働省と外務省)の責任者にも成果をフィードバックした。 また、東南アジア研究所が発行の英字雑誌「Southeast Asian Studies」の特集号(2012年3月刊行)に、研究成果を踏まえた単著・共著の英語論文4本を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界で最も多数の看護・介護労働者を海外に送り出しているフィリピン、インドネシアでは、他の外部研究資金(インドネシア大学との2国間共同研究など)も活用して、日本と諸外国への送り出しの実情や問題点などを、ほぼ計画通り調査できた。 また、当初計画通り、オーストラリアでも、首都(キャンベラ)と地方都市(パース)で、受け入れの実態や政策を調べることができた。 当初、シンガポールについては、平成24年度の調査を計画していたが、「准看護師」としての外国人看護師受け入れなどの調査が、日本のEPA(経済連携協定)での東南アジアの看護師受け入れ政策上、急がれるとの認識から、平成23年度に調査を前倒しして実施した。 その反面、研究資金や研究時間の制約から、当初、23年度に予定していたカナダにおける現地調査は、24年度以降に延期することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
看護・介護労働者の国際移動が顕著な欧州と北米を中心に、外国人ケア労働者受け入れの実態と政策に関する調査を実施する。 ここでのポイントは、外国人ケア労働者に必要とする受入国の言語能力や国家資格、行政側の言語的・文化的適応プログラム、地方自治体、市民団体をはじめ官民の支援態勢である。各国とも、介護労働者と看護労働者では、必要とされる言語能力や資格には、大きな差異があるとみられ、今後の日本における外国人介護・看護労働者の受け入れ政策上、貴重な参考データを提供できよう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
看護・介護労働者の国際移動・域内移動が著しい欧州や北米で、初歩的調査を実施する。スイス・ジュネーブに本部を置く国際保健機構(WHO)における関係者からの聞き取り調査のほか、外国人看護・介護労働者を多数受けいれている英国、カナダなどで政策や実態の調査を進める。主に夏季の調査を考えているが、現地の事情によっては調査国を変更する可能性もある。 これらの調査にあたっては、現地の事情と言語に通じる研究協力者のマリオ・ロペス・京都大学東南アジア研究所助教が同行し、共同調査にあたることを計画している。 また、日本と出張先の海外で、関連する文献・論文をはじめ、先行研究やデータの収集に努める。 研究成果は、異文化精神医学会学術総会などの学会や、関連のシンポジウムやセミナーなどで発表する予定である。
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