2013 Fiscal Year Annual Research Report
前頭葉賦活課題による自閉症児の認知機能および行動改善に関する研究
Project/Area Number |
23530876
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 甫 立命館大学, 文学部, 教授 (80094085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川那部 隆司 立命館大学, 教育開発推進機構, 准教授 (40617081)
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Keywords | 自閉症児 / 認知訓練 / 前頭葉機能検査 / 顔の表情理解能力 |
Research Abstract |
自閉症児は、他社の感情や意図を判断できないことが頻繁に生じる。その主な要因の1つは、他者の表情を理解できないことにある。表情の理解は、基本的には、脳の前頭前野が司っている。そのため、最終年度では、自閉症児の前頭前野を賦活する認知訓練をおこない、その訓練によって顔の表情理解の能力が改善するかどうかを検討した。認知訓練の方法は、前頭前野を賦活することがすでに実証されている文章の音読と易しい計算を主とした。対象者は、京都市内の中学校に在籍する自閉症児5人である。彼らに1週間に3~4日間、1回あたり10分ほどで、音読と計算課題を遂行してもらった。訓練は、2ヶ月にわたって合計で16回の訓練をおこなった。査定課題としては、まず前頭葉機能の賦活を簡便に測定する前頭葉機能検査(FAB)、顔の表情として国際的に認められている顔写真から喜び、悲しみ、怒り、無表情の表情毎に6枚の写真の判定をおこなわせた。一般知能(京大NX式)も査定の対象とした。これらの査定を訓練の前後で実施した。なお、この研究では、訓練を受けない対照群は設定しなかった。その結果、FAB検査では、5人全員が事前から事後にかけてFAB得点に改善を示した。また一般知能検査でも、5人全員に明らかな上昇が認められた。次に、顔の表情認知能力については、4人で事前から事後にかけて改善が得られたが、1人では変化が認められなかった。表情毎に検討すると、喜びは事前でほぼ完全に理解していた。悲しみでは、2人に変化がなかったが、3人では1点ほどの低下があった。怒りでは、4人に改善があり、無表情では4人に改善が認められた。 こうして、全体的な研究成果としては、自閉症という障害は、一生涯を通じて変化しないと主張されているが、そうした主張が本研究からは間違いであり、適切な介入が与えられると、抑制機能、知的機能、および表情認知能力などが改善することが実証された。
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