2012 Fiscal Year Research-status Report
社会的困難の集中する地域における若年者の移行過程と自立支援に関する実証的研究
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23531102
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
木戸口 正宏 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (90405093)
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Keywords | 教育学 / 格差・貧困 / 移行研究 / 若者支援 |
Research Abstract |
本研究の目的は、若年者が「学校から社会へ」の移行過程において直面するさまざまな課題や困難を見通した上で、彼らの複雑で長期的な移行を支えうる教育実践・自立支援のあり方を構想することにある。その際、地域経済の疲弊が著しく、貧困・社会的格差に基づく不利が集中している都市の典型事例であるとともに、生活保護受給世帯など、困難を抱える子ども・若者への先進的な自立支援を行っている北海道釧路市を、主要なフィールド・対象として、研究を展開していく。以上の研究目的に基づき、2012年度は、以下の研究成果を得ることができた。 1、釧路市で現在、子ども・若者支援の焦点となっている「学力問題」について、その動向を整理するとともに、現状の課題についてまとめ、シンポジウム等で報告を行った。また、釧路市「生活保護自立支援プログラム」について、当事者の協力のもと、現地で報告のシンポジウムを行い、活動の意義や、教育・福祉行政全体との関係、今後の発展方向等について報告の場を持つことができた。 2、前年度に引き続き「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」に研究分担者として参加し、若年者の多様な移行過程に関する質的な調査(聞き取り調査)およびその分析を担当し、一定の知見を得ることができた。これまでの分析では、移行過程類型(安定/不安定)および学校歴の違いなどが、当事者の意識においても重要な分岐をもたらしていることが明らかになった。今後、これらの分岐が、当事者の意識にどのような影響を及ぼしているのかについて、さらに詳細な分析を行っていく予定である。 3、本年度より新たに「若者支援政策の評価枠組み構築に向けた日欧比較研究」に研究分担者として参加し、ヨーロッパ諸国における若者支援の現状と課題、およびそれらの理論的背景としての「社会的教育学」について、について、一定の知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、以下の研究計画に沿って調査研究を行った。 1)平成23年度に行った聞き取り調査データの分析を行うともに、得られた知見を基に学会報告や学術論文を共同で作成する。また学会報告および共同執筆論文の到達をふまえ、申請者の責任において、さらに具体的な政策提言や学校教育実践・地域福祉実践に対する示唆を含んだ報告書を作成する→学会報告・共同執筆論文の発表は、最終年度内には実施できる予定である。また最終報告書の作成にあわせて、具体的な政策提言などを含んだ報告書を作成できる見通しである。 2)「高校進学希望者学習支援プログラム」参加者を中心に、釧路市における高卒者(中退者も含む)への聞き取りを行う→やや遅れている。今年度も引き続きインタビュー調査の実施に向けて準備を進めていく。 3)当該地域(釧路市)における高卒者の進路構造を把握するために、前年度に引き続き、公的な統計調査や行政による政策文書等を収集し分析を行うとともに、高校の進路指導担当教員や教育行政・労働行政の関係者への聞き取りを実施する→前半部分については、当初の計画通り実施できている。後半部分については、まだ端緒の段階である。 4)同じく平成23年度に引き続き「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」に、引き続き研究協力者として参加し、若年者の移行に関する地域特性・地域間格差の諸特徴の分析を行いつつ、データの活用を通して、北海道、とりわけ釧路市における若年者移行の特性を明らかにする→計画通りに実施できている。またこれに加えてインタビュー調査の実施など、新たな取り組みを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)前年度に引き続き、行政関係者・教育関係者への聞き取りを行うとともに、当該地域における若年労働者の聞き取りを進める。またそれらの聞き取り調査データの分析を進める。 2)「高校進学希望者学習支援プログラム」参加者を中心に、高卒者・高校中退者への聞き取りを行う。個別面接では十分に調査への協力が得られない場合には、集団面接等の手法も積極的に採用する。長期的には、継続的な調査を実施し、経年的な調査データの蓄積 と研究成果の定期的な還元を行う予定である。 3)得られた知見を基に学会報告や学術論文を共同で作成する。また学会報告および共同執筆論文の到達をふまえ、申請者の責任において、さらに具体的な政策提言や学校教育実践・地域福祉実践に対する示唆を含んだ報告書を作成する。 4)当該地域(釧路市)における高卒者の進路構造を把握するために、前年度に引き続き、公的な統計調査や行政による政策文書等を収集し分析を行うとともに、高校進路指導担当教員や教育・労働行政の関係者への聞き取りを実施する。 5)同じく前年度に引き続き「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」および「若者支援政策の評価枠組み構築に向けた日欧比較研究」に研究分担者として参加し、若年者の移行に関する質的データの分析を行いつつ、データの活用を通して、北海道、とりわけ釧路市における若年者移行の特性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)物品費は、引き続き、若者政策・若年労働市場の変容、および子ども・青年の社会的自立にかかわる、内外の調査研究に関する文献の収集に充当する予定である。 2)旅費については「若年者の教育・職業の移行過程とキャリア形成に関するコーホート調査」および「若者支援政策の評価枠組み構築に向けた日欧比較研究」の打ち合わせ等への参加費用、および当該地域・国内外への聞き取り調査にかかわる移動費として使用する予定である。 3)人件費・謝金については、聞き取り調査の文字おこし、および内容の確認等にかかわる人員の確保に充当する予定である(専門的な内容にかかわるため、パソコンソフト等の利用のみでは限界がある)。
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