2011 Fiscal Year Research-status Report
サブシステンス・エコノミーにおける無償労働の再編に関する研究
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23530699
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Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
古田 睦美 長野大学, 環境ツーリズム学部, 教授 (60278166)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 無償労働 / サブシステンス / 農村 / 女性 / 分業 / 社会学 |
Research Abstract |
農や食を中心的イッシューとした地域コミュニティ再編の動きが世界中でみられる中、これまで伝統的な分業の下で女性や農村の無償労働に支えられてきた、家族や地域向けの食料生産や食の提供は、新たなコミュニティの分業の中に再編されつつある。国際的にみた欧州の無償労働の三類型のうち、本年度は、「ロシア・東欧型」としてウラジオストックの近郊農家とバザール、および、「西欧型」の新しい関係として、フランスのレンヌ地域のBIO見本市と農家に対して調査を行った。ロシアではコルホーズ・ソフホーズ時代の計画的栽培のなごりを残す生産者と農家のユニークな契約関係が環境保全型農家および農家へのエコツーリズムの展開する基盤となっており、レンヌでは地域の産消提携活動やBIOマーケットが環境保全型農業の新規就農者の育成と食料の自給・安全確保に貢献し、農と食のコミュニティを広げていた。 国内・県内の農家調査は、提携やソーシャル・ファーム等の地域を基盤とした新たな取り組みもみられ、伝統的なジェンダー分業にとらわれない意識的で対等なパートナーシップを基礎とした運営がみられる。小規模農業や、それを支える消費者のとりくみの中に、環境保全志向と、いきがいや達成感を求める志向、コミュニティづくりの志向等共生を価値とするサブシステンス志向の萌芽がみられるので、引き続き調査を行う。 本研究では、無償労働の評価と再配分に関する、グローバルな視点に立つ分析枠組みの構築を行うとともに、無償労働の新たな価値づけをキーとするサブシステンスの再編にかんする調査を行い、食と農にかかわる分業の再編成の実態をふまえて、新たな労働概念と社会関係のあり方を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外調査は、予定していたイタリア調査の他、フランスでの調査の機会を得て予定以上に進展した。国内調査・県内調査は、震災の影響で対象と調査内容を若干変更して再調整中であり、スタートが遅れた分やや遅れているが着々と進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
震災の影響で国内調査の対象と調査内容を若干変更して再調整したため、スタートが遅れた分やや遅れた。また、予定外にフランスで先進事例に関する調査を行えたが、フランス語でのデータの整理の準備が万全ではなかったので予定よりも時間がかかってしまった。今年度は予定している国内調査のとりかかりを早め、昨年の調査データの整理を進めるとともに、海外調査は、予定通りイタリア調査を行うとともに、アジアを射程に入れて対象地を若干加えて早めに実施する予定で、現在対象地との調整を行っている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度については、昨年積み残した、国内調査と、海外調査のデータ整理を早期にすすめる他は、支出計画についても大きな変更は無い。ただし、調査対象について、海外調査では、アジアでの新しい動向がみられることをふまえて対象地を変更し、国内調査については、震災の影響によって調査対象地を一部変更して実施する予定である。
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