2011 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケアにおけるストレングスを促進するソーシャルワークの総合的研究
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23530769
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
山井 理恵 明星大学, 人文学部, 教授 (40320824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 正行 明星大学, 人文学部, 准教授 (50415501)
志水 田鶴子 仙台白百合女子大学, 人間学部, 准教授 (70326750)
大坂 純 仙台白百合女子大学, 人間学部, 教授 (80347921)
石田 健太郎 明星大学, 教育学部, 助教 (10610339)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / 地域包括ケア / ストレングス |
Research Abstract |
1.関東地方A市の地域包括支援センター9か所の社会福祉士・主任介護支援専門員11名に対して、利用者のストレングスを促進するための活動、ならびに地域のストレングスを促進するための活動について面接調査を実施した。Rapp and Goscha (2006) やNelson-Becker et al.(2006)をもとに分析した結果、調査対象となった社会福祉士の多くは、支援困難な利用者には「熱意」をストレングスとみなし、「熱意」を維持できるような支援を展開していること、一方自立度の高い利用者には「技能」をストレングスとみなし、彼らができない部分の情報提供を中心としていることが明らかになった。 さらに、古くからのインフォーマル・サポートネットワークを地域のストレングスとして認識していることも解明された。そのうえで、協力事業所や住民を地域の見守りの担い手とする「見守り支援ネットワーク」の構築のために、地域の潜在的な資源をアセスメントし、見守りの担い手として役割が負担にならないように配慮しつつ、地域包括支援センターとの協働体制を整備するように努めていた。2.東北地方A市、B市の東日本大震災の被災状況とNPO法人による支援活動の調査を実施した。同法人では、震災直後から自らのネットワークを活かし、仙台市や周辺地区で食料や日用品を配布する、相談活動を行う等の自主的な支援を実施していること、そのことが利用者や住民の生活を再生することに貢献していた。3.イギリスにおけるpersonalizationの資料を収集・分析した。比較的若い利用者はpersonal assistantを雇用して自らケアをマネジメントすることが定着しつつある。一方、高齢者はケアを自らケアをマネジメントする志向が弱く、そのための専門的支援が課題となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1.専門職が利用者や地域のストレングスを促進するための支援、2.利用者や地域住民の視点からの、ストレングスを促進することに貢献した専門職の実践活動、3.1と2の比較、4海外におけるセルフ・マネジメントと専門職の実践活動、5.1~4を踏まえたうえでの総合的な検討とストレングスを促進させる発展的なソーシャルワークモデル構築を目的としている。平成23年度は、1ならびに4を中心に研究を実施し、以下のような研究結果を達成することができた。 1の専門職によるストレングスを促進するための支援研究として、関東地方A市の地域包括支援センター調査を実施した。そのうえで、社会福祉士やケアマネジャーが評価する利用者のストレングスと、そのストレングスを促進するための支援活動を検討した。さらに、「見守り支援ネットワーク」を中心とした地域のストレングスを促進するための支援方法もあわせて調査し、地域の高齢者の見守りを行う協力事業所を確保するための実践活動の解明を行った。なお、当初予定していた東北地方B市調査は、東日本大震災の影響もあり、個別的な調査実施は困難であり、障がい者・高齢者施設や被災地の概要を把握する事前調査にとどまった。 4の海外におけるセルフ・マネジメントと専門職の実践活動については、イギリスにおけるdirect payment, individual budget, personal budget についての報告書や論文のうち、専門職の支援状況を中心に分析した。 本研究の成果は、第26回日本地域福祉学会、日本社会福祉学会第60回秋季大会、Social Work Development 2012で報告予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成23年度の関東地方A市調査を実施した結果、同市の「みまもり支援ネットワーク」が、地域の一般の事業所を見守りの担い手として組織化しているという独自性が強いこと、また古くからのインフォーマル・サポートネットワークが強い地域が残り、老人会などの自主的な取り組みが実施されていることが明らかになった。そのため、平成24年度においては、平成23年度に調査を行った地域包括支援センターの協力を得ながら、「見守り支援ネットワーク」に登録する協力事業所や老人会、団地等の地域住民、利用者に対して、地域や自分たちのストレングスやストレングスを促進することに貢献した社会福祉士の実践活動について、面接調査を実施する。そして、平成23年度に実施した社会福祉士調査の結果と比較検討により、ストレングスを促進するソーシャルワークを検討する。2・さらに、東日本大震災の影響もあり平成23年度に実施できなかった東北地方B市の障がい者・高齢者施設の職員に対して、利用者や地域のストレングスを促進するための実践活動について平成24年度に調査を延期して実施する。その結果を、平成23年度に実施した東京都A市調査とあわせて分析すると同時に、平成25年度に実施する利用者調査を準備する。3.平成23年度の研究を国内・国際学会、研究会で報告し、研究者や実践家からのフィードバックを得る。同時に、国際学会に出席することで、イギリスのセルフ・マネジメントの動向についても資料収集や分析を実施する。4.年2回程度の東京・仙台の研究チームが集まる研究会を開催し、研究成果を検討するとともに、平成24~25年度の国内・国外調査の対象や調査項目を検討する。そのうえで、中間報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、東日本大震災の影響もあり、当初予定していた平成23年度後半に実施予定の東北地方B市の障がい者・高齢者施設の社会福祉士調査が実施できなかったため、「次年度使用額」が生じた。そのため、平成24年度に実施するB市社会福祉士調査における旅費、調査の謝礼、調査データのテープリライト費用として、平成24年度分とあわせて支出する。 さらに、東京都A市地域住民・利用者調査を実施するため、調査対象者である地域住民・利用者に対する謝礼、A市調査の旅費を支出する。 成果報告のために、スウェーデン・ストックホルムで開催されるSocial Work Development 2012 (International Federation of Social work)の参加費、旅費を必要とする。あわせて、日本社会福祉学会、日本社会学会で成果報告を行うため、旅費を計上する。 東京都ならびに仙台市において、研究会会場を借りるためにの会場費を支出する。さらに、仙台市在住のメンバーの旅費を支出予定である。このほかパソコン関係の物品を支出する。
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Research Products
(10 results)