2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531093
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
藤原 瑞穂 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (90269853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 薫夫 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (60173613)
前田 潔 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (80116251)
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Keywords | 生涯学習 / 高齢 / 障害 |
Research Abstract |
本研究は,障害をもつ高齢者の学習を支援するために,3方向からの支援事例・経験を蓄積・分析することによって支援プログラムの作成を試みる.第1の層は,現在学習活動を行っている者(公民館などで活動する団体・サークル),第2の層は,発症・受障直後の者(脳血管障害などにより回復期リハビリテーション病棟に入院し,自宅退院が決定している者),第3の層は,発症・受障から数年が経過し,介護保険制度下でのサービスを利用している者(介護老人保健施設利用者)である. 本年度は,まず高齢者学習の支援論としてのサーバント・リーダーシップ論の特徴と課題を整理した.次に,第1の層と第3の層を対象に支援事例・経験を蓄積した.第1の層は,高齢者放送大学を受講している障害をもつ高齢者5名を対象として,その経験と学習の意味を質的に分析した.放送大学での学習は,個人の精神的世界の充実を図り,そこでの活動によって過去の感覚が蘇るというパーソナルな側面が示された一方,放送大学独自のプログラムによって社会的な交流の側面も同時に生じていた.前者からは高齢者の生活に対する前向きな姿勢や適度な挑戦感の涵養を示唆し,後者は対話性や反響性のある交流の場の形成を示唆していた.第3の層は,介護保険制度下でデイサービスを利用している高齢者10名のプログラム作成に関する支援事例を収集した.彼らの学習ニーズは,身体性の維持・回復に重点をおきながらもそれを手段的ニーズとして,むしろ個人の精神世界の充実や社会的交流を学習目標に位置づけていた.具体的には,ハーモニカやアコーディオンの演奏,書道の個展を開催すること,釣りや旅行に出かけること,就労が困難となった変わりにパソコンで株の取引をして資産管理することなどであった.これらのニーズに対し,高齢者自身が主体に取り組むことができるための仕掛けを支援者がプログラムにちりばめてることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1の層の,高齢者放送大学を受講する障害をもつ高齢者5名の経験と学習の意味を質的に分析した成果は論文としてまとめ終えた.第3の層の介護保険制度下でデイサービスを利用している高齢者10名のプログラム作成に関する支援事例は,現在学会発表ならびに論文執筆の準備中であり,この点でやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
第3の層つまり介護保険制度によるデイサービスを利用する高齢者に関して,引き続き学習支援プログラム作成に関する事例を収集する.また,協力者とともに学習支援プログラムを実際に作成し,介入研究を行っていく. 第2の層つまり発症・受障直後の者(脳血管障害などにより回復期リハビリテーション病棟に入院し,自宅退院が決定している者)に関して,研究協力が得られた施設から,支援事例を収集する.入院されている高齢者ならびにその支援者にとって,関心の高いことは「リハビリテーション」であり「学習」ではない可能性がある.障害をもつ高齢者ならびにそれを支援する者にとっての「リハビリテーション」と「学習」の概念を整理しつつ,そこでの生涯学習の意味を追求し,研究を推進していく予定である. 最後に,高齢者が,障害をもつ以前から発症/受傷直後の状況,さらに自宅で生活を再開していくといった時間的・環境的,経験的変化において,その生涯学習のニーズや意味,経験がどのように変遷していくのか,またそれを支援するためのプログラムのあり方について,本研究で得られた知見をもって総括する. 以上の研究成果の報告については,WFOT (World Federation of Occupational Therapy) 2014 congress(横浜),作業科学セミナー(福島)での発表ならびに雑誌「作業療法」「神戸学院総合リハビリテーション研究」への投稿を予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
謝金は,介入研究に関わる研究協力者,支援者,研究補助者ならびにデータ入力等に従事するアルバイトへの支出を予定している. 旅費は,主として介入研究に関わる旅費と,障害をもつ高齢者の学習支援に関連する最新の知見を得るために,日本作業療法学会(6月 大阪,藤原),日本老年社会科学会退会(6月 大阪,堀,藤原)作業科学セミナー(11月 福島,藤原)等への出張を予定している. 消耗品費として,介入に関わる物品費の購入,図書費(成人教育関連,リハビリテーション関連,支援論関連の図書費ならびに文献複写)等を予定している.
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