2011 Fiscal Year Research-status Report
キャリア教育における「非就労」の位置づけに関する研究
Project/Area Number |
23531112
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
新谷 康浩 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (10345465)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞鍋 倫子 中央大学, 文学部, 准教授 (00345323)
居郷 至伸 横浜国立大学, 大学教育総合センター, 講師 (70586396)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | キャリア教育 / 非就労 / 学校から職業への移行 |
Research Abstract |
本研究は「広義の非就労」が大学で行われているキャリア教育の中でどのように扱われているのかを実証的に明らかにすることを目的としている。研究手法はキャリア教育担当者を対象とした半構造化面接による聞き取り調査を中心に、既存資料やキャリア教育のシラバスなどの検討も行うものである。23年度は24年度に実施予定の予備調査を行った。サンプルとなる大学は層化抽出で行うが、23年度に行ったのはそのうち、「学校から職業への間断なき移行」による就労が当然視されがちであるビジネス系の学部と、日本的移行モデルがあてはまらないとされてきた芸術系の学部であった。この聞き取り調査のデータは現在分析中であるが、当初想定していた日本的移行モデルが、それを当然視している学部においては受容されているが、日本的移行モデルが想定できない分野の学部においては、その学部の中で模範的な移行モデルができていること、そしてキャリア教育がその当該学部の移行モデルに添った形で組み込まれている可能性があることが見えてきた。これは、日本的移行モデルという教育社会学が依拠していたモデルの適応範囲の限定性を示すものである。 また、本研究は、どのような「非就労」をなぜ「問題視」したのかという「まなざし」に着目している。この着眼点は、教育社会学の研究において残余カテゴリー、あるいは解決されるべき問題として捉えられてきた「非就労」を正面に据えた研究である。この研究の意義を理論的に深めるため、日本教育社会学会第63回大会において、新谷・居郷・眞鍋の共同研究として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「学校から職業への間断なき移行」というわが国の就職状況の中で着手された現在のキャリア教育が、この状況の中でどのような位置を占めているのかを探るものである。既存の「間断なき移行」研究の中にある「非就労へのまなざし」というこれまでほとんど焦点があてられていなかった部分に焦点をあてている、そのため具体的な調査分析作業に入る前に理論的検討を重点的に行った。そのため本年度は仮説の設定をめぐり頻繁に研究会を重ね、研究代表者と研究分担者の間にあった問題関心や対象の幅広さを確認し、この研究が含意している理論的射程の深さを再確認できた。これを踏まえて予備調査を行ったことで、調査対象者に本研究の狙いや独自性が伝えることができた。 聞き取り調査によって個々の大学のキャリア教育は、それぞれの移行モデルに沿った形で組み込まれていることで、個別の学部ごとに問題視される非就労のグラデーションが異なっていることが明らかになったが、キャリア教育を巡る政策レベルの議論においてはそのような個別性が捨象されていた。このような「脱連結」した大学のキャリア教育に焦点をあてることが社会学的分析にとって重要であることが再認識された。このように理論的検討を深め、それをもとに予備調査を行うことができたので、次年度の研究にスムーズにとりかかることができる。そのためおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った予備調査を踏まえ、次年度は本調査を実施する。本調査の調査対象校は層化抽出で選ぶ。異なる地域特性、同一地域での大学の属性による違いをみるために、同一都市から複数のサンプルとなる大学を抽出する。本調査の聞き取り調査は予備調査で精緻化した「非就労」のグラデーションを踏まえた半構造化インタビューを行う。また資料収集も行う。すでにキャリア教育のシラバスなどについても収集を始めており、これらの分析も同時に行う。これらの調査や資料の分析から明らかになった点を学会で発表する。これらの作業は、ほぼ当初の研究計画どおりのものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究計画の遂行にあたり、以下の研究費を使用する。(1)聞き取り調査・資料収集にかかわる調査研究旅費、資料収集文具など消耗品費。(2)収集した資料整理、聞き取り調査のテープ起こしなどのためのアルバイト謝金とそれを保存する記録媒体などの消耗品費、コピー代。(3)先行文献や資料購入の費用。(4)これまでの研究成果を公表するための学会参加旅費。
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