2013 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の社会情動的選択性とリスク志向性が及ぼす生活の質への影響
Project/Area Number |
23530825
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Research Institution | Aomori University |
Principal Investigator |
渋谷 泰秀 青森大学, 社会学部, 教授 (40226189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 諭 秋田県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40240486)
吉村 治正 奈良大学, 社会学部, 准教授 (60326626)
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Keywords | リスク志向性 / 高齢者 / 生活の質 / 項目反応理論 |
Research Abstract |
高齢者におけるリスク志向性は(人生にはリスクを伴う行動が必要:6項目で測定)、男性の方が女性より有意に高かった。リスク志向性とQOLの総得点との相関は、男性(.35)及び女性(.40)共に正の有意な相関が見られた。リスク志向性が高い事は、高齢者のQOLに良好な影響を及ぼしているようであるが、今後リスク志向性とQOLの関連構造の詳細分析を行う予定である。QOLは、18項目(家族関係、友人関係、仕事関係、収入、健康、居住環境:それぞれ3項目)及び幸福感(7項目)で測定された。それらのQOLの下位尺度の内、リスク志向性に最も高い関連が観察された尺度は、収入(.36:全体)で、続いて仕事(.27)、友人関係(.22)であった。リスク志向性は幸福感とも有意な相関(.18)を示したが、リスク志向性の影響力はそれほど高くなかった。現在、共分散構造モデルを用いた分析を行っているところであるが、リスク志向性は仕事や友人関係と関係が深く、その結果として収入との相関が高くなっている可能性が高い。本研究のデータ分析結果から、生活の質を向上させる方略は、人間関係に関する満足感と収入に関する満足感という二つの異なる要因から構成される。高齢者のQOLの総合得点に最も強く影響を及ぼす要因は、家族関係に関する満足度であるが、リスク志向性は家族関係の満足度には強い影響を及ぼしていないと考えられる(r=.19)。 高齢者の社会情動的選択性は、肯定的な未来展望は高齢者のQOLと正の相関が見られたが、限定的な未来展望はQOLと負の相関が観察された。限定的な未来展望は、過去の経験に基づく結果であると考えられるが、セリグマンが提唱した学習性無気力症に類似した概念であるとすると、高齢者が肯定的な経験を積み重ねることができる環境を整えることは、高齢者のQOL向上に有効な方策であると考えられる。
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