2012 Fiscal Year Research-status Report
精神療法過程Qセットを用いた心理療法過程の実証研究-大学院教育への応用-
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23530923
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山科 満 中央大学, 文学部, 教授 (40306957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 真記子 鳴門教育大学, その他の研究科, 教授 (70294733)
伊東 朋子(鈴木朋子) 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (60422581)
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Keywords | 臨床心理学 / 大学院教育 |
Research Abstract |
連携研究者である森教授が所属している文教大学大学院での試行カウンセリングの逐語録17例を対象に,PQS評定を実施した。評定対象としたのは,試行カウンセリング5回の面接の第3回面接である。成績良群と不良群に2分し,PQS評定100項目の評点をt検定で比較した。その結果,高く評価される面接では,評価される面接は, クライエントの対人関係が取り上げられ,特に対人関係での自立に関する内的側面が話題になっていて,話すことでClは情緒的な開放感(カタルシス)を体験していたことがうかがわれる。CLの視点の転換を促すセラピストの介入は控え目であった。クライエントの感情に焦点が当てられた面接が行われたと言える。評価されない面接では,現実の生活状況が強調され,あるいは夢・空想が話し合われるが,対人関係に根ざした内的体験が話し合われにくい面接であったと思われる。一方,セラピストの基本的な態度としての暖かさ,押しつけたり見下したりしないこと,詳細に尋ねること,などは成績に係わらず出来ていることが示された。 この成果は,2013年8月の日本心理臨床学会第32回秋季大会に発表すべく,演題登録された。 予備的研究として以前から行われていた実証研究のうち,伊藤朋子らによる「短期力動精神療法過程:精神療法過程Qセットを用いた検討」は,投稿を繰り返し,『精神療法』誌に修正受理されるに至った。「ハーバート・ブライアンのケース」(ロジャーズ)に対するPQS評定も,今回新たに評定を加え全8回の面接の評定が完成した。論文投稿のための最終段階に至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文教大での協力者が17名に留まったため,成績良群と不良群での2群分けで,必ずしも統計解析に十分なN数に至っていない。新たなデータの収集が必要である。 研究計画のうち,エキスパートによる面接評定は,協力者の確保および協力謝金の額の少なさといった理由で,頓挫したままになっている。研究計画のこの部分については,これ以上拘るのは現実的ではないと考え,別な方法を用いて「理想に近い面接のPQSスコア」を得ることを検討すべきであるとの結論に至った。 計画を修正して,本年度は研究の目的を達成したい。
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Strategy for Future Research Activity |
文教大で新たに試行カウンセリングの逐語録を収集し,学会発表までに昨年度ぶんと併せて30例のPQS評定データを集め,統計解析の精度を高める。 「理想的な試行カウンセリング」のPQSデータを集める方策として,試行カウンセリング実施大学で実際に面接指導に当たっている教員に,PQSを用いたアンケートを実施する。 上記2つのデータから,試行カウンセリングの教育目標と,院生の面接記録から得られた問題点(教育上の課題)をまとめる。 これらのデータを学会発表・論文化を目指す。投稿が遅れている予備的研究についても,今年度中の投稿を実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PQS評定の謝金が15例の面接で計30万円必要。「理想的な試行カウンセリング」アンケート協力依頼に20例で20万円が必要。その他,研究打ち合わせのための旅費に20万円,その他に学会参加費,論文別刷り,ポスター印刷代,文具購入などで使い切る予定である。
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