2012 Fiscal Year Research-status Report
体制転換からEU統合へ至る移行期の東欧におけるメディア環境の変容
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23530684
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
清水 真 昭和女子大学, 人間社会学部, 准教授 (30386445)
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Keywords | メディア / 社会主義 / EU / 公共圏 / 民主化運動 / 東欧 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の目的は、社会主義体制の崩壊からEU統合へ向かう旧東欧諸国のメディア変容について考察することにある。2012年度は、8月にチェコ・プラハを訪問し、2013年に入って3月に旧ユーゴスラヴィアのうち、セルビア・ベオグラードと、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエボを訪問した。 チェコは本研究の軸となる国で、近年チェコでの研究が整備されているメディア法分析を行なう文献に多くあたることができた。しかし当該国の関心は、メディア領域、特に広告市場への参入が最も強いようで、本研究の目的であるメディア変容を長期的視野で捉える視点は見出しにくく、本研究の意義を確認することができた。 ベオグラードでは、諸メディア機関への訪問によって、メディアが支える公共圏の性質について、チェコやハンガリーと異なる側面を知ることができた。すなわち、2004年にEU統合を先に果たしていった中欧諸国は、1990年代に西側からの資本流入によって商業メディアが活況を呈し、公共メディアとのせめぎ合いによって公共圏が規定されていった。他方で1990年代に未曾有の民族紛争を経験した旧ユーゴ諸国ではEU加盟が視野に入った時期にリーマン・ショックに遭遇し、EU諸国からの投資は減退メディア市場も縮小した。旧国営メディアは形態こそ公共メディアに移行したが、政府の強い影響を受ける性質には変化がない。センセーショナルなコンテンツを提供する商業メディアは広告市場で生き残れるが、商業メディアが良質性を確保しようとすると、不足する資金を国外からのドネーションによって賄わざるをえない。公共圏は偏向し脆弱である。 サラエボでは、まさしく全てが崩壊した国における公共放送の再興ヘ向けた努力を、サラエヴォ・メディアセンターの訪問で知ることができた。 このように2012年度は旧ユーゴへの訪問によって、中欧諸国との比較の視点を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年に発生した東日本大震災の影響を受けて研究の進行が遅れていた。既述「区分」では、「やや遅れている」を選択したが、2012年に入って遅れをかなり取り戻すことができた。2012年度は8月に主要研究対象地域であるチェコのプラハを訪問し、現地の新しい文献にあたることができた。また年度末の2013年3月には、旧ユーゴスラヴィアのベオグラードとサラエヴォを訪問し、メディア領域関係者と交流してEU加盟申請時期の諸問題を知ることができた。2011年度は研究予算の執行が不十分であったが、2012年度は充分に文献の購入を行って、文献研究を進めて業績公表へ向けた態勢を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、これまでの研究成果をまとめる作業を中心に行なっていく。公表準備が整いつつあるサブテーマとして、①移行期における法制度の観察、②EU加盟申請期におけるグローバルな状況の影響ー旧ユーゴスラヴィア諸国の公共圏創出に及ぼした国際的環境の影響ー、などを挙げることができるので、これらの補足的な文献研究を先行して進める予定である。 研究成果は、まず学内誌において基盤的箇所をまとめ、その後発展個所を日本マス・コミュニケーション学会および情報通信学会での研究発表および紀要への投稿を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度研究予算支出の柱は ① 業績発表のための経費 ② 補足的文献の購入費 ③ 必要により、1回の東欧旧社会主義国での現地調査費 である。
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Research Products
(2 results)