2012 Fiscal Year Research-status Report
地域社会の社会的変動過程としての地域情報化に関する社会学的研究
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23530668
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
城戸 秀之 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (00204933)
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Keywords | 地域情報化 / 情報 / メディア / コミュニケーション |
Research Abstract |
今年度は昨年度の研究成果をふまえて大分県での地域情報化の実情の把握を進めるために、情報通信基盤整備をおこなっている自治体への調査を行った。前年度同様に、その際には住民サービス事業としての運営形態・利活用の状況を把握するだけでなく、地域団体における情報通信サービスの利用の実態を調査することによって、情報通信が地域社会に依拠する準拠枠に焦点を合わせた研究をおこなった。 調査は昨年度も実施した臼杵市役所、臼杵市教育委員会、大分市役所、大分市情報学習センター、大分県教育委員会に加えて、新たに行政がケーブルテレビ局を運営する豊後高田市役所、豊後高田市教育委員会、杵築市役所において聞き取り調査を行い、以下の知見を得た。 情報基盤に関しては、前年度地域イントラとして地域の実情に合わせた設計や再構築を地域社会のセクターが主体的に進める必要があることを指摘したが、臼杵市と同様に自治体がケーブルテレビ局を運営する豊後高田市と杵築市での事例を比較をすることによって、情報通信技術やサービスが汎用的な特性を持つのに対して、非営利のケーブルテレビ事業では地域社会のもつ特性に応じて、目的とする地域課題、利用する技術・サービス、民間企業との県警の形態などおいて自治体ごとの相違がみられることが分かった。 また、臼杵市の生涯学習団体の利用実態の関する調査を市と共同で行ったが、それによって地域社会における集合的な情報通信の利用を考察する基礎的な知見が得られた。さらに大分県教育委員会が進める情報化事業においては、先端技術の導入を学校現場の状況に合わせる形で進めることに腐心している点に着目することができた。その他の調査からも大分県の事例では地域という社会的枠組みの下での情報化が試みられていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実地調査に関しては、臼杵市、大分市、大分県教育委員会での調査を継続し、必要な資料収集を行うことができた。さらに前年度に予定してながら実施できなかった豊後高田市に加えて、新たに杵築市での調査を行うことができた。それによって大分県内にある3局の行政ケーブルテレビ局を比較し、地域の情報通信基盤の持つ意味を分析し、地域サービスとしての情報通信に関する知見を更に深めることが可能になった。 これに加えて、当初の予定通り臼杵市役所と共同で公民館の生涯学習団体を対象として、団体としての情報通信機器・サービスの利用実態に関する調査を行うことができた。このように個人ではなく、生活団体における情報通信の利活用の状況に関する実態調査はあまり例がなく、それによって地域の特性を反映した利用傾向の違いを知ることができる貴重な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23年度・24年度の調査ふまえ、この研究で明らかになった団体ベースでの情報スキル・情報サービスの提供の可能性に焦点を合わせて3年間のまとめと以降の研究課題を探るために調査研究を行っていく。平成25年度は臼杵市でおこなった調査をふまえて、生涯学習団体向けの情報サービスを提供する可能性を具体的に探るために行政と関連団体への聞き取り調査をおこなう予定である。 これとともに、前年度実施した聞き取り調査をもとに豊後高田市と杵築市での聞き取り調査をおこない、地方社会での情報通信ネットワークの構築と利活用に関する知見を集めたい。特に豊後高田市ではケーブルテレビ事業を市の活性化事業および教育委員会の教育プログラムとの関連に焦点を合わせて情報と資料の収集をおこなう予定である。また、可能であれば竹田市のケーブルテレビ事業について聞き取り調査を行う予定である。これと合わせて大分市の情報学習センターのボランティア活動や大分県教育委員会の教育ネットワーク事業の調査を進める。 また、現在の情報化政策、情報化事業の特徴を整理し、大分県の事例の重要性と意義を理論的にも明らかにするために、文献による研究をおこなう。 以上により、3年間の研究のまとめとして地域社会や職業圏における情報通信の社会的利用とそれを支える社会的準拠枠のあり方について検討をすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の交付予定額500,000円のうち、まず250,000円を聞き取り調査に必要となる旅費(国内旅費)に割り当て、この研究の基礎となる資料の収集を丹念に行う。聞き取り調査の対象としては、大分県庁、大分市、臼杵市、豊後高田市、杵築市、竹田市での調査を計画している。これに加えて、上記の知見を文献による理論研究および白書等による関連情報収集により整理するために、50,000円を物品費(設備備品費)に割り当てる。 このほか、資料整理に必要なパソコン関係の消耗品等の購入のため物品費(消耗品費)に40,000円、資料整理の研究補助のため謝金等として10,000円、そして研究の研究成果を公表するために、前年度に臼杵市で行った調査の報告書、および本研究課題全体の報告書の印刷費にその他として150,000円割り当てる。
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Research Products
(1 results)