2012 Fiscal Year Research-status Report
専門家に過度に依存しない特別支援教育推進のシステム構築に関する実証的研究
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23531272
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
二宮 信一 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (80382555)
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Keywords | 特別支援教育 / インクルージョン / へき地 / CBR / 地域連携 / 実践共同体 / ソーシャルキャピタル / 活動理論 |
Research Abstract |
根室管内を中心に地域の保護者、教員、保健福祉関係者のネットワークを作り、地域にいる困難を抱える子どもを支える「多様なシステム」の構築を試み、「専門家に過度に依存しない特別支援教育システムの構築」へのアプローチを行った。 1、地域分析、既存の関係組織の調査領域として別海町の地域分析、関係機関調査を行い、学校統廃合によって生まれた課題と幼小中連携の可能性について仮説を立てた。2、既存資源の再資源化、実践共同体の組織化領域として、羅臼町における既存の文化イベントに特別支援学級の子どもが参加する場を作り、障害のある子どもと地域がつながる機会を提供した。また、保護者同士がつながる兆しが芽生えてきた。標津町では、保護者が企画し、「きょうだい支援」プログラムが開発された。別海町においては、西春別駅前地区における幼―小連携の枠組みが機能しはじめ、保育園の小学校への主体的な働きかけが見えるようになった。3、ネットワーク化による新たな資源創出領域として羅臼町教育委員会及び保健福祉部との連携を強化し、「こんぱす運用委員会」(こんぱす=羅臼版個別の支援計画)として活動を開始した。4、地域と学校の相互依存関係の構築と評価領域として、羅臼町、別海町の幼稚園、小学校、中学校の研修を行った。 その他として下関市豊浦地区の調査では、保護者及び小学校教員に聞き取り調査を引き続き行い、保護者の会の発展過程の仮説を立てることができた。また、研究協力者の調整会議を行い、羅臼、標津、別海における特別支援教育推進の戦略を練り、情報交換を行った。また、当初計画されていなかった根室市における取り組みも教員を中心に開始されてきている。日本社会教育学会にてラウンドテーブルを行い、「社会資源の少ない地域における支援を要する子どもを育てる地域作り」として、標津町、津別町、幕別町の実践から得られた成果を発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
羅臼町では、教育委員会が中心となって「羅臼町支援教育プロジェクト会議が発展し、「こんぱす運用委員会」(こんぱす=羅臼版個別の支援計画)が組織され、保健福祉課の保健師、発達支援センター・子育て支援センターの保育士、幼稚園園長・主任教諭、小学校・中学校の管理職・特別支援教育コーディネーター、教育委員会スタッフなどにより実働し始めた。また、障害のある子どもを育てる保護者が「保護者同士つながりたい」という動きが出始め、学校教育がバックアップして組織化される動きが出てきている。標津町では、障害のある子どもを育てる保護者の集まりである「サロンときわ」が主催となって、北海道教育大学釧路校との協働で「きょうだい支援」事業などが開始された。別海町では、学校統廃合が進み、幼・小・中学校がそれぞれの地区でセットとなってきており、西春別駅前地区の幼・小学校連携が日常的な繋がりに進展してきている。また、別海中央地区においても連携の兆しが見えてきている。また、当初計画にはなかったが、中標津町においても「きょうだい支援」プログラムが開発され、根室市においても研修機会の少ない地域であるので、教員による教員のための特別支援教育に関わる学習会(実践共同体)結成の動きが始まった。 先行事例研究では、下関市豊浦地区の実践から、保護者の会の発展過程が分析でき、保護者の会のタイプ別機能を整理するところまで来ている。また、津別町の特別支援学級と地域とのつながり、幕別町の「おかゆの会」と行政との協働、保護者、教員、関係者のネットワーク形成のプロセスが分析できてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
羅臼町、標津町、別海町それぞれに、地域における障害のある子どもを支えるシステムやネットワークが生まれてきている。医療が後退する中で、当事者や保護者が安心して生活し活動できる場の創造は、地域における受け皿作りにほかならない。 研究最終年として、実践的には、羅臼町の個別の支援計画の特色の分析、標津町の保護者の組織化、既存の団体の再デザイン化、別海町の幼小連携システム構築を中心に、このような実践が定着していくための手立てと過度に依存する必要がなくなるための専門家の関わり方について、また、理論的には、このような実践共同体が動き出すことができた条件について抽出していくことに取り組む。また、下関市豊浦地区の活動状況を継続調査し、保護者の会の発展過程及びタイプ別機能について分析する。 また、中標津町の「きょうだい支援」プログラム、根室市の教員の学習会のうごきについて引き続き注目していく。 得られた成果については、「日本LD学会」の自主シンポジウム及び根室管内でシンポジウムを企画し地域に発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として131,000円を計上する。実施したシンポジウムを報告書にし、関係する学校、機関に配布する。 旅費として604,000円を計上する。内訳は、LD学会における自主シンポジウム成果報告者(3名)旅費として350,000円、根室管内でのシンポジウムに研究代表者および研究協力者(成果報告者4名)旅費として104,000円、指定討論者として鹿児島大学肥後祥治氏を招へいし、その旅費として150,000円とする。 人件費・謝金として50,000を計上する。肥後氏謝金30,000円、シンポジウムのテープ起こし・資料整理として20,000円とする。 その他として根室管内のシンポジウム開催の会場費として15,000円を計上する。
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