2012 Fiscal Year Research-status Report
社会システム正当化の深層過程ー統制感覚と相補的世界観ー
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23530824
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
池上 知子 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (90191866)
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Keywords | システム正当化理論 / 統制感覚 / 相補的世界観 / 平等幻想 / 自己効力感 / 統制の所在 / 経済格差 |
Research Abstract |
本研究では、補償的統制説(人間は個人レベルでの統制感覚の欠如を外在的な力により補おうとするという考え方)に基づき、(1)環境や人生に対する統制感覚を阻害する状況に置かれると、外在的な力により相補性原理が働き、格差や不平等が解消されるであろうという期待が高まる (2)個人的統制感(自らの力で社会を変えうるという感覚)を強めると、相補的世界観にもとづく平等幻想の生成が抑制され、人々は格差や不平等の解消に動機づけられるようになる とする2つの理論的仮説を検証することを目的としている。平成23年度は、研究の基本的前提となる統制感覚と相補的世界観、及びシステム正当性信念との関係を質問紙調査により検討した。その結果、人は相補的世界観を信ずることによって努力の効果を信じられるようになること、現行システムの正当性を信じることによって自己効力感を維持していることが示唆された。また、学歴による雇用格差を素材にしたシナリオ実験の結果から、相補的世界観が格差への感受性を高め、格差是正への動機を強める一方で、相補的事例により幸福度における平等幻想が生成されると格差是正への動機が抑制されることが示された。23年度の研究により本研究の理論的前提を確認することができた。 平成24年度は、個人特性としての統制感が相補的事例による平等幻想の生成をいかに調整するかを検討した。すると、予想に反して、統制感覚の強い個人ほど相補的事例による平等幻想を生成しやすいことが見出された。しかし、これは特性としての統制感覚を測定したため、見出された関係の因果的方向性は明らかではない。そこで、統制感覚を実験的に操作し、統制感覚の一時的変化をとらえる尺度により操作の有効性を確認し、相補的事例への反応の影響を検討した。その結果、理論予測に沿った結果が得られ、統制感覚が一時的に低減した個人は相補的事例への感受性が高まる傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の前半の研究結果が予想と異なり仮説に疑問が生じたが、統制感覚を一時的に変化させる手法用いた実験を実施したところ、統制感覚と平等幻想の生成の因果的関係に関して理論予測に沿った結果が得られ、研究が進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究では、統制感覚を一時的に変化させるために、参加者自身に起きた過去の出来事を想起させる方法を用いた。平成25年度は、他者に起きた出来事を観察しても同様に統制感覚が変化し、その結果として相補的世界観が駆動し平等幻想が生成されるかを検証することとする。これにより、自他のいずれに起きたかを問わず出来事のコントロール可能性の認知が重要な要因となりうることを明らかにできると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当せず
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