2013 Fiscal Year Annual Research Report
体制転換からEU統合へ至る移行期の東欧におけるメディア環境の変容
Project/Area Number |
23530684
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
清水 真 昭和女子大学, 人間社会学部, 准教授 (30386445)
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Keywords | メディア / 社会主義 / EU / 公共圏 / 民主化運動 / 国境を超える情報の流れ |
Research Abstract |
平成25年度は、調査の知見を最新の研究動向と照らし合わせる研究を行った。 欧州全体を覆う商業主義的な潮流に対し、Hallin, Manciniなどは改めて、欧州内に様々な異なるタイプのメディア観が機能していることを、メディア・システムの類型化によって浮き彫りにした。またJakubowitczらは、旧社会主義諸国のメディアを詳細に類型化している。こうした研究動向は、冷戦期のパースペクティブを脱構築し、世界での欧州メディア・システムにより詳細な考察と修正を加える必要を示している。 また、アラブ・メディアの動向を巡る研究は、今や最も重要な貢献が期待される研究の最前線となっている。国際的な情報格差を巡る問題では、運動の一翼を担った途上国側の動き特に非同盟諸国通信社機構の創設などが言及・評価されることはあまりなかった。最新の研究動向によれば、アラブ地域内での情報秩序の構築を目指す動きは、活発化すると各アラブ国家が自国の情報化を進展させる過程で寸断され、国家単位の情報力強化という方向へ変容する傾向がある。衛星放送登場にともなう「アラブ衛星放送憲章」の採択なども、新興のカタールやレバノンの離脱によって複雑な地政学がもたらされている。 インターネット時代の国境を越える情報の流れに関する国際議論の舞台は、世界情報社会サミット(WSIS)へ移り、アクターも、マス・メディア機関や政府当局のほかNGOに対しても参加を認めるマルチ=ステークホルダー・アプローチが採用されている。NWICO失敗の教訓が、社会・経済的そして地政学的力学にある(Nordenstreng)とすれば、インターネットおよびデジタル技術の発展に技術決定論的成果を期待するのではなく、NWICOを批判的に継承しWSISを巡る地政学を展開する必要がある。 旧東欧を含め、国各地域・各国のメディア状況の再検討と、国際的な情報の流れの世界レベルでの潮流との再接合が、国際コミュニケーション研究の展望を開く。
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Research Products
(2 results)