2012 Fiscal Year Research-status Report
同僚性の構築による教師の力量形成研究ーライフヒストリー的アプローチを用いてー
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23531249
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
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Keywords | 授業スタイルの形成 / 同僚性 / 研究共同体 / ライフヒストリー / 教師の力量形成 |
Research Abstract |
同僚性の構築による教師の力量形成研究ーライフヒストリー的アプローチを用いて、を研究テーマにした2年目の研究実績について述べる。 1年目はデータの収集ということで、三重県のI市のS中学校の教師たちのライフヒストリーデータを主には授業の参加観察、およびインタビューを行った。2年目である平成24年度は、そのインタビューデータを、授業スタイルの確立への契機となった「できごと」、また学校における共同研究がどのように個々の教師の授業スタイルの確立に影響を与えたかについて整理をした。 その結果、学校が研究者共同体として機能すれば、そこに参加する教師たちに自らの「観」を問い直す機会になることが明らかになり、授業スタイルの構築にも大きな影響を与えることが明らかになった。またそのためには同僚性にもとづく研究共同体が形成される必要があり、校長や研究主任のリーダーシップがきわめて重要であることも明らかになった。 ここまでの研究の成果は日本教育方法学会第48回大会 ラウンドテーブル(平成24年10月)において「中堅教師の飛躍台としての校内研究(学校)」として報告し、またグループ・ディダクティカ編『教師になること、ありつづけること』勁草書房に「中堅期からの飛躍ー『協同的な学び』との出会い」として執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例研究として三重県のI市S中学校における、数年間の関わりをいかした事例研究を行うことができた。小さな規模ではあるが、公立中学校において、ほぼ在職教師の半数の教師、また校長への2度のインタビューなどを通してきわめて貴重なインタビューデータを得ることができた。これまでの信頼関係の構築が基盤になっている。こうした学校内部の教師たちの「本音」を取材した先行研究はほとんど存在しない。 そのインタビューデータから読み取れる、公立学校のごく一般的な教師がどのように自らの教師としての授業スタイルを確立してきたか、を明らかにすることができた。その重要な契機になっていたのが、学校外における教科の研究サークルと校内研究であった。この学校はF校長が赴任してから、協同学習をテーマに校内研究にとりくんだが、そのことは、教師たちに大きな影響を与えていく。その影響をどう受け止めたかについて各々の教師たちは率直に語ってくれた。そのインタビューデータをもとにいったい教師の授業スタイルの確立にはどのような条件や状況が必要なのかを仮説的ながらも明らかにすることができた。学習者である生徒の事実をもとに率直に語り合うことができること、そのことが教科を超えて教師たちが学びあうことができる一つの条件だった。そのためには学校の研究が上意下達ではなく、同僚性をもとに研究共同体が成立することが必要だということも明らかになった。 こうした事例研究を2年目に行うことができたことは研究の目的にとって極めて重要なステップとなったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は先に述べたように、ある一つの中学校の事例研究を丹念に行い、そのことをモノグラフとして学会で報告し、また論文として上梓した。 3年目の研究は、そこで得た仮説的な結論(校内研究会における同僚性の重要性、また研究共同体としての学校の授業研究の重要性)が他の学校においても成立しうるか、について考究を重ねたい。 現在、2つの小学校、1つの中学校において校内研究会にアドバイザーとしてかかわらせてもらっている。それぞれに研究テーマは違うのだが、そのテーマのもとに行われている校内研究授業がどのように検討され、その検討によって、教師がどのように自らの授業を変えていこうと考えたのかを、取材したい。また、海外の学校(タイ)における授業研究についても対照できるような形で取材を考えている。 そのことによって、平成24年度に得た、仮説をより確かなものにする。またそのためにはどのような条件やどのようなポジションの人たちの役割が大切なのかも明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画としては、インタビューデータの収集のための旅費、謝金、賃金(データ起こし)等、またその成果の報告および報告書の作成にあてる。
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Research Products
(5 results)