2011 Fiscal Year Research-status Report
社会的困難の集中する地域における若年者の移行過程と自立支援に関する実証的研究
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23531102
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木戸口 正宏 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (90405093)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育学 / 格差・貧困 / 移行研究 / 自立支援 |
Research Abstract |
本研究の目的は、若年者が「学校から社会へ」の移行過程において直面するさまざまな課題や困難を見通した上で、彼らの複雑で長期的な移行を支えうる教育実践・自立支援のあり方を構想することにある。その際、地域経済の疲弊が著しく、貧困・社会的格差に基づく不利が集中している都市の典型事例であるとともに、生活保護受給世帯など、困難を抱える子ども・若者への先進的な自立支援を行っている北海道釧路市を、主要なフィールド・対象として、研究を展開していく。以上の研究目的に基づき、2011年度は、以下の研究成果を得ることができた。1、釧路市で取り組まれている「生活保護自立支援プログラム」、特にその一環として取り組まれている「高校進学希望者学習支援プログラム」の取り組みについて、政策文書や当事者への聞き取りを通して、取り組みに至る経緯を整理するとともに、これらが、地域の教育・福祉行政全体との関係において、どのような位置づけにあり、今後どのような発展方向があり得るのか、ということについて一定の知見を明らかにした。2、「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」(「若者の教育とキャリア形成に関する調査」)に研究協力者として参加し、若年者の移行に関する地域特性・地域間格差の諸特徴の分析を行い、都市規模・都市類型に基づく、若年者移行の諸特徴を明らかにすることができた。これまでの分析においては、「地域特性」(世界都市/国内主要都市/地方都市/農村地域等)に基づく移行過程の特性分岐が見出されており、これらの分岐が、各地域の若年者の移行過程や当事者の意識にどのような影響を与えているのかにとくに焦点を当てた調査・分析を、今後実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23(2011)年度については、以下の研究計画に基づき、調査研究を行った。1)釧路市で取り組まれている「生活保護自立支援プログラム」、特にその一環として取り組まれている「高校進学希望者学習支援プログラム」に着目し、福祉行政の担当者やNPO 職員・学習支援ボランティア、学習会に参加している当事者 、事業経験者への聞き取りを行い、釧路市における子ども・若者の自立支援の現状と課題について明らかにする。→おおむね順調に推移している。2)あわせて釧路における高校生・高卒者への聞き取りに向けた準備を行う。調査対象者には、市内の高校を介してコンタクトをとる。郵送法や住民台帳などによるサンプリングによって対象者を選ばないのは、同様の調査手法を採用した先行研究が、必ずしも調査対象者を有効に補足できていないことに加え、教員を介してつながった高校生に焦点を当てて継続的な調査を行うことで、卒業後の彼らの進路や居場所などの把握が相対的に容易になるからである。→東日本大震災等による学校現場の状況などに配慮し、慎重に準備を行っている段階である。3)当該地域における高卒者の進路構造を把握するために、引き続き国勢調査や学校基本調査等の公的な統計調査や政策文書等を収集・分析するとともに、高校の進路指導担当教員や教育行政・労働行政の関係者への聞き取りを実施する。→基本的には順調に推移しているが、高校関係者への聞き取りは若干遅れている。4)「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」(「若者の教育とキャリア形成に関する調査」)に引き続き研究協力者として参加し、若年者の移行に関する地域特性・地域間格差の諸特徴の分析を行いつつ、データの活用を通して、北海道、とりわけ釧路市における若年者移行の特性を明らかにする。→おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)前年度に引き続き、行政関係者・教育関係者への聞き取りを行うとともに、当該地域における若年労働者の聞き取りを進める。またそれらの聞き取り調査データの分析を進める。2)「高校進学希望者学習支援プログラム」参加者を中心に、高卒者・高校中退者への聞き取りを行う。個別面接では十分に調査への協力が得られない場合には、集団面接等の手法も積極的に採用する。長期的には、継続的な調査を実施し、経年的な調査データの蓄積と研究成果の定期的な還元を行う予定である。3)得られた知見を基に学会報告や学術論文を共同で作成する。また学会報告および共同執筆論文の到達をふまえ、申請者の責任において、さらに具体的な政策提言や学校教育実践・地域福祉実践に対する示唆を含んだ報告書を作成する。4)当該地域(釧路市)における高卒者の進路構造を把握するために、前年度に引き続き、公的な統計調査や行政による政策文書等を収集し分析を行うとともに、高校進路指導担当教員や教育・労働行政の関係者への聞き取りを実施する。5)同じく平成23 年度に引き続き「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」(「若者の教育とキャリア形成に関する調査」)に研究協力者として参加し、若年者の移行に関する地域特性・地域間格差の諸特徴の分析を行いつつ、データの活用を通して、北海道、とりわけ釧路市における若年者移行の特性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)物品費は、主に、若者政策・若年労働市場の変容、および子ども・青年の社会的自立にかかわる、内外の調査研究に関する文献の収集に充当する予定である。2)旅費については「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」(「若者の教育とキャリア形成に関する調査」)の打ち合わせ等への参加費用、および当該地域・国内への聞き取り調査にかかわる移動費として使用する予定である。3)人件費・謝金については、聞き取り調査の文字おこし、および内容の確認等にかかわる人員の確保に充当する予定である(専門的な内容にかかわるため、パソコンソフト等の利用のみでは限界がある)。
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