2011 Fiscal Year Research-status Report
現代中国における大学生を中心とする若年層のリスク認知研究
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23530837
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
土田 昭司 関西大学, 社会安全学部, 教授 (90197707)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | リスク認知 / 大学生 / リスク研究者 / 社会調査 / 経済格差 / 中華人民共和国 |
Research Abstract |
平成23年度に次の研究を行った。(1) 中国側の研究協力者である南京大学教授Zhai氏に来日をもとめ関西大学において日中の若年層のリスク認知の違いについて検討した。その際、中国青海大地震における住民の反応と、東日本大地震における住民の反応の違いを検討するために土田とZhai氏が共に津波被災地を訪れて被災者との交流を行った。(2) 次年度本調査の予備調査として、試みに原子力発電に対するリスク認知に特化したテーマで調査を行った。調査対象者は、中国雲南省昆明市の大学生(N=301)と、京都市の大学生(N=361)であった。中国調査対象者を昆明市の大学生とした理由は、本プロジェクトにおいて「中国では沿岸部の経済発展地域と内陸部の経済未発展地域にリスク認知に違いがあろう。」との仮説を設けているため、内陸部大学生に具体的に顕著に現れるリスク認知を探索するためであった。中国内陸部と比較対象の沿岸部の調査データとしては、昨年度に実施した南京大学の学生を対象としたリスク認知調査の結果を用いている。(3) 上記の調査データを取りまとめた後に、研究代表者である土田が南京大学にZhai教授を訪ね調査結果の検討を行った。また、次年度実施する予定の本調査を実施するにあたり、調査協力を求める中国側の大学研究者についての検討も行い実施計画を立てた。(4) 中国内陸部住民のリスク認知の実際を把握するために土田が中国雲南省昆明市を訪問し住民からの聞き取りを行った。(5) 予備調査として活用する南京大学調査の結果はMa, H., Zhai, G., & Tsuchida,S. 2011 としてC.Huang, J. Oritz, and S. Sears(eds.), "Beyond Experience in Risk Analysis and Crisis Response", Atlantis Pressに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成23年度「研究の目的」には、大きく次の3つがあった。(1)24年度に実施する予定の本調査の調査地点を検討する。(2)調査票を作成する。(3)予備調査を実施する。 (1)について:研究協力者である南京大学Zhai教授との打ち合わせの結果、Zhai教授の人的ネットワークによって、南京大学(南京)、北京師範大学(北京)、復旦大学(上海)、雲南大学(雲南省)、西安外国語大学(陝西省)での調査依頼が可能であることが確認された。また、平成24年10月に開催される中国リスク研究学会において、新たな調査協力者を求めることも試みることになった。さらに、中国のリスク研究者のリスク認知を調べる新たな研究を中国リスク研究学会に参加する研究者を対象として実施することも計画された。 (2)について:昆明市の大学生と京都市の大学生を対象とした予備調査の調査票を作成した。予備調査の結果を精査し24年度実施の本調査に向けて調査票を改訂してゆく予定である。 (3)について、昆明市の大学生301名と京都市の大学生361名を対象とする予備調査を実施した。 上記のように、交付申請書に記載した平成23年度「研究の目的」はすべて達成されている。さらに、中国のリスク研究者を対象とするリスク認知研究も新たに実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
中国の経済発展地域と、経済後進地域の大学生を対象とした質問紙調査を実施する。大学生以外の若年層の調査は費用が予算を大幅に超えることが判明したため実施しない。実査は、各地に所在する大学の講義中などに質問紙を配布する方法を用いる。調査地点としては、経済発展地域として、北京師範大学(北京)、復旦大学(上海)、南京大学(南京)、経済後進地域として、雲南大学(雲南省)、西安外国語大学(陝西省)を予定している。なお、サンプルは有意抽出となる。 実査の手順としては、平成24年10月に南京大学において開催される中国リスク研究学会において、出席している大学研究者に対して正式な調査依頼を行う。調査実施大学に調査票を持参または郵送した上で実査を行う。回収票は関西大学土田研究室にて集計分析する。 また、これとは別に、中国リスク研究学会に出席している研究者を対象としたリスク認知調査を、会場にて調査票を配付回収する方式にて実施する。 中国での学生対象調査と同時期に、対照群として日本において中国と同様の学生対象調査を実施する。日本における調査地点としては、関西大学をはじめ日本各地の複数大学において実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に雲南省昆明市において住民への聞き取り調査を実施したが、実施時期が3月16日から19日と年度末になったためこの聞き取り調査の会計処理を23年度内に行うことができなかった。24年度にこれを精算をする。 平成24年度の研究費については、「旅費」及び「人件費・謝金」を変更し、「旅費」を多めに使用する予定である。これは、中国での若年層対象調査を大学生を対象とする講義中における質問紙配付回収方式とするが、この種の調査に不慣れな研究者の講義において調査を実施せざるを得ないケースがあるため土田が調査に立ち会い実施するためと、大学生以外の若年層を対象とする調査を実施しないことにしたためそのために見込んでいた謝金が不要となったためである。
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