2011 Fiscal Year Research-status Report
退職養護教諭を活用した新規採用者研修の課題と今後の展望
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23531091
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
下村 淳子 愛知学院大学, 心身科学部, 講師 (60512647)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 養護教諭 / 新規採用者研修 / 退職養護教諭 / 専門研修 / プログラム開発 / 教育委員会 |
Research Abstract |
本研究は退職養護教諭を活用した新規採用養護教諭研修(専門研修)やスクールヘルスリーダー事業における効果的に実施できる研修内容のプログラム開発を目的としている。初年度の平成23年度は新規採用養護教諭研修の実態と課題を捉えることを目的として以下の調査を行った。1.新規採用養護教諭研修の指導者である退職養護教諭3名と受講者である養護教諭3名に対して面接調査を行った。2.2012年3月、新規採用研修の運営責任者である教育委員会に対して質問紙郵送調査を行った。調査対象者は47都道府県と19政令指定都市の66教育委員会の研修担当者である。回答は36の自治体から得られ回収率は54.5%だった。 その結果、以下のような成果が得られた。研修指導者の退職養護教諭は「指導内容に確信が持てず不安」「指導者同士で主体的にミーティングを行っている」「統一したプログラムを提案して欲しい」などの意見・要望があった。一方、受講者である養護教諭からは「集団の研修ではなく個別の課題を相談できるので得るものが大きい」という意見が大半を占めていた。教育委員会の研修担当者による質問紙調査結果では、32自治体で新規採用養護教諭研修(専門研修)を行っており、退職養護教諭は一人あたり平均2.5名の養護教諭を担当していた。研修後、受講者の養護教諭には「自己評価・他者評価とも行っていた」が6割程度あったが、指導者である退職養護教諭に対しては55%が「どちらもしなかった」と回答していた。研修企画担当者が指摘した運営上の課題は「退職養護教諭の確保が難しい」が8割以上、「退職養護教諭への支援が十分でない」が4割以上だった。これらの結果から、退職養護教諭に対する支援と新規採用養護教諭への効果的な研修指導につなげるためのプログラム開発の必要性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は文献研究のみならず新規採用養護教諭や研修指導者である退職養護教諭、研修企画者である教育委員会の3者に対して面接調査によって新規採用者研修の実態を捉えるとともに現状の課題を探った。その後、面接調査で得られた情報をもとに、全国の教育委員会新規採用研修企画担当者に対し、質問紙郵送調査により新規採用者研修とスクールヘルス派遣事業の実態と課題を確認した。これらはすべて当初の計画通りであることから、平成23年度においては概ね研究計画通り進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年は静岡県教育委員会と愛知県教育委員会から研究協力が得られたので、新規採用者研修受講者とスクールヘルスリーダー派遣事業受講者に対して、研究者が提案した「効果的な研修指導プログラム(試案)」に沿って指導してもらい、その成果を客観的に検証しながらプログラム内容の改善を図ることにしている。 そのため、退職養護教諭として新規採用養護教諭研修の指導にあたる研究者を1名、研究分担者として追加の予定でいる。分担者の追加が承認されれば、さらに研修状況を詳しく調査分析し、資料収集も十分できると期待できる。また、プログラムの作成・改善にも積極的に介入してもらい、指導しながらリアルタイムにプログラムの修正を図ってもらう予定である。 すでに、4月初旬に指導者である退職養護教諭5名が集合し、研究者と共にプログラムの内容を検討し、試案を作成した。現在はこのプログラムに基づいて、研修指導をしているところである。また、研修の効果を客観的に測定するために、介入前と介入後の2回、養護教諭の職務に関わる力量を測定する予定としている。この結果をもとに、プログラム実施の根拠をより明確にし、広く周知する際の資料とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新規採用者研修を受けた養護教諭への調査に関わる郵送費や退職養護教諭らとの意見交換を行う際の会場費・退職養護教諭への交通費に使用する。また、平成23年度に行った一斉調査のデータ処理の人件費にも使用したい。これらの成果を学会で発表するために第59回日本学校保健学会(神戸市)や日本養護教諭教育学会第20回学術集会(名古屋市)の学会参加費・交通費にも使用する予定である。その他に記録用のメディア媒体や現地調査で使用予定のノートパソコンも新たに購入する予定である。
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