2011 Fiscal Year Research-status Report
「知識基盤社会」に至る国語科の転換とそれを踏まえた言語活動の授業作りに関する研究
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23531167
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高木 まさき 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (40206727)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 言語活動 / 国語 / 学習指導要領 |
Research Abstract |
本研究は、大きく次の2点を研究目的としている。(1)1980年前後から「知識基盤社会」と言われる今日に至るまでの社会上・思想上の大転換の中に国語科教育の諸問題を置き直すことで、国語科教育に生じていた転換の意味を明らかにする。(2)それを踏まえ、「言語活動」の意味を問い直し、その指導の在り方を筆者が開発中の方法(指導事項の「分割」「分析」、及び発問の構造化など)と「横浜スタンダード」(横国大)などと連動させた教員養成・教員研修に資する学習プログラムとして提示する。 この目的に従い、平成23年度は、一つは、1980年代以降の社会上思想上の転換を学際的・横断的に確認するために、拙稿「戦後民間教育運動と国語科教育研究-「青春」としての民間教育運動から「若者文化」としての民間教育運動へ-」(全国大学国語教育学会編『国語科教育』第66集2009.9)や、刈谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ』(中央公論社1995.6)、同『階層化日本と教育危機』(有信堂高文社2001.7)、竹内洋『教養主義の没落』(中央公論社2003.7)、本田由紀『多元化する「能力」と日本社会』(NTT出版2005.11)などの教育社会学の成果などを参考に、文献収集に努めることを目的としており、これについては、一定程度の文献収集が実現できた。 また今ひとつの目的であった、「言語活動」の授業作りの方法として、学習指導要領「国語」の指導事項の「分割」と「分析」の方法とその具体例を雑誌に連載(『教職研修』)し、この方法を大学の授業、「教員免許更新講習」その他の学校現場における研修の場で紹介し精度を上げていくこともおおむね達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、目的を大きく二つ掲げていた。一つは関連文献の収集。今ひとつは、研究内容に関わる考え方、方法論の雑誌連載。 後者については、平成23年度から24年度にかけての合計24回に渡る連載により、基本的な考え方を公開するとともに、年間数十回に及ぶ学校現場及び教育委員会等における研修会等で紹介したり、ワークショップをしたりして、十分に成果をあげることができた。 一方、前者の文献収集についてであるが、学内業務が多岐にわたるとともに量的にも非常に多い年に当たり、書籍等の文献はかなり集められたが、まだ不足する部分や読み込み等が十分でない面があり、上記のような自己点検結果とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも従来通り、文献研究を中核に据え、必要に応じて、学校現場や教育委員会における研修等で、本研究内容に関して検証を行っていくという方法については、同様である。 ただし、平成23年度については、学内業務に忙殺されたため、文献収集について、一部十分でない面があった。よって平成24年度については、文献収集についてはより効率的計画的に行えるよう研究補助を活用するなどして、工夫していきたい。 研究内容については、1980年代を転換点とする国語科の授業のあり方を、より広い視野から意味づけるため、背景となる社会的な情勢も含めた文献等の収集と解釈、特に、平成23年度は「自由」及び「個人」という観念の溶解過程に関連する論考等の収集に努める。以後は、国語科における読者論などの潮流や国語科に限らないリテラシー概念などを切り口に、研究を深めていく。 また学習指導要領の「分割」「分析」を中心に据えた言語活動の授業作りのあり方を、雑誌連載をもとに書籍にまとめて刊行するとともに、それをより広く公開することにつとめていく。また横浜国立大学において策定した「横浜スタンダード」の更なる質の向上を目指すとともに、本研究との連携の可能性についても、学校現場や教育委員会等との接触を通して検証していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の総額(直接経費)は、500,000円である。 本研究は、文献研究を中心にしているため、以下のような使用割合を基本としていく。 関連文献に6割程度(300,000円程度)、研究補助に2割程度(100,000円程度)、旅費に2割程度(100,000円程度)を目安にする、という考え方である。研究補助については、平成23年度の反省に基づき、資料収集等をより効率的、計画的に行うために、比重を重くした。旅費については、情報収集の必要性もあるが、可能な限り、情報発信につとめるために、一定程度を確保した。 平成25年度以降も、この割合を原則に、計画を進めていく。
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Research Products
(6 results)