2012 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケアにおけるストレングスを促進するソーシャルワークの総合的研究
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23530769
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
山井 理恵 明星大学, 人文学部, 教授 (40320824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 正行 明星大学, 人文学部, 准教授 (50415501)
志水 田鶴子 仙台白百合女子大学, 人間学部, 准教授 (70326750)
大坂 純 仙台白百合女子大学, 人間学部, 教授 (80347921)
石田 健太郎 明星大学, 教育学部, 助教 (10610339)
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Keywords | 地域包括ケア / ストレングス / ジェネラリスト・ソーシャルワーク / パーソナリゼーション |
Research Abstract |
1.関東地方A市の地域包括支援センターの社会福祉士・介護支援専門員等20名を対象に、(1)高齢者の見守りに対する協力事業所開拓のための活動、(2)本活動を展開する上でのストレングス・阻害要因について、面接調査を実施した。協力事業所が地域貢献への意識をもち、かつ事業主が裁量を有している場合、組織的な参加意向がある場合に、本事業への参加を促していた。一方、時間的・心理的余裕のなさ、事業主の裁量のなさ、地域の関係機関と協働する意向の弱さが、本事業を展開するうえでの阻害要因となっていた。 2.東北地方B市の障がい者施設の職員4名に、(1)利用者の支援過程、(2)利用者のストレングス、(3)地域のストレングスについて面接調査を実施した。職員が認識する利用者のストレングスとしては、意欲や熱意、環境に関するストレングスとして、家族・近隣の支援などが明らかになった。東日本大震災後の復興に対する地域の取り組みも、地域ケアに貢献していた。 3.イギリスにおけるパーソナリゼーションの資料を概観し、ソーシャルワークの視点から、(1)高齢者にとってのパーソナリゼーションの意義と限界、(2)パーソナリゼーション展開におけるソーシャルワーカーの役割について検討した。これまで若い障がい者を中心に展開されていたパーソナリゼーションが高齢者に対しても拡大されたことにより、高齢者自身が自分の希望をもとに、自らの人生経験も活用して、主体的にケアサービスを利用していることが明らかになった。 4.平成23年度に実施した東京都A市調査の研究成果を、日本地域福祉学会、日本社会福祉学会、国際ソーシャルワーカー連盟国際会議で発表した。地域資源を開拓・支援するプロセスをさらに分析していくことと、ストレングスと同時に阻害要因についても焦点を当てることの必要性が研究課題として抽出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1.専門職が利用者のストレングスを促進するための支援、2.専門職が地域のストレングスを促進するための支援、3.海外におけるセルフ・マネジメントと専門職の実践活動、4.以上の研究成果を踏まえたうえでの総合的な検討とストレングスを促進させる発展的なソーシャルワークモデル構築を目的としている。平成24年度は、1、2、3を中心に、以下のような研究結果を達成することができた。 1.平成23年度に実施した東京都A市の地域包括支援センター職員への面接調査に引き続き、東北地方B市の障がい者施設職員に対する面接調査を実施したことにより、多様な対象、施設・機関、地域にわたる、利用者や地域のストレングスを促進するソーシャルワークについてのデータを収集することができた。 2.あわせて、東京都A市の地域包括支援センター職員への2回目の訪問面接調査、A市の担当部署職員、準備や設立に携わった委員長(地域福祉を専門する大学教員)へのヒアリング、記録や報告書を検討することにより、地域にある潜在的な資源に着目し、ストレングスを促進するための支援プロセス、逆に阻害要因を緩和する支援プロセスを解明することができた。 3.また、海外の高齢者に対するパーソナリゼーションやセルフ・マネジメント研究を概観することにより、高齢者の力を促進するための支援について検討した。年齢の若い障がい者をアクターとする取り組みに比較すると、高齢者をアクターとする取り組みは従来のケアシステムと大きな差異がないことが指摘されてきた。しかしながら、高齢者に対する偏見、彼らの蓄積された力(ストレングス)に対する配慮の不足が、高齢者のパーソナリゼーションを阻害している可能性があることが明らかになった。 4、上記の研究成果を総合的に検討することにより、地域包括ケアにおける高齢者のストレングスを促進するための支援の方向性を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.先の2年間の関東地方A市の地域包括支援センター調査、市の担当部署や本事業の立ち上げにかかわった学識経験者に対するヒアリングで得られたデータ、A市の見守りに関する準備委員会・運営委員会の議事録、各種調査の分析を継続して実施する。分析に際しては、国内で地域資源の開拓に対する先進的な取り組みを実施している機関の資料収集・分析もあわせて実施する。並行して、「A市見守り支援ネットワーク」の協力事業所の位置づけや職種などを分析することにより、地域包括ケアを推進するうえでの、インフォーマル・サポートネットワーク構築に貢献する要因について検討する。 2.平成24年度に実施した東北地方B市の障がい者・高齢者施設の職員に対する利用者や地域のストレングスを促進するための実践活動について分析を実施する。さらに、同施設の利用者を対象に、ストレングスを促進した職員の支援についての面接調査、ならびに同施設職員に対する二次調査も行う。利用者、職員の両者からの面接調査から得られたデータを比較分析することにより、複合的な視点から、ストレングスを促進するためのソーシャルワークについて検討する。 3.過去2年間に実施した研究から得られた成果を国内外の学会、研究会で報告、原著論文として投稿することを通して、研究者や実践家からのフィードバックを得る。東京・仙台の研究チームが集まる研究会を開催し、最終的な研究成果をまとめる。研究成果を集約し、地域包括ケアにおける利用者や地域のストレングスを促進するソーシャルワークの実践モデルを提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.平成25年度は、先の2年間の調査から得られた研究成果をまとめ、学会報告や原著論文を学会誌に投稿することで、内外の研究者からのフィードバックを得る。そのため、国内学会での参加費用の旅費として、7万円×2回=14万円、イギリス、シェフィールドで開催されるSocial Policy Association Conference 2013への旅費として、36万円×2回=72万円、学会参加費 7万円×2=14万円を支出する。また、あわせて、国際学会の報告原稿ならびに英語論文投稿のために、英文校閲に11万円を支出する。 2.また、障がい者福祉領域におけるストレングスを促進する支援を検討するために、東北地方B市の障がい者施設の利用者に対する面接調査、職員に対する二次調査を実施する。B市への旅費として、4.5万円×2回×1名=合計9万円、および調査協力者への謝金として3万円、面接調査データのテープリライト費として、9万円を支出する。 3.高齢者福祉領域における地域包括ケアについて資料を得るために、関東地域を中心とした先駆的な実践事例についての調査を行うために、交通費を1万円×3名分=3万円を支出する。 4.高齢者・障がい者福祉施設・機関職員や利用者に対する調査から得られたデータ分析に必要な、データ分析ソフト購入費用として、9万円を支出する 5.東京都内で開催される研究会の会場を借りるために、5万円×1回=5万円の会場費を支出する。さらに、仙台市在住のメンバーの旅費として、4.5万円×2名分×1回=合計9万円分を支出予定である。このほか、パソコン消耗品や文具類として、物品費を4万円支出する。
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