2011 Fiscal Year Research-status Report
包摂的な教育制度・行政システム構築に関する実証的研究
Project/Area Number |
23531036
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横井 敏郎 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40250401)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育行政 / 公教育制度 / 不登校 / 高校中退 |
Research Abstract |
本研究は、不登校や高校中退など、社会・家庭の不安定化を背景として浮上してきている就学の困難について、当事者や支援団体・機関、自治体行政各部門への聞き取りと資料収集調査を通して、その排除のプロセスと構造、子ども・若者の居場所と学びの場の実態、行政の体制と支援の現状を明らかにし、包摂的な教育制度・行政システム構築のための課題と方策を検討するものである。平成23年度の研究実績は次の3つである。(1)調査研究:(1)札幌市不登校行政とフリースクール調査。札幌市教育委員会・子ども未来局、相談指導学級、教育センター教育相談室、訪問型フリースクール漂流教室への聞き取り・資料収集調査を実施した。札幌市は複数の支援の場を設置しているが、そこへ通える子どもの割合は低く、学校と教育行政が対応できていない不登校の子どもは相当割合にのぼる。同市では近年子ども未来局を設置したが、不登校の子どもへの支援策には進展がない。この事例調査から、不登校に対する包括的な調査や体系的な施策の形成には、教育行政と福祉等行政のはざまへの落ち込みを防ぐよう、行政責任主体を明確にする行政システムの構築が用件となることが確認された。(2)子ども・若者支援行政調査。佐賀市と三条市で構築された総合的な子ども・若者支援システムについて、自治体各部門と若者支援そのほかの民間団体等へ聞き取り・資料収集調査を実施した。これらでは、従来を越える支援が行われ始めているが、いずれも教育委員会内に子ども課を設置し、そこが媒介となって多様な行政部門・民間組織との連携を取りうるシステムが作られており、こうした行政総合化の有効性を示す事例と言える。(2)データ分析・理論研究と学会発表:先行的に実施した高校中退経験者調査のデータと理論枠組みの再検討を行った。ブルデューの社会空間論を分析の基底に置いて、各ケースの位置づけを再整理し、それを学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定どおり、札幌市不登校行政・フリースクールの調査、道外自治体の総合的な子ども・若者支援行政システムの調査は実施し、高校中退経験者調査についての学会発表も行った。しかし、高校中退経験者へのインタビュー追加調査は、中間まとめを学会で発表した後に取り組む予定としていたが、8月の学会発表を通じて、データ分析と理論枠組みの検討をより深める必要があると認識した。そこで、再検討を行い、その結果を翌年3月に別の学会で発表することとしたため、追加調査は次年度に取り組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、本研究課題を申請した当初の計画をもとに進めていく。(1)調査研究 (1)不登校調査:札幌市の補充調査、道内他都市の調査。(2)高校中退調査:経験者インタビューの推進。(3)道外自治体の子ども・若者総合支援行政システム調査。 (2)理論研究 (1)行政機構論・multi-agency論、(2)若者移行過程論。(3)海外の高校ドロップアウト、truancy論。(4)教育からの排除と包摂、social pedagogy論。 (3)研究成果発表 (1)学会発表、(2)報告書の作成と論文作成。なお、本研究以外にも共通する課題を研究している研究者と協力・交流を推進し、研究成果の発表を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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Research Products
(6 results)