2011 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者のダイレクト・ペイメントに関する国際比較研究
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23530745
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Research Institution | Mimasaka University |
Principal Investigator |
渡辺 勧持 美作大学, 付置研究所, 研究員 (00090423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薬師寺 明子 美作大学, 生活科学部, 准教授 (10412230)
島田 博祐 明星大学, 教育学部, 教授 (40280812)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ダイレクト・ペイメント / 知的障害者 / 地域生活支援システム / QOL / 本人主体 / 英国 / カナダ / スウェーデン |
Research Abstract |
研究目的は、1.知的障害者のダイレクト・ペイメントを可能にする支援システム 2.利用する知的障害者の生活の変化 3.福祉制度・政策に及ぼす影響について、スウェーデン、英国、カナダとの比較研究を行い、日本の知的障害福祉への新たな政策を提言することである。 23年度は、上記の3点について、欧米諸国の文献を調べ、海外3カ国の実地調査を行う計画であった。しかし、文献等への費用が予定を超え、海外の実地調査は研究代表者、渡辺が9月10日から9月27日にかけてカナダでヨーク大学教授マルシャ・リオー(元カナダ国立知的障害研究所長)、障害児の父親であり大学講師などを務めているジョン・ロード(メールのみ)、サンドラ・カーペンター(トロント自立生活センター施設長)、ヨナ・フリッシュマン(オンタリオ州個別支給individual funding連合会)、スーザン・ベヤーニ(重度障害者の親、社会変革センターPLAN)から情報を得た。 現状、問題、今後の研究について下記のような知見が得られた。1.自分が望むような活動、生き方をするためにといダイレクト・ペイメントの基本理念を重視する。2.ダイレクト・ペイメントは身体障害者の自立生活運動を中心に進められてきた経緯があり、知的障害者の利用率は、低く、その増加率も低い。3.利用率低迷の理由は、知的障害者にわかりやすく情報が伝えられていない、知的障害者がダイレクト・ペイメントの意味をわかり同意して契約することや金銭出納簿などのダイレクト・ペイメント全体の管理ができないこと等である。4.ダイレクト・ペイメントは、知的障害のために「できないこと」をさまざまな家族、友人、当事者団体、サービス提供団体等が支援組織を作って行われている。5.これらの支援は、継続して行われること、日常的にいつでも支援が可能なことが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.知的障害者のダイレクト・ペイメントについての現在の問題、歴史的背景、今後の方向性について結果を得ることができた。2.今後の研究の方向性を考えるときに、重要と思われる知的障害者のダイレクト・ペイメントが利用されない理由の背景について詳述する。 知的障害は言語や概念、思考の理解度の障害である。その障害を持つ人が、自分の人生で事柄を選択し、決定して生きることは不可能ある、という誤った見方がダイレクト・ペイメントを進めるときの障壁となっている。障害を「できない」こととして把握し、その見方を知的障害者という人間のあり方にまでつなげてしまったところに問題がある。人には誰でも、できることもあれば、できないこともある。」どんなに障害が重く、言葉を持たない人々でも、日常近くで暮らしている人には、その人の欲求、願望はわかる。それに沿って「何を支援してほしいのか」という軸で考える。これが、知的障害者のがダイレクト・ペイメントの理念の基幹にあり、制度の基底に据えられるべきである。3.本人中心の考え方とダイレクト・ペイメントの関係 支援は、本人の声を聴いて行わなければならないという本人中心の考え方(person centered approach )が世界的な潮流として言われている。本人中心の考え方は、ダイレクト・ペイメントの基本的な理念として、その人の望む人生を実現する、というものと同じである。なぜ、あえて、ダイレクト・ペイメントを導入する必要があるのか。これについては、今後の研究で確証していきたいが、障害のない悲痛の人でも、サービスはあるが、自分は現金をもてない、という状況からスタートして考えていきたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、研究実績で述べた知見について、研究代表者渡辺が英国、分担研究者薬師寺がスウェーデン、分担研究者島田がカナダにおいて、下記の視点で調査を行い、その実態と問題を明らかにし、第三年次の我が国の方策を考えるときの資料とする。1.様々な支援のシステムについて 知的障害者のダイレクト・ペイメントの管理支援(1)家族の関与と支援。知的障害者が児童の場合、家族の関与は不可欠である。その家族支援について検討する。(2)知的障害者の知人、友人によるサークル(友人の輪Circle of friends)。家族あるいは友人の輪は、法的な組織ではないため、ダイレクト・ペイメントを受けるときの公的位置づけについてその認可方法と合わせて検討する。(3)法人格をもった組織からの支援。ダイレクト・ペイメントのために作られた組織と既存のサービス提供団体の二つが考えられる。法人格をもった組織の場合、知的障害者の当事者団体であるか、障害者団体に知的障害者が関与しているかの検討。通常のサービス提供団体の場合の当事者団体との連携、当事者団体がダイレクト・ペイメントの支援を行う場合との差異について検討を行う。2.政府、地方自治体の役割と位置づけ ダイレクト・ペイメントについての情報提供の方法。知的障害者の人が見て、わかりやすいような文書、あるいは動画などの利用、ダイレクト・ペイメントを受ける資格認定ならびにその方法について、ダイレクト・ペイメントを提供した後のフォローの方法も検討する。3.本人中心のアプローチとダイレクト・ペイメントの関係 すでに述べたように、知的障害者の支援全体の中で、ダイレクト・ペイメントの位置づけを考えるときに、本人中心の考え方をした上で、さらにダイレクト・ペイメントが必要となると考えられる。このあえてダイレクト・ペイメントを導入する必要性、導入による効果についてさらなる検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度直接研究費は160万円である。研究代表者 渡辺勧持 総額70万円。海外旅費 34万円(英国に10日程度調査を実施する。旅費12万円+宿泊費10万円+日当8万円 )調査謝金 4万円 国内旅費(研究打ち合わせおよび資料収集)10万円 研究分担者 薬師寺 明子 50万円 海外旅費 38万6千円(スウェーデンに7日程度調査を実施する。 旅費20万円+宿泊費7万円+日当5万6千円) 調査謝金 4万円 国内旅費(研究打ち合わせ)5万4千円 資料代 3万円 文具等 2万円研究分担者 島田 博祐 40万円 海外旅費 28.6万円(カナダに7日程度調査を実施する。旅費12万円+宿泊費7万円+日当5万6千円) 調査謝金 4万円 国内旅費(研究打ち合わせ)6万4千円 資料代 3万円 文具等 2万円
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