2012 Fiscal Year Research-status Report
ADHD傾向をもつ成人の課題遂行における注意配分の特徴の解明
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23530882
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
園田 直子 久留米大学, 文学部, 教授 (50171393)
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Keywords | 不注意傾向 / 順行的注意 / 逆行的注意 / 注意の配分 / 重さ系列化課題 |
Research Abstract |
ADHD傾向をもつ成人の課題遂行における注意配分の特徴を明らかにするという目的のもと,重さの系列化課題を用い,この課題の遂行中の誤りを分析し,不注意傾向と誤りのタイプに関連があるかどうかを検討した。この課題は推移律の能力を計る課題であり,園田らによるとこの能力は12 歳頃までに完成することが確かめられている。しかし,成人においても配列の誤りを犯すことがある。成人の誤りはこの一連の流れの中で順行的あるいは逆行的な注意配分がうまくなされないために生じると仮定していた。また,注意配分の切り替えは,ワーキングメモリとも関連していると考えられる。 24年5月~7月に,研究計画書に基づき,データの収集を行った。対象者は大学生 100 名であった。課題 (1)重さの系列化課題;2 個~7 個の要素の配列を求める(計6課題)個別に実施。遂行中の行動をビデオで記録し,比較の回数および置いた位置の誤り,および最終的な配列の正確さを分析した。(2)基本的な情報処理力を計る課題として,カウンティングテスト(処理の速さ),数の順唱課題(短期記憶),逆唱課題(ワーキングメモリ)を実施した。(3)不注意傾向および不適応傾向の自己チェックリスト(複数のチェックリスト を参考に作成)24 項目 5 件法に回答してもらった。 8月以降,データを分析し,衝動型の行動による比較の不足と,一回の比較後の逆行的な注意の不足による比較回数の不足に起因する誤りが不注意傾向と関連する傾向が見出された。 ここまでの結果をまとめ,中間報告として,日本発達心理学会第24回大会でポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りデータを収集することができた。これにより,課題遂行時の誤りのパターンを分類し,順行的な注意の不足と逆行的な注意の不足が遂行方略と関連づけることができた。また,当初は逆行的な注意が主であると仮定していたが,結果より成人においても順行的な注意の不足による誤りが多いことが見出された。ただし,対象者のスクリーニングをあらかじめ行うという計画については十分事前調査ができなかった。すなわち,協力者の確保の都合により,無作為に対象者を集め,事後に対象者を「不注意傾向群」「対照群」と分けることになった。これにより,不注意傾向群のグレーゾーンが広くなり,不注意傾向との関係性が不明瞭であるという問題が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
収集したデータをさらに分析し,課題遂行時の注意の配分と日常生活における不注意傾向およびワーキングメモリとの関連をさらに検討する。さらに,分析結果を注意の配分を促す支援方法の提案に結びつける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ分析のためのアルバイト謝金。および成果発表(学会参加)のための旅費。 及び報告書作成費用。データ保存用のOA文具(記憶媒体)の購入。
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