2011 Fiscal Year Research-status Report
特異的言語発達障害(SLI)の心理言語学的表現型に関する基礎的研究
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23531309
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
鈴木 牧彦 北里大学, 一般教育部, 教授 (90226548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 玲子 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70406908)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 特異的言語発達障害(SLI) / かき混ぜ文言語課題 / 構文理解課題 / 発達性読み障害(DD) |
Research Abstract |
特異的言語発達障害(SLI)の言語心理学的表現型を明らかにするために,本研究課題で主として用いようとする言語課題は,かき混ぜ文を用いた言語理解課題である。SLI においては「太郎が花子をたたいた」というような基本語順文の理解に対して「花子を太郎がたたいた」のように,目的語が前に移動しその痕跡が主語のあとに残されるかき混ぜ文の理解に困難を有することが他言語圏の研究で示されている。本年度は,反応時間を指標としたかき混ぜ文理解課題の開発に取り組んだ。日本語を用い,かつ児童にも適用可能なかき混ぜ文理解課題を新規に開発するため,児童にも理解可能な単語素材の精選,課題文を作成した。課題では,基本語順文またはかき混ぜ文の聴覚提示中に,ある対象物の絵を視覚提示し,その名称を実験参加者に呼称させるが,その呼称潜時は,基本語順文かかき混ぜ文かの文章タイプ,絵の提示位置(目的語の痕跡位置か否か),対象物と文章中の目的語の意味的関係などといった変数の違いによって変動する。プログラム開発にあたっては,刺激提示の時系列等,これら変数の適切な設定も必要である。本年度はこれらの問題を解決し,課題の信頼性,結果の再現性を検証するため,健常成人(大学生)を対象としたパイロットスタディーを実施した(未発表)。また言語理解課題の作成と平行し,本年度は次の2つの関連研究を実施した。一つは研究分担者によるものであり,発達性の言語障害をより広範囲な視点から把握するため,小学校高学年生を対象とした発達性読み障害の調査研究を実施した(Kitasato Medical Lournal 投稿中)。さらに発達性の言語障害の特徴をより明らかにする一助として,成人した健常者における言語処理構造を明らかにする目的で,構文理解,語彙判断,意味判断課題を用いた検討を行った(第35回高次脳機能障害学会発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(3)やや遅れていると自己評価した理由は,かき混ぜ文理解課題の開発が遅れ,研究の目的にしたがった本資料の収集までこぎ着けることができなかったことにある。言語課題の開発そのものは,検査における刺激の提示位置,時間など,解決すべき課題は明らかとなっているので,課題の早急な解決は見込まれており,データ収集の遅れを取り戻したい。また,関連データの収集については,一定の成果を挙げたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
かき混ぜ文理解課題の早急な完成を目指すことが第一である。その上で,既に準備されているリスニングスパン課題と非語復唱課題を加えたテストバッテリーを仕上げるとともに,SLI の同定に必要な非言語知能検査,言語検査であるITPAサブテストを実施する。一定の統計的解析に必要なデータ収集を6月を目処に開始し,年度末にはそれまで得た資料の解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費は,研究の初動経費として,検査課題の開発に必要な機材,検査器具・道具の購入に当てるとともに,検査課題開発とデータ処理等の研究協力への謝金,および研究旅費の支出が中心であった。研究計画が二年目を迎える次年度においては,研究の推進状況に応じて,より多くのケースのデータ収集を行うため,調査・検査対象者に対する研究協力謝金と旅費交通費の必要度が増すことになる。また,研究を効率的に進めていくためには,初年度に開発用として一セット用意したものに加えて,検査器具,ソフトウェア等の補充が必要となる。
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Research Products
(1 results)