2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531198
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
島田 和典 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (50465861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 潤 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40303482)
宮川 洋一 岩手大学, 教育学部, 准教授 (70552610)
市原 靖士 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (20572837)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 工業教育 / 工業高校 / 生徒 / 自己概念 / キャリア意識 |
Research Abstract |
本研究の目的は,工業高校における生徒(以下,工業高校生と呼ぶ)の自己概念(Self-concept)形成について,その形成過程及び有用性を明らかにすることである。研究代表者はこれまで,工業高校生が形成する自己概念の構造を明らかにすることを試み,自律性や専門性等を志向する工業高校生の自己概念の構造を明らかにするのとともに,自己概念の形成状況を把握するための測定尺度(工業高校における生徒の自己概念尺度)を作成した。本研究は上記の研究を基礎に,主に(1)中学校3年生または入学段階での工業高校生を対象とした調査を実施し,工業高校の入り口の段階での自己概念を把握する。(2)次に,工業高校生の自己概念形成が、将来を見据えた種々の意識に果たす役割を検討する。さらに(3)海外の工業教育の現状を把握した上で,日本の工業教育との比較検討を行う。平成23年度は,上記(1)における調査の準備,(2)における成果公表,(3)においては海外視察を実施した。(1)への対処として,工業高校の調査実施校(研究協力校)の選定と調査内容の確定を行った上で,入学段階における生徒の意識調査を実施する準備を行った。(なお本調査は,平成24年度4月に,大分県,大阪府,鳥取県を中心に実施予定,調査対象者約1000名)。研究協力校は,これまでに実施してきた協力校の他,新たな協力校を選定した。次に,(2)への対処として,研究代表者らのこれまでの調査結果を基に,工業高校生の自己概念が将来を見据えた意識に果たす役割,及び形成過程のプロセスを検討し,その成果を公表した(学術論文1件,学会発表3件)。また,(3)への対処として,アメリカの工業に関係する高校(アメリカミシガン州の4年制ハイスクール訪問)を訪問し,現地の工業教育の現状を視察した。なお,経費等の都合を考慮し,国際学会における発表と同時期に視察を設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,本研究は(1)工業高校生の入り口の段階での自己概念を把握,(2)工業高校生の自己概念形成が,将来を見据えた種々の意識に果たす役割の検討,(3)海外の工業教育の現状を把握した上で,日本の工業教育との比較検討を行うことを計画としてあげている。平成23年度は,まず(1)においては,平成24年度4月の調査実施に向けた準備を行った。比較的全国規模の調査校を選定することができ,協力校との協議は円滑に進められている。次に(2)においては,研究代表者のこれまでの調査結果を基に分析し,その成果を公表するに至っている。工業高校生の形成する自己概念が将来を見据えたキャリア意識に果たす役割を検討し,特に,工業高校3年生で形成される自己概念の重要性を指摘するのと共に,その背後で進路指導の役割が重要であることを示唆する知見が得られた。本論文は日本産業技術教育学会技術教育分科会において口頭発表ののち,国際学会誌である Asian Academic Society for Vocational Education and Training Vol.4 No.1に掲載された。また(3)においては,アメリカミシガン州にあるSaline High Schoolにおいて工業教育の現状を現地視察した。同校は多くの職業系学科を有する4年生ハイスクールで,工業教育にも力を入れている。授業見学と共に、教師及び生徒へのインタビューを実施し,アメリカミシガン州における工業教育の現状を把握し,貴重な資料を得ることができた。以上から,平成23年度における研究内容は,当初の計画通りに進んでおり,一部は当初の計画以上に進行するに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,上述(1)に係る調査の実施,その集計及び分析を行い,高校入学段階での自己概念形成の状況を把握する。これまでに研究代表者が実施してきた先行研究の知見(工業高校生の3年間のデータ)を加味し,入学段階からどのように工業高校で自己概念が変容していくのかを質的事例等も含めて総合的に検討する。量的なデータの他,教育現場(調査実施校)において教員や生徒を対象としたインタビュー等を実施し,中学校3年生または入学段階の工業高校1年生の状況を質的にも把握する。得られた研究成果は,国内外の学会において公表する。次に,上述(2)の対処(自己概念形成が将来を見据えた種々の意識に果たす役割)としても,測定尺度の作成または選定とこれらを用いた調査を実施する。さらに,工業高校3年間の自己概念形成のプロセスに焦点を当てた詳細な分析も必要であると考えられる。また(3)への対処として,平成23年度に引き続き,継続的に海外視察調査(中国・韓国の工業教育の工業高校を予定)を実施し,日本との比較・検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時の研究経費の使用計画に基づき,平成24年度は以下の通り計画している。1)設備備品・消耗品:分析用PCなどは既に研究機関に設置されているものを使用する。統計処理ソフトについても一部を除き,同様である。備品としては研究に係る専門図書の購入経費または調査に係る膨大な印刷関係の経費を必要とする。2)旅費:研究代表者及び分担者が研究協力校に赴くための旅費,海外視察調査及び研究協議実施のための旅費,研究成果公表のための旅費(学会発表)等が大半を占めることとなる。なお,海外での調査は国際学会発表時に同時に遂行する等して経費の節減に努める。3)謝金等:研究協力校における調査は,公立学校を予定しており,研究協力校において印刷等をしていただく場合の実費を除き,基本的に謝金等は発生しない。4)その他:調査実施のための印刷費,郵便や宅配など通信に関わる費用,また,研究成果公表のための論文掲載料として支出する予定である。
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Research Products
(4 results)