2013 Fiscal Year Research-status Report
現代中国における大学生を中心とする若年層のリスク認知研究
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23530837
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
土田 昭司 関西大学, 社会安全学部, 教授 (90197707)
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Keywords | リスク認知 / 国際研究者交流 / 中華人民共和国 / 若者 / 経済発展格差 / 原子力受容 |
Research Abstract |
本研究は、現代中国の若者のリスク認知を、中国国内における経済先進地域と後進地域の比較に焦点を当てて調査・分析することを目的としている。 平成25年5月下旬から6月上旬に、中国7地域10大学で調査を実施した。経済先進地域である北京(1大学, N=252)、上海(1大学, N=252)、南京(2大学, N=295)、経済後進地域である長春(1大学, N=287)、西安(1大学, N=206)、蘭州(3大学, N=295)、昆明(1大学, N=273)において(total N=1,860)、授業などを利用して質問紙調査票を学生に配布し、1,747名から有効回答をえた。分析対象者の出身地は、一級都市(北京・上海・広州など)8.8%、二級都市(省都および重慶・天津など)20.5%、三級都市(一級、二級以外の人口100万人以上の都市)15.7%、中小都市32.6%、農村地区22.4%であった。なお、参考として比較のために、同等の調査を日本の4大学(大阪、京都、静岡、東京)の学生を対象に実施し、418名から有効回答をえた。。 この調査データを分析して、「現代中国における若者のリスク認知:出身地(大都市-地方)の違いによる効果を中心に」「日本と中国の大学生における原子力発電の受容度の規定因」と題する2つの研究成果を、日本リスク研究学会年次大会において発表した。後者の研究は、日本リスク研究学会大会発表論文賞を受賞した。 さらに、過年度に実施した予備調査のデータを分析した研究が、「Risk Literacy and Risk Perception among Undergraduates in China: Case of BSE」と題してHuman and Ecological Risk Assessment(vol. 19, No. 2: 526-537)(査読有)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の夏に中国の若者を対象とした質問紙調査を実施する予定であった。ところが、同年に中国と日本の間に尖閣諸島の領有権問題が発生した。 これを受けて、研究協力者である南京大学ザイ教授より、中国内における対日感情が悪化し中国の学生に調査協力を依頼することに困難が予想されるとの判断が伝えられた。すなわち、日本が関係した調査であることから、授業中などに調査実施の便宜を図ってくれる諸大学の教員、回答者である学生に、協力を拒否するか、あるいは、拒否しないまでも調査の実施方法や回答に何らかの恣意的なバイアスが入る可能性が高いと考えられた。さらに、計画では日本から研究代表者が調査対象大学に出向いて調査を実施することにしていたが、そのことによって上記のバイアスがさらに高まる懸念があった。 そこで、ザイ教授と相談の上、同年に質問紙調査を実施することを断念して、対日感情が少しでも沈静化するのを待つことにした。実際には、24年度実施を計画していた質問紙調査を平成25年5月下旬から6月上旬に実施した。また、実施には日本から研究代表者が立ち会わないことにして、後日、研究代表者が調査状況などについて現地で聞き取りをおこなった。 これに伴って、データの電子化、調査結果の分析、調査結果の解釈・検討が遅れることとなり、成果発表にも当初の予定から遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に、中華人民共和国の社会的・経済的背景などを中心に文献研究を深める。さらに、調査結果の分析、調査結果の解釈・検討をさらに進める。 それらの成果を、Asian Journal of Social PsychologyまたはRisk Analysisなどの国際学術雑誌への論文投稿を行う予定である。 また、日本リスク研究学会などの国内学会ならびにThe Society for Risk Analysisなどの国際学会において平成25年度におこなった学会発表をさらに深めた成果として発表することも計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、中国7地域10大学での調査を平成24年度に実施する計画であった。ところが尖閣諸島の領有権問題が発生したため、当該年度に中国における社会調査を実施できず、平成25年5月下旬から6月上旬に繰り延べなければならなかった。また、短期間に中国7地域10大学での調査を同時に実施しなければならなくなったため、研究代表者がすべての調査実施に立ち会うことができなかった。そのために、外国出張旅費に未使用金額が発生した。 未使用額の使途には、次の2つを計画している。 1)Asian Journal of Social PsychologyまたはRisk Analysisなど国際学会が刊行する学術誌への論文投稿 2)国内学会大会、あるいは、The Society for Risk Analysisなどの国際学会大会における、本研究の成果発表。
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Research Products
(3 results)