2012 Fiscal Year Research-status Report
地域主権をめぐる葛藤と社会的労働市場の持続的発展に関する教育・労働社会学的研究
Project/Area Number |
23531139
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
筒井 美紀 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (70388023)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 由紀 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30334262)
櫻井 純理 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10469067)
長松 奈美江 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (30506316)
阿部 真大 甲南大学, 文学部, 准教授 (60550259)
|
Keywords | 社会的(中間的)労働 / 支援のネットワーク / 持続可能な就労支援 / 行政のアカウンタビリティの問い方 |
Research Abstract |
第2年度は、対象とする二自治体の、社会的困難者の就労支援に関わる諸々の部署、その委託先への聞き取りと観察を拡大してきた。もちろん、地面の釘を一本一本すべて拾うようなことは不可能である。 けれども、生活保護受給者の求人開拓とケースワーカーとの連携、協同労働による「仕事おこし」をとおして、複合化した困難を抱える若者と地域の高齢者を結びつける事業、母子家庭の母の職業訓練とリビング・ウェイジを実現する職場を提供する社会的企業など、零細企業の協働事業化による雇用創出の試み、単にマッチングが効果的に進むとか、財政負担が軽減されるといった功利的視点とは別の、「私たちはどんな社会で生きていきたいか」「どういう働き方ができれば私たちは社会的・精神的平安が得られ豊かになれるか」という、社会モデル(理念)を浮かび上がらせてきた。 もちろん、それは常にうまくいくとは限らず、「失敗」の事例についても分析することで、「連携」の美名のもとで展開される権力関係や経済的事情の優先について、私たちはどう考えどう決断すべきかという論点も提示した。また、自治体(役所)内での「連携」についても、指揮命令関係を越えたところ(部署が別など)では、行政組織法上の制約も絡んで、なかなか思いどおりの結果を上げられない状況や、職業訓練と職業紹介における支援のあるべきテンポについての考え方の相違が生むギャップなどについても指摘した。 このような経験的研究を展開しながら、定期的に研究会をもって各自報告し、第2年度の終盤は、(中間)報告書の執筆にも取り組んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究成果の概要」で言及した(中間)報告書は、13章の具体的分析を、序章と終章がはさんだ、原稿用紙換算580枚程度の仕上がりを予定している。第2年度末に執筆者のほぼ全員が、最低「7割程度」の草稿を提出し、研究代表者の筒井と研究分担者の櫻井が中心となってコメントし、複数回のリライトを実施してきた。 この作業によって、各自の、本報告書全体との関連をより意識しながら担当章の内容を改善していくと同時に、本報告書全体として、もっと詰めるべき理論的課題と、実施べき追加的調査がより明確化されつつある。これらのことから、現在までの達成度は、おおむね順調に進展していると自己評価する。 課題としては、主に3つあると考える。第1に、調査を実施した後で浮かび上がってきた聞き忘れや聞き落とし、研究会での検討で浮かび上がってきた疑問点などを、追加的調査を実施することで潰しこむことである。第2に、同時並行的に産出されている他の諸研究を検討することで、この分野における本プロジェクトの意義・特徴をより明確化することである。第3に、一般読者にも、内容を薄めることなく、本プロジェクトの分析と含意、示唆について伝えるレトリックと構成を工夫することである。
|
Strategy for Future Research Activity |
推進方策は主に3点ある。 第1に、上記で言及した(中間)報告書は、5月中旬をめどに全員の原稿を整え、調査対象先に内容チェックを依頼し、そのあと印刷・製本して成果物とする。 第2に、全体研究会と関西/関東別の研究会を複数回開催し、もっといっそう詰めるべき理論的課題と実施べき追加的調査を明確化する。作業を分担し、それらを進展させる。 第3に、一般図書刊行(この科研プロジェクトに関心を寄せられてきた出版社から刊行。概略と構成・分量について既に了解済)に向けた内容の充実とリライトを行う。もちろんこれは、単なる書き直し・一般向け希釈ではなく、理論的充実とフォーカスを絞った簡素化とを両立させることである。 推進方策の第2点が最も重要なので、研究会での自由闊達な議論と、労を厭わない追加的調査に精進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用としては次の4本柱がある。第1に、全体研究会開催による出張費(関西メンバーの東京への移動)、共編者3人による編集会議による出張費(関西メンバーの東京への移動とと関東メンバーの大阪への移動)、学会発表のために出張費、である。これが研究費の大半をしめる。 第2に、(中間)報告書の印刷・製本費、および関係者への郵送費である。印刷・製本は、筒井科研ver.1からお願いしている信頼のおける印刷会社に発注する。 第3に、追加の聞き取り調査のテープ起こしにかかる謝金である。守秘義務厳守を徹底して実施する。 第4に、関連書籍の購入も加わる。この分野は、ほかの研究も同時並行でたくさんなされているので、研究会での共通文献として検討を進めたい。 以上が研究費の四本支出だが、酷使のため性能が劣化し、研究推進に支障をきたしている情報機器の入れ替え・購入なども見込まれる。
|
Research Products
(7 results)